NiziU、TWICEに見るK-POPプロデュースの業 「今さら訊けないK-POPとJ-POPの相違」前編|「偶像音楽 斯斯然然」第34回・前編
NiziU、TWICEに見るK-POPプロデュースの業 「今さら訊けないK-POPとJ-POPの相違」前編|「偶像音楽 斯斯然然」第34回・前編
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である。
スッと聴ける耳馴染みと物足りなさを感じる楽曲の長さ
例えば、デビュー当初からのプロデューサー、ハン・ソンスが退任し、新境地を開いたIZ*ONEの6月15日リリース、3rdアルバム『Oneiric Diary』からのリード曲「Secret Story of the Swan」。多彩さで魅せていくようなシネマティックEDMのダンス曲であるが、正直、1度聴いただけでは印象に残りづらい。
IZ*ONE (아이즈원) - 환상동화 (Secret Story of the Swan) MV
次にBLACKPINKの6月26日プレリリースの「How You Like That」。妖艶さとエキゾチックさを交互にかぐわすBLACKPINKらしい凛とした強さで圧倒していく楽曲であるものの、前作のリード「Kill This Love」のように対外的なインパクトで攻め立てていく曲ではない。
BLACKPINK - 'How You Like That' M/V
しかし、この“印象に残りづらい”とは“よくわからない”のではなく、スッと聴けてしまう耳馴染みの良さがある。であるから、なんだかもう1回聴いてみたくなるし、そうやってくり返し聴けば聴くほど、その緻密なトラックデザインとボーカルの美しさに気づかされるのである。
以前、ストリーミングが主流となった昨今、アルバム収録時間が短くなっているという話題を取り上げた。聴き疲れすることのない長さと、八分目的な物足りなさによって何度でも聴きたくなるという算段である。それが楽曲単位でも行なわれている点にも注目である。
TWICE『MORE & MORE』は7曲22分、リード表題曲は3分19秒。IZ*ONE『Oneiric Diary』は8曲24分、リードの「Secret Story of the Swan」は3分12秒。BLACKPINK「How You Like That」は3分01秒である(各曲、音源の長さであり、MVはもう少し長いアレンジが施されている場合がある)。
現在のJ-POPも一時期より短くなっている傾向があるものの、大体4分〜4分半程度が平均的であり、3分台前半となれば相当短く感じてしまう。NiziU「Make you happy」は3分4秒。アルバムは4曲で12分である。スッと聴ける耳馴染みと物足りなさを感じる楽曲の長さ、「Make you happy」MVはそうやって何度も観ているうちに、冒頭のメンバー紹介と綺麗にパート割された各自の見せ場によって、気がづけばハマっていた……なんてこともあるかもしれない。
こうしたトレンド、制作による戦略は、瞬発的なヒットを狙う日本とは違った韓国の音楽市場だからこそ、ということもあるだろう。私は過去に制作ディレクターとして韓国アーティストの原盤制作(レコーディングして音源作品を作ること)に携わったことがある。かれこれ10年以上前の話なのだが、そこで日本とのプロモーションの大きな違いを目の当たりにしたのである。
後編へ続く(後編は、7月5日(日)正午12時公開)
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