冬将軍×Pop’n’Roll編集長が振り返る連載50回の軌跡「エッジィでキャッチーなコラムでありたい」｜「偶像音楽 斯斯然然」第50回「偶像音楽 斯斯然然」第50回

音楽を文章で説明するのって、やっぱり感覚的なものだと思う

鈴木：
ちなみに、ランキングに入ってないけど好きな記事ってあります？

冬将軍：
毎年恒例の「ギターがカッコいいアイドルソング」対談ですかね。まさに“こういうの好きな人、どこかにいるでしょ”論の極みですけど、反応を見るとピンポイントで共感してくれている人が多くて嬉しいです。

冬将軍：
“ギターがカッコいい”というのは、けっこう重要ポイントで。要は歌以外のサウンド面の代表ですよね。音楽知識がなくとも、楽器が弾けなくとも、音楽ファンであれば、好きなサウンドって絶対あるはずなんですよ。ただ、それをウマく説明することができない。であるなら、こちらがそこをウマく言語化しようじゃないか！という。

鈴木：
それこそ、ちょっと話戻りますけど、K-POPの“K-POPさ”みたいなところもそうですよね。3位の記事なんかは、それをウマく言語化している。

3位　NiziU、TWICEに見るK-POPプロデュースの業 「今さら訊けないK-POPとJ-POPの相違」第34回・前編

冬将軍：
よく、とあるメロディをコードにしてみたら、実はすごいコード進行だった、みたいな話があるじゃないですか。でも書き手が専門的に分析することはできても、読み手がそれをきちんと理解するにはそれなりの知識が必要。でも、もっと感覚的なロジックが存在していて、理論よりもそっちで説明することができればもっとわかりやすく伝わるんじゃないかって思うんです。

鈴木：
音楽理論とか専門用語を使うと、読者が限定されてしまうのは確かですね。自分も、長年、専門性の高い本とかコンテンツを作っていたから、気をつけていないと、どうしてもそういうものを使いがちになります。

冬将軍：
音楽を文章で説明するのって、やっぱり感覚的なものだと思うんです。私の言い回しや表現は独特だって言われることがあるんですけど、自分は一般的な音楽誌よりもギターなどの機材誌で育ってきた人間なんですね。今はYouTubeなどで音が聴けるけど、昔は雑誌のレビューで音を想像するしかなかった。音源レビューよりも機材レビューはシビアですからね。ストラトキャスターとレスポールのサウンドの違いは、ギターにそれほど詳しくなくともわかると思うけど、じゃあ、50年代と60年代のストラトの違いは？　もっといえば、54年製と57年製の違い、62年製前半と62年製後半の違いは？　それを知ってるわけですよ、所有したことないのに（笑）。知識としては頭でっかちになりうるところなんだけど、そういう“音を表した文章表現”が知らずのうちに血となり肉となっていたわけです（笑）。

鈴木：
そこが冬将軍さんの文章のルーツになっているわけか……だから、ギター機材を追いかけ続けている自分にはスッと入ってくるのかもしれない（笑）。

冬将軍：
エフェクターやアンプもそうですけど、ピックアップのレビューなんて、もっとシビアですよね。丸ごと1冊ピックアップ弾き比べのムック本とかあったじゃないですか。音源なしの文字だけの。でもわかるんですよ、我々の世代ならみんな、ディマジオとダンカンのピックアップの違いを知っている（笑）。

鈴木：
わかる、わかる。同じギブソンPAFをもとにしているのに、ディマジオとダンカンでこんなに違うのか！って（笑）。

冬将軍：
あと、クリエイター特集も好きです。このコラムって、ありがたいことに中の人やクリエイターの方々にも読んでいただけてるようで。やっぱりアイドルって、そういう制作陣営を知ることでより楽しめますし。

冬将軍：
アイドルって同じグループでも、作曲者によって方向性も印象もだいぶ変わったりするじゃないですか。そこが面白さではあるんだけど、サウンドプロデューサーや制作チームがいる安心感は大きいです。WACKの松隈ケンタ氏＆SCRAMBLES、NEO JAPONISMのSaya氏＆A-Spells、MIGMA SHELTERのタニヤマヒロアキ氏、田中紘治氏……などなど、音楽面で1本、ぶっとい芯が通ってるグループが好きなので。

鈴木：
そこがしっかりしていれば、統一性と方向性を間違わない。

冬将軍：
今後はもっとクリエイターに特化したようなものを発信していけたら面白そうですね。

鈴木：
それは面白い！　ぜひやりましょう。こういうコラムって、やっぱり編集者が1番の読者でなければいけないというか、担当編集者である僕自身が“最新回キター！！”って、毎回楽しみにできるものじゃないと面白くないと思うんですね。そういう意味では、「偶像音楽 斯斯然然」毎回楽しみにしてます！