冬将軍×Pop’n’Roll編集長が振り返る連載50回の軌跡「エッジィでキャッチーなコラムでありたい」|「偶像音楽 斯斯然然」第50回

冬将軍×Pop’n’Roll編集長が振り返る連載50回の軌跡「エッジィでキャッチーなコラムでありたい」|「偶像音楽 斯斯然然」第50回 「偶像音楽 斯斯然然」第50回

冬将軍

音楽ものかき

2021.02.13
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記念すべき50回目となる今回は、冬将軍とPop'n'Roll編集長・鈴木が当連載を振り返る対談企画。これまでの人気記事を中心に、冬将軍の独自の視点や独特な文体、さらに同連載にかける想いなどについてたっぷり語り合った。2人の対談では恒例となっている少しマニアックな音楽&楽器談義を含めて、余すことなくお届けする。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

アイドル界“楽曲派”に対するカウンターコラム

冬将軍:
50回目にして今さら感もありますけど、このコラム連載「偶像音楽 斯斯然然」の狙いというか主旨みたいなところから話していければと思います。きっかけは鈴木さんから“ロックで語るアイドルコラム連載はどうだろう?”と相談されまして。

鈴木:
アイドル界“楽曲派”に対するカウンター的位置付けとでもいいましょうか。なんとなく“楽曲派”というジャンルって、出来上がってるじゃないですか。

冬将軍:
シティポップスや渋谷系、ファンクっぽいものだったり。ポストロックなどのグループはそう言われたりするけど、激しめのロック、それこそWACKのファンは楽曲派ってあまり使わないじゃないですか。自分も率先して使わない言葉だし。

鈴木:
そうそう。だから、そういうところじゃないアイドル楽曲の面白さを引き出していけたらなというのもあって。

冬将軍:
楽曲派って、いわゆるアイドル文化の偏見に対する“隠れ蓑”の意味として生まれて、その反面でちょっと蔑称的な感じでも使われてましたよね。そういう意味では“ヴィジュアル系”や“ロキノン系”と境遇は似ているのかなと思います。当初は聴き手側の嗜好を表すものだったけど、気づけば“楽曲派アイドル”という言葉が生まれて、演者が使うことでその意味が大きく変わった。4年くらい前だったかな、アイドル本人が物販で“楽曲派アイドルの◯◯でーす! 今ならチェキが無料で撮れまーす!”って、呼び込みをしていて。

鈴木:
楽曲派なのに、チェキを積極的に勧めていたんですね。

冬将軍:
楽曲派の意味が本当に変わったんだなぁと実感した瞬間でした。そうやって楽曲派が確立されていく中で、ロック文脈でアイドルを語る人がいない、というのは個人的に気になっていたことでもあったんです。それを自分は書きたいと思っていて、いろんなところに企画を出したりもしたんですけど、なかなか難しかった。そんな時に鈴木さんから連載の話をいただいて、“キター!!”と。でも最初、方向性に関して相当打ち合わせしましたよね。鈴木さんが編集長に就任されて、Pop’n’Rollがリニューアルするというタイミングでしたし。それまではなんというかすごく“ゆるふわ”なサイトだったので、私みたいな偏屈者が書いていいのかという……。

鈴木:
Pop’n’Rollは、当初“アイドルが作るアイドルメディア”というコンセプトだったので、そういう見え方でしたよね。もともとバンドや楽器畑の人間だった自分が編集長になってリニューアルするにあたり、自分が好きな音楽的な面をPop’n’Rollの中でもう少し出したいと思ったんですよ。さっきも話しましたけど、いわゆるみなさんが考えている楽曲派とは違う視点で。

冬将軍:
それでもう、書きたいことを書く!と決めた1発目がこれでした。

ラウドならずともエッジィ! ロックな新進気鋭アイドル5選 [第1回]

冬将軍:
QUEENS、マリオネッ。に代代代……。これで連載の指針が決まったし、未だにブレてない。メジャーどころを入れなきゃ、というキュレーション記事における暗黙の掟を無視した内容。大抵の場合 “◯◯(メジャーグループや楽曲派代表格と呼ばれるアイドル)を入れてください”と言われますよね。“入れなくても需要ありますよ”、“そういうグループを入れないのが面白いんです”と説明しても、なかなか理解してもらえない。先方の言うこともわかるけどそれを承知の上で、人気、動員や売上じゃないところでのアイドルの面白さを語りたかった。だから、水を得た魚のように自由に書かせてもらった記事です。結果的に反響も大きくて嬉しかったです。

鈴木:
自分も“メジャーなものを取り上げてほしい”という感覚はわかります。でも、この連載に関しては、いい意味で冬将軍さんに丸投げしています。自分の感覚も大事なんですけど、本当に信頼した人が生み出すものは、なるべく自分のフィルターを通さないで届けた方が、より読者に刺さるかなって思っています。

冬将軍:
おかげさまで毎回楽しく書かせてもらっています。事前に“次回はこういう内容で行きたいです”と相談は必ずしていますけど、却下されたことはないです(笑)。

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