エビ中と夢アド、さまざまなアーティストから楽曲提供を受けるアイドルの到達点|「偶像音楽 斯斯然然」第22回

エビ中と夢アド、さまざまなアーティストから楽曲提供を受けるアイドルの到達点|「偶像音楽 斯斯然然」第22回

エビ中と夢アド、さまざまなアーティストから楽曲提供を受けるアイドルの到達点|「偶像音楽 斯斯然然」第22回

これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

アイドルグループが多方面のアーティストから楽曲提供を受けることは、音楽性の拡大、スキルアップ、話題性や非ファン層への訴求……など、多くの目的を含んでいたりするもの。しかしながら、受ける側に確固たるものが存在していなければ、何がやりたいのかがわからなかったり、そもそも楽曲自体に負けてしまうことだってある。そうした中で、さまざまなアーティストから楽曲提供を受けることを武器としながら、グループのアイデンティティを確立したグループがいる。

私立恵比寿中学と夢みるアドレセンスだ。

この2組はスタイルも方法論も違えど、“さまざまなアーティストから楽曲提供を受けるアイドル”としてのそれぞれの“かたち”を作ったグループだと思っている。

私立恵比寿中学 10年でたどり着いたアイドルの完成型

“いろんなアーティストから楽曲提供を受けているエビ中”ではなく、“いろんなアーティストがエビ中に楽曲提供している”——2019年12月にリリースされた私立恵比寿中学『playlist』はそんなアルバムだと思う。

それは、さまざまなアーティスト提供曲によるバリエーションの豊富さと、エビ中の実力が融合した前作『MUSiC』(2019年3月)でも感じていたことでもあるが、続くシングル、川谷絵音(ゲスの極み乙女。、indigo la End、ジェニーハイ、ichikoro)による「トレンディガール」でボーカルグループとしての新たな可能性を提示したことにより、それは明確なものとなり、最新作『playlist』にて極まった。本作で楽曲提供を受けるアイドルとしての1つの完成型に到達したと思うのである。ロックファンなら誰もが知るバンドマンから、新進気鋭の若手クリエイターまで、幅広いアーティストが楽曲提供しているエビ中だが、相手が誰であろうと作り手側のアーティストと演者側であるアイドルが対等であり同一線上にいるという構図だ。

昨今のストリーミング事情に合わせ、厳選された10曲で構成される『playlist』は、これまでのエビ中にはない作風だ。前作『MUSiC』で見せた目紛しいほどの多彩さはなく、それこそ宮藤官九郎の当て書き詞とニューロティカの“ロックバカ”が炸裂した「元気しかない!」が体現したような、思わず吹き出してしまいそうになるエビ中の“らしさ”は存在していない。なだらかなメロディの楽曲群がどこか少し大人びた雰囲気をも漂わせており、歌に徹している印象を受ける。ただそれは、楽曲の持つ世界観を損なうことなく、歌だけでエビ中の“らしさ”を表現しているといえるだろう。

私立恵比寿中学「ジャンプ」

無機質さの中の人間味を浮き彫りにした川谷絵音の「トレンディガール」、大地の鼓動に合わせて圧倒的な歌の強さを魅せつける石崎ひゅーいの「ジャンプ」、ポルカドットスティングレイの「SHAKE! SHAKE!」は小気味よいギターポップを女子らしい目線で歌い、一方で、PABLOの「PANDRA」では、P.T.P.(Pay money To my Pain)仕込みのラウドロックナンバーなのにジャパメタばりのハイトーンを轟かせる。シャウトなりで男勝りにキメることもできたこの曲で、あえての星名美怜の“姫ボイス”がハズした遊び心になっているが、それが逆に狂気を感じさせるものになっているという……。

私立恵比寿中学「PANDORA <ようこそ秋冬ホールツアー2019~世界のみなさんおめでとうアイドルって楽しい~ >Ver.」

もし、エビ中をまったく知らない人がこのアルバムを聴いたら、こんなに多くのアーティストが楽曲提供していると気がつくであろうか。そのくらいごく自然な統一感ある作風を歌がもたらしている。

エビ中を初めて聴くとすれば、おそらく耳に入ってくるのは、真山りかの真っ直ぐで力強い歌声だろうし、柏木ひなたの歌唱力と表現力に圧倒されるかもしれない。そして、小林歌穂の表情ある歌声に気づいたり、星名美怜のアイドルらしい歌唱に惹かれてみたり。実は1番安定感があるのは安本彩花ではないか、でもなんだかんだ心に響くのは中山莉子の歌声なのかもしれない……などと一巡した後で、こんなバラバラな歌声が交わったユニゾンがなによりも美しいことに気づくはず。結成当初の“キレのないダンスと不安定な歌唱力”から、活動とともに成長し到達した完成型が『playlist』であり、現在のエビ中の姿であるのだ。

私立恵比寿中学『playlist』

そんなエビ中とは対極的、最初の段階から完成型の状態でシーンに登場したのが、夢アドこと、夢みるアドレセンスだ。

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