冬将軍×Pop’n’Roll編集長が振り返る連載50回の軌跡「エッジィでキャッチーなコラムでありたい」｜「偶像音楽 斯斯然然」第50回「偶像音楽 斯斯然然」第50回

最後尾札を持ってドキドキする気持ちを忘れてしまってはいい記事は書けない

さて、以下がこのコラムでよく取り上げたグループになります。

【登場回数上位のグループ】
EMPiRE　11記事
NEO JAPONISM　10記事
我儘ラキア　10記事
神宿　6記事
MIGMA SHELTER　6記事
わーすた　6記事
WILL-O' 　5記事
アンスリューム　5記事

冬将軍：
完全に好みが反映されてますね（笑）。

鈴木：
そういう意味では、今注目してるのはNEO JAPONISMですか？

冬将軍：
ネオは完全にヲタクですから（笑）。ライブも行けるところは全部行ってる。楽曲とサウンドのよさ、歌とパフォーマンスのよさというのはもちろんなんだけど、応援していて楽しい、というのは大きいです。どこよりも早く配信ライブをやったり、フェイスシールド付きの有観客ライブとか、鳴り物持ち込みOKライブとか、時世にいち早く順応しつつ、独自の面白みを追求している。観客を飽きさせない施策がウマいんですよね。特に今はこういう状況ですし、どのグループも真価が問われてますよね。パフォーマンス含めて、うかうかしてると淘汰されてしまう。

鈴木：
エンタテインメントに限らず、このコロナ禍は、これまでの仕事の仕方を再考する機会になったと思います。

冬将軍：
自分も長年アーティストのマネジメントに携わってきたからよくわかるんですけど、音楽の制作周りに自信があればあるほど、音楽自体に過信しちゃうんですよ。“いい曲は必ず見つかるし、いいライブやっていれば必ず広がる”みたいな。実際はそんな甘くない。これはコロナ禍に限ったことではないけど。

鈴木：
それこそ、BiSをはじめWACKが成功したのって、音楽のよさだけではなく、仕掛けや届け方が素晴らしかったんだと思います。

冬将軍：
いかにファンを熱狂させられるか。自分は音楽業界にいて、そういう仕掛けを考えながらもファン心が麻痺しちゃってたんですよ。レコード会社に打ち合わせに行けば、いろんなCDをもらえるし、ライブには招待される。即完するような人気公演だって、伝手さえあればけっこう観ることもできちゃったりするじゃないですか。それでも“好きなアーティストにはお金を落とします”アピールしてたんですよ。それを自分はBerryz工房だったんですけど、アイドルが気づかせてくれた。小学校のころ、長渕剛が好きで雑誌や新聞の切り抜きまで隈なく集めていたファン心。だから、自分はライブレポートとかも、できれば一般席で観たいんですよ。関係者席からは見えない景色があるから。

鈴木：
そういえば、＜LUNATIC FEST.＞の時もそうでしたよね（冬将軍と鈴木の馴れ初めは、＜LUNATIC FEST. 2015＞のオフィシャルブック『LUNATIC FEST. OFFICIAL DOCUMENT BOOK』の編集担当であった鈴木が、ライブレポートを冬将軍に依頼したこと）。

冬将軍：
ファンがライブでときめくところって、ギタリストがギターソロで前に出てきたところじゃなくて、ボーカルがMCしてる時に横でチューニングする姿だったりするわけですよ。それはアイドルも一緒だと思う。だから自分は特典会とかも普通に行ったりしますね。最後尾札を持って待っている時間、あのドキドキする気持ちを忘れてしまってはいい記事は書けないと思ってますから。

鈴木：
確かにステージやフロアはもちろん、特典会も含めて、アイドルのイベントはできていますよね。

冬将軍：
いろんなものが見えますよ。アイドル本人がファンにどういう対応しているのかというのはもちろんですけど。チェキの撮り方、特典券の回収の仕方、列の作り方……運営さんの色も出ますから。それに並んでいると、ヲタクの会話も聴こえてくるし。あの時間が好きです……という、もっともらしい理由をつけてますが、所詮ヲタクなので（笑）。

鈴木：
でも、“最後尾札を持って待っている時間、あのドキドキする気持ちを忘れてしまってはいい記事は書けない”は名言だな〜（笑）。肝に銘じます。さて、ラウド系のアイドルというのも、このコラムの大きな柱ですよね。前に話しましたけど、BABYMETALがジェントといった、現代的なメタル方面へ行かなかったというのも興味深くて。2019年10月にリリースした『METAL GALAXY』は、聴いていて懐かしい感覚を覚えたんです。B’zの松本孝弘さんが参加していたり、往年のTKサウンド……ヤマハEOSシリーズのようなシンセサウンドが聴こえたり。我儘ラキアも美メロとラップという組み合わせですが、これって、Linkin Parkが作り上げたラウド系の様式美だと思っていて。そういうところでも、90年代ミクスチャーの流れを感じたりします。ヒップホップやハードコアのハイブリッド感っていうと、Missile Girl Scootを思い出したり。

冬将軍：
あー、Missile Girl Scoot！　確かにそうかもしれない。そうそう、BABYMETALって、メタルで語られることが多いけど、自分の中ではやっぱりアイドルなんですよ。アイドルだから、あれができたわけで。ラキアもそうですよね。アイドルだから自由でいられる。ラキアはMIRIさん加入で大きく変わりましたよね。音楽性もそうだけど、見え方がだいぶ変わった。それまではどうしても星熊南巫さんが突出していた印象で。MIRIさん加入でツートップになるかと思いきや、きちんと4人に力が分散された。あの進化はすごいと思う。

鈴木：
新メンバー加入による進化という部分では、神宿。塩見きらさんの加入は大きいですね。歌の面でも作詞の面でも。『超！アニメディア』でのアニメコラム連載も文章が最高（笑）。

冬将軍：
あのコラム読ませるんだよなぁ。たとえ題材がわからなくとも惹き込まれてしまう。書き手として勉強させてもらってます。彼女は逸材ですね。こないだのYouTubeチャンネルでのゲーム実況しながら質問に答えていくヤツ、すごかったですもん。よくゲームやりながら別のことをこんなにしゃべれるなって。

【質問コーナー】塩見きらゲーム実況しながらマシンガントーク【Fallguys】

冬将軍：
四国弁？　ずうずうな方言なんだけど、なんか品があるし。勉強はできないけど頭がよい子って、いるじゃないですか。頭の回転が早い、勘のいい天才肌。そういう子ってアイドル向いてると思うんですよ。だけど、塩見さんって、勉強もできて頭もよいIQが高い秀才タイプ。それでいてヲタク気質。失礼な言い方ですけど、本来であれば、アイドルに向いてないタイプだと思うんですよ。そういう子がアイドルやってるんだから面白くないわけがない。向いてないのに、頭がよくて器用だからなんでもこなしちゃう。そんな秀才が神宿という天真爛漫な陽キャグループに入ったわけですから、いろんな意味で核爆発を起こしたわけです。