めろん畑、爆裂女子、ZOMBIE POWDER…アイドルだってなめてんじゃねーぞ！ アイドル、V系、パンク、メタルを紡ぐダイエースプレーの香り｜「偶像音楽 斯斯然然」第16回

そして＜ギュウ農フェス 春のSP 2019＞で、“おっ”と思ったのが、アイリッシュからモダンヘヴィまでブチかますZOMBIE POWDER。ラウドロック系のアイドルの多くがディストーションギターで壁を作ることや音圧重視の中、バンドアンサンブルの間の取り方とリズム隊のグルーヴで勝負してる楽曲にヤラれ、90’sミクスチャーロックを思い出させるサウンドメイクにシビれた。プラグイン頼りでピッキングのアタックがない最近流行りのリアンプのギターサウンドではなく、ローミッドがガツンと来るギターと、ツイーターのハイによってアタックがバチバチいいながら胸をえぐる重低音の超ドンシャリベース、ベチンベチンと耳にへばりつく足癖の悪いツーバス。KORNやzilch、(hed)peあたりを彷彿とさせる、あの頃のインダストリアル〜モダンヘヴィネスな“爬虫類っぽい”サウンドがアイドルで聴けるとは。そんな楽曲をきちんと表現しているメンバーの感性、リズム感も気持ちいい。

ZOMBIE POWDER「RAPP’N」〜「我儘MISERY」

GERU-C閣下が統括プロデュースしていることは事前に知っていたものの、調べてみるとサウンドプロデューサーは、THE CHERRY COKE$やRADIOTSといったアイリッシュパンクバンドで活動し、現在はTHE MAD CAPSULE MARKETSのKYONOのソロバンドにも参加しているベーシスト、HIROMITSU（AIR SWELL, deadbites）ということで非常に納得した。Zi:KILLやCRAZE、vezの飯田成一らと組んだバンド、OXYMORPHONNでは、ギタリストとして活動している敏腕である。

10月13日、台風19号の影響により開演時間とタイムテーブルを変更して開催された＜ギュウ農フェス2019 後夜祭＞。ZOMBIE POWDERを筆頭に興味深いグループも多数出演していたのだが、今回触れておきたいのは、10月12日、13日、14日の3日間、新宿LOFT、ACB、Nine Spiceで行われたパンクのサーキットイベント＜KAPPUNK カッパンク 2019＞だ。初日は台風のため残念ながら中止、13日は開演を遅らせてのスタート。そして迎えた最終日、スパイキーヘアに鋲打ちライダース、モヒカンにタトゥーといったパンクスが、雨のなか傘もささずに行き交う新宿歌舞伎町の光景はなんとも非日常でありながらどこか懐かしく思えた。

AUTO-MOD、アレルギー、THE RYDERS、ロリータ18号、KEMURI……、といったレジェンドや重鎮バンドがひしめく中、めろん畑a go go、爆裂女子-Burst Girl-というアイドルの奮闘が際立っていた。先日、THE 冠主催＜大冠祭2019＞に出演したLADYBABYといい、猛者どもの中にアイドルが混じると、言葉にできないような興奮を覚えてしまうのは、中年ロックファン兼アイドルヲタクならではの感覚である。ちょうどZepp DiverCityのワンマン公演を数日後に控えていためろん畑a go goは、そこへの気合いと期待も重なって、フロアともども業火と化していたし、新メンバーを加え新体制となった爆裂女子のステージは、どのパンクバンドにも負けないほどパンクバンドだった。ザ・スターリンのイヌイジュン率いるTHE STALIN Yのステージには爆裂女子を卒業し、ファンシーアニマルパンクバンド、ナックルチワワを結成した、しばくぞ零ちゃんが乱入。カオスティックに大団円を迎えた。

めろん畑a go go「イカすぜIDOL」

爆裂女子-BURST GIRL-「超革命」

ナックルチワワ「PET CAT」

“「アイドル」だってなめてんじゃねーぞ”とは、Buono!「We Are Buono!〜Buono!のテーマ」（2010年）の一節。あれから10年が経とうとしているが、今改めて叫びたい言葉である。

新宿LOFT、目黒鹿鳴館、下北沢SHELTER……、あの頃多くのバンドマンが目指したライブハウスは、いま“アイドルの聖地”とも呼ばれるようになってきた。そのことは、時代の変化を大きく表すところでもあるだろう。ただ、あの頃と同じなのは、夢に向かう演者たちが集う場所であるということだ。そして、もう1つ変わらないものは、そんな演者たちを結び付けながら楽屋に漂う“ダイエースプレーの香り”なのかもしれない（現在はエレーヌ、エレラともに無香性である）。