第12回：Juice=Juice主演・演劇女子部＜タイムリピート～永遠に君を想う～＞〜小出祐介&南波一海「小出は明日、昨日の南波と連載する」〜今週も曲を聴かずに、Juice=Juice主演舞台の根本的には解決したことになってないんじゃないか問題を語り合う

小出：
で、何回目かのループの際に、じつは隕石とぶつかる際のモニター映像が偽物だということが判って。船の大破が、隕石の衝突じゃなくて、爆弾による爆発だと判明する。じゃあそれは誰が仕掛けたんだっていうことで、船の中での犯人探しになっていく。そんな感じで問題がちょっとずつ移行していくんですよね。その構成はウマいですよね。

南波：
あらすじを追っているだけでも面白かったなって思う。

小出：
その後、ルーパーがどんどん増えていって、最終的には全員でループするところまでいく。普通はここで問題が解決するのかなと思うんだけど、解決しないんですよね。船が爆発する未来は変わらない。因果律の話というのかな、こういう因果に向かう根本の原因を断つ必要があるって感じになって、稲場愛香さんが船から降りることになるんですよね。

南波：
いろいろあってね。

小出：
彼女自身が爆弾だということが判明するんですよ。

担当編集・山村：
おお……！

南波：
敵側から送り込まれたスパイだったんですよね。ロア帝国時代の記憶がなくなった。

小出：
スパイ探しをしていた本人がスパイだったっていう。彼女がエネルギー源に近づくと彼女が爆発してしまう。要は、稲場さんが離れない限り、この船は爆発しちゃうんですよ。あー、こうやって喋ってると、すごいよくできてるなって思う（笑）。しかも敵国の追手も来ているから、もし仮にエネルギー源から離れたとしても自分たちの船は撃墜されてしまう。なので、根本を断つために稲場愛香さんが船から強引に出るという。

南波：
この脱出ポッドも伏線があるんですよね。

小出：
そうそう、この伏線の張り方もウマくて。船には脱出ポッドがあって、みんなそれを使って逃げればいいじゃないかって話になるんだけど、この脱出ポッドには航行するための機能がなくて、ただ宇宙を彷徨うだけになってしまうと。なんでそんな使えない脱出ポッドつけてるんだって話ですけど（笑）。だからその案は却下されるんだけど、最後に稲場さんだけがそれを使うことになる。そしたらコックピットの映像が出て、『アルマゲドン』演出があって。

南波：
あるいは『ディープ・インパクト』演出。

小出：
そうそう。画面越しのさよならね。で、劇のタイトルの＜永遠に君を想う＞的なことを言うんですけど、ここが問題の箇所で。稲場愛香が船からいなくなりました、宮本佳林をはじめとする乗組員たちは船が爆発しない未来を進みます。この後はこの船の視点で話が進んで、連邦がクリスタルの占有権を取ってめでたしめでたしになるんです。でも、これ、あくまで稲場さんがいなくなったルートの解決ってだけじゃないですか。言い換えれば、主人公を取り外しただけのエンディングなんですよ。『ルーパー』とか『まどマギ』パターンになっちゃうんですけど、稲場愛香さんがループを止めるとか、ループの外の概念になるとかしないと。これまで稲場愛香を追っていたカメラが、最後はクルーを追うカメラになって終わっちゃってる。稲場さんのほうを見たときに、結局、彼女がまた爆発するとするじゃないですか。

南波：
そしたらループしちゃうんですよね。

小出：
ループする可能性は全然生きてる。

山村：
なるほど。

小出：
トリガーとなっている稲場さんを救済しない限りはタイムリピートはなくならない。ということに観劇中に気づいて。途中までのギミックはめちゃめちゃよくできてるんだけど、これだとなんも解決にもなってないじゃん！って。

南波：
これは稲場さんが爆発することなくずっと宇宙を漂うってことなのかな？みたいな。稲場さんの演技がすさまじいから、有無を言わさず感動的に持って行かれるんですよ。

小出：
エモくはなるんだよね。やっぱ、アルマゲパターン出されるとね。でも、タイムトラベルもの好きとしては疑問点が残りましたよっていうことです。

南波：
まず、おれのツイートを見てループものだと知って、小出くんがちゃんと観劇しに行ったのが驚きました。

小出：
どんだけ好きなんだよっていう（笑）。自分でチケット取ってね。見応えはすごいありましたよ。稲場愛香さんは本当に立派だった。復帰できてよかったです。演技のレベルで言ったら、頭ひとつ抜けてる感じでしたよね。歌唱のレベルで見ると、ほかの人たちもみんなウマいんですけどね。台詞に対する発声の仕方とか、滑舌のよさとかが抜きん出ていて。オールマイティなイメージのある、あの宮本佳林ちゃんがさ、ヲタクっぽい男の子の役だったのもあるとは思うんだけど、ちょっと早口なんですよ。そこは気になった。

南波：
聞き取りにくいところがありましたね。

小出：
そのせいで聞き逃してる情報がマジであるんじゃないかと思って。脱出ポッドのくだりがどうなのかっていうのは聞き取れていないところがあるのかもしれない。先にエクスキューズさせていただくと、聞き取れていないからこういう解釈になっちゃったけど、もし勘違いがあったらごめんなさい。あともう1つ気になったのが、全体的に歌いすぎかな。

南波：
演劇女子部は基本的にミュージカルなので歌いますよ（笑）。

小出：
それにしても歌いすぎじゃない？　＜寝る子はキュート＞は歌多くなかったよ。頭とケツくらいしか歌わない。真ん中くらいにめっちゃ泣ける「私がオバさんになっても」があって、それくらいの歌構成だった。

南波：
小出くんは＜寝る子はキュート＞が大好きですもんね。

小出：
＜タイムリピート＞はことあるごとに歌っていたけど、曲が少なかったらまたちょっと印象違ったのかなとも思う。そうなると歌じゃなくて、もっと演技で引っ張らないといけなくなるのか。

南波：
歌があると場面転換の使い勝手もいいですよね。急に歌い出すのって不自然なんだけど、そのことによって自然と場面を切り替えられるから。

小出：
そこがミュージカルのおいしいところでもあり、難しいところでもある。そういえば＜タイムリピート＞の脚本の考察って、けっこうあるんですかね。いくつかブログ読んだんだけど、やっぱり演技のことしか書いてなくて。

南波：
パンフレットにも筋書きについての細かい解説はなかったです。

小出：
そうなんだ。物語に関する考察とかがあったら読んでみたいな。あと、僕らが話してた話の筋が間違ってたりしたら教えてくださいね！
次回へ続く

【今週のまとめ】
今週の曲：特になし。