EMPiRE、PEDRO、BenjaminJasmine、RAY ノスタルジーに浸りたいオルタナティヴロック|「偶像音楽 斯斯然然」第29回

EMPiRE、PEDRO、BenjaminJasmine、RAY ノスタルジーに浸りたいオルタナティヴロック|「偶像音楽 斯斯然然」第29回

EMPiRE、PEDRO、BenjaminJasmine、RAY ノスタルジーに浸りたいオルタナティヴロック|「偶像音楽 斯斯然然」第29回

これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

BenjaminJasmine「細胞」 ドラマティックでエモーショナル

細胞 / BenjaminJasmine 【Music Video】

以前このコラムでも触れたことがあるが、予備知識も名前も知らずにBenjaminJasmineのステージを観て惹き込まれてしまった曲、「細胞」。それが去年の夏前であるから、温めに温められた上で、満を持しての4月28日リリースとなる1stミニアルバム『BenjaminJasmine』のリードとして音源化。激情と焦燥感が交錯していくような楽曲とエモーショナルなアツい歌、感情の赴くままに轟かせていく様に心が突き動かされる。タッチが強めのピアノとそこに重なっていくストリングス、さらに激情を弄っていくようにリズムを捲し立てるスネア……スリリングで豪奢なプロダクト。ドロドロとした情緒が滾っていく様子は、Cocco以降の90年代末から流行した女性ボーカルのオルタナティヴロックを彷彿とさせてみたり。しかしながら、ギターはそれほど前に出ていないのも特徴である。このゴージャスでドラマティックな楽曲を制作したのは、数多くのゲーム、アニメ音楽を手掛けるクリエイター集団Elements Gardenだというから納得。加えて、作詞曲の藤永龍太郎は、BenjaminJasmineの先輩グループにあたる、まねきケチャ「きみわずらい」の作詞曲者ということでさらに納得。

RAY「PINK」 甘酸っぱいノスタルジー

RAY - 世界の終わりは君とふたりで/The End of The World with You (Official Music Video)

最後は“圧倒的ソロ性”と“『アイドル×????』による異分野融合”をコンセプトに掲げるRAY。

4ADやクリエイション・レコーズ、サブ・ポップ、そんな轟音にまみれた女性ボーカルのローファイな浮遊感が大好物なロックファンなら絶対に好きだろ? 私は大好きだ。中高年の甘酸っぱいノスタルジックな思い出をぐしゃぐしゃに引っ掻き回してくれるんだ。

RAY - オールニードイズラブ/ALL NEED IS LOVE(Official Audio)

・・・・・・・・・(dotstokyo)が持っていたゆるさを削ぎ落として、音楽面を研ぎ澄ました印象である。それこそ、SUPERCARを想起させる「オールニードイズラブ」、Ringo DeathstarrのElliott Frazier(Gt, Vo)作編曲による「Meteor」といい、容赦なくツボを突いてくる音に完全に打ちのめされる。

RAY - Meteor (Official Music Video)

“シューゲイザーはじめ、オルタナティブ、emo、メロディックパンク、激情ハードコア、IDM等様々な90s要素を濃縮還元した〜”という文言に相応しい待望の1stアルバム『PINK』が、5月23日リリースに先駆けて各種音楽サブスクリプションで配信されており、海外から早くも“AOTY(Album Of The Year)”のコメントが殺到しているが、それも納得の名作である。

そして、メンバー、内山結愛による洋邦名盤のレビューを綴ったnote、これがまた最高なのである。アイドルがThis Heat 『Deceit』(1981年)やら、Public image limited 『METAL BOX』(1979年)やら、Steve Reich『Drumming』(1971年)……といったマニアックなアルバムを聴いて感想を書いているという、めんどくさい中高年ロックファン大歓喜、おっさんホイホイな内容。1記事につき1枚、1曲1曲丁寧に書かれており、文才もあって面白い。

Throbbing Gristle『20 Jazz Funk Greats』(1979年)について、“最初見た時、「カラフルで可愛い…!」と思ってしまったジャケットからは想像もつかなかったくらい、色んな意味で凶暴なアルバムでした”なんてニヤニヤせずにはいられないし、“エレクトロニックで、ノイジーな工場地帯!恐らく初めてのインダストリアル、面白かった…! 是非、聴いてみて下さい!”なんて言われたら、“ああ、知ってる、大好きなアルバムだけど、もう1回聴いてみるよ!”という気分にさせられるのである。

関連リンク

【過去の連載一覧】

  • 2
  • トップページ
  • 連載
  • EMPiRE、PEDRO、BenjaminJasmine、RAY ノスタルジーに浸りたいオルタナティヴロック|「偶像音楽 斯斯然然」第29回