第10回:病みとの向き合い|二丁目の魁カミングアウト ミキティー本物の「本物のアイドル論」
第10回:病みとの向き合い|二丁目の魁カミングアウト ミキティー本物の「本物のアイドル論」
アイドル界のさまざまなトピックを、唯一無二のゲイアイドルだからこその視点で斬り込む連載コラム(隔週土曜日公開)。今回のテーマは、アイドルの病み。アイドルを一生続けるために、ミキティー本物が導き出したモチベーションの作り方とは?
私は私のままでいよう
嘘をついて、希望や夢だけ与える歌を歌っていくなんて、きっとそんなの一生できない。絶対にステージに立つのが怖くなってしまうと思います。今、私の曲は31曲ありますが、どの曲も、悲しいだけの曲もなければ、嬉しいだけ、楽しいだけの曲もなくて、1曲の中にいろんな感情が詰まっているんです。
だから、明るめの曲も悲しい日にも歌えるし、苦しい曲も楽しい日にも歌える。楽しいだけの曲も書きたいなって思うんだけど、作り出すと書けなくなってしまうんですよね。結局、楽しいものの背中合わせにある切なさや悲しみが、どうしても一緒に文字になっちゃうし、そういう表現をしてしまうのが、私なんですよね。
私は自分の実体験や思っていることを文字にして歌にすることしかできない。ちょっと背伸びをして、楽しい曲を作ろうって思っていた時期もあったけど、もう今は諦めました(笑)。私は私のままでいようって、無理をしないことにしました。頑張ったら、私じゃなくなっちゃうなと。そうしようって決めてから、すごく自然体でやれているんです。
嫌なことがあってもライブをやったらスッキリする
アイドルの子たちの中には、病んでいることを過激にSNSで発信する子もいますよね。そういう気持ちは、パフォーマンスで出せばいいのにって思ってしまいます。文字にすることでスッキリする気持ちはわからなくはないけど、ファンは友達じゃないから、お金を払って応援してくれている人に向けて、マイナスな気持ちを全面に出すのはどうなんでしょうか。
私だったら、歌詞に残したり、パフォーマンスにぶつけるかな。メンバーとも“パフォーマンスでマイナスな感情をプラスにしてファンに届けよう”ってよく話しているんだけど、それができていない子が多すぎるなと感じています。私たちは嫌なことや悲しいことがあっても、ライブをやったらスッキリするし回復するんです。そのライブを観て、今日すごかったねって言ってもらえたら救われるし、ライブをそういう風に活用できていない子たちが多いなって思います。
今のアイドルの子たちは、ライブが月にあと何本もあって大変っていう考えをしてしまう人たちばかり。アイドルがそう思っていたら、ファンも同じ気持ちになってしまいますよね。でも、ライブを大切に、歌を届けることを1番大切にしているグループだったら、毎日ライブをやっていても日々違いが見せられると思うんです。だから、ライブをこなしていくっていう考え方を持っていたら、アイドル自身もしんどいだろうし、ファンも可哀想だなって思います。
毎日ライブをしていても新鮮な気持ちでできている
私たちも、1ヵ月毎日ライブをしていた時があったけど、毎日新鮮な気持ちでできていたんです。“毎日観ていてもまったく飽きない”って言ってくれるファンの子もたくさんいました。もちろん楽しいだけじゃなくて、つらい日や悔しい日もあったけど、毎日違う風景が見えていたし、ファンも同じことを思ってくれていたんです。
その理由は、自分たちでもハッキリとはわからないけど、ファンの人をそういう気持ちにさせるのって、やっぱり私たちが毎日新鮮な気持ちを持っているからだって思うんですよ。私たちは、今月のライブはあと何本でやっと終わるっていう考えよりも、あと何本で終わっちゃうから、もっと楽しまなきゃ、もっといい経験しなきゃ、もっとステージから見える景色を目に焼き付けなきゃって気持ちの方が大きいんです。ライブだけじゃなくて、生きていても、毎日同じことを考えています。
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