第1回:Juice=Juice 〜小出祐介&南波一海「小出は明日、昨日の南波と連載する」 〜記念すべき1回目のテーマはJuice=Juice。小出と南波が彼女たちのクリエイティビィのレベルの高さを語る。

小出 祐介

南波 一海

2018.08.25

ホウドウキョク『真夜中のニャーゴ』MCから、イベント<こんばんはプロジェクト>へとトークの場を移した、Base Ball Bear ・小出祐介と音楽ライター・南波一海が新連載をスタート。毎回南波が小出のために用意したアイドル曲を聴いて、着地点を全く考えずに最近思っていることを語り合う。

宮本佳林さんは大化けする可能性もあるし、いい曲書きそうじゃん

小出:
これはどういう連載なんですか。

南波:
当初は僕が持ってきた曲を聴いてもらって、小出くんに感想を言ってもらうという「めかくしジュークボックス」的な企画を提案されていたんですけど、自分は曲だけにまつわる話じゃなくてもいいのかなと思っていて。というのは、続けていくうちに楽曲についてどう表現するかっていう語彙力の問題に集約されてしまうじゃないですか。その場でパッと聴いたものだし。

小出:
そうだね。途中からふざけたりする可能性もある(笑)。

南波:
だから、ある曲をきっかけに、最近これこれについてこんなふうに考えている、みたいな話をするのがいいのかなと。

小出:
なるほど。

南波:
というわけで早速1曲いってみましょう。

【Juice=Juice「禁断少女」を聴く】

小出:
ジュースだ。

南波:
さすが。

小出:
二人目の声でわかった。かなとも(金澤朋子)さんの声で。

南波:
8月に出たアルバム『Juice=Juice#2 -¡Una más!-』収録の新曲なんですけど、加入したばかりの稲場愛香さんが参加しているんですよ。このアルバムでは3曲歌ってます。

小出:
時事ネタだ。

南波:
Juice=Juiceのメンバーが増えていくことに関しては?

小出:
それはどっちでも(笑)。5人から7人に増えた段階でそう思うようになった。そもそも7人になったのが悪くなかったので、増員していくぶんにはいいんじゃないっていう。

南波:
加入のニュースが流れた当初、カントリー・ガールズを離れて地元の北海道で活動していた稲場さんが再びハロプロのグループに戻るのであれば、そこはJuice=Juiceじゃなくてカントリー・ガール ズなのではないのかという反応もあって。

小出:
自分はおもしろ人事だと思いましたけどね。

南波:
ある意味ハロプロらしいですよね。

小出:
先が読めないところがね。

南波:
この記事が出る頃には稲場さんもグループに溶け込んでいるんだろうなと。先日、宮本佳林さんに話を聞いたんですけど、Juice=Juiceは5人で続けていくものだと思っていたけど、7人になった時点でそのこだわりもなくなって、むしろ解散して曲が歌い継がれなくなるよりも続いていくほうがいいと考えるようになったみたいです。

小出:
それはかなり未来志向ですね。

南波:
自分の卒業後のグループを想定しているんですよね。

小出:
看板を残すことを考えているというか。そういう位置に立ちつつあるということでもあるんですね。

南波:
この曲は作詞・作曲が大橋莉子さんで、編曲が平田祥一郎さん。大橋莉子さんはまだ22歳の音楽家で、宮本さんのDTMの師匠でもあるんですよ。宮本さんが作詞作曲した「ピンクモーメント」の編曲をしていて。

小出:
バースデーイベントで披露されたという。

南波:
それが去年の12月で。それ以降も勉強を続けていて、いまではコードを分析したりしていて。趣味で曲も作っているみたいです。

小出:
マジで? 音楽理論も習ってるの? DTMもやって、もうネイティヴYouTuberみたいじゃん。ネイティヴDTMer(笑)。1年くらいコツコツやってたらだいぶうまくなっているよね。アイドルとしてやっている以上、アーティストの部分を兼ね備え持つのは結構危険な橋でもあるのかな……でも、それももう古い考えかたなのかも。

南波:
昔、松任谷由実が松浦亜弥に無理に自分で作詞しようとしなくてもいいって話したエピソードがありましたよね。でも、それも10年以上前の話で。

小出:
いまは曲を作ってニコ動に上げてみるところから作りかたを覚えたり、昔より作曲の敷居が下がっているというか。

南波:
その作業のスピードも早いし。

小出:
覚えるのも早い。いまはそういうミュージシャンが増えているじゃないですか。海外とか特に。ミュージシャンになるための方法が昔よりめちゃめちゃフランクになっているから、アイドルがそういう面を兼ね備え持つっていうのは、かつては危険な橋だったけど、宮本さんみたいなクリエイティブな感性を持っている人がそういうイベントで披露するっていうのは全然悪くないことですよね。そんなにしっかり教わっているなら大化けする可能性もありますし。いい曲書きそうじゃん。

南波:
実際、「ピンクモーメント」は素晴らしいし。

小出:
ハロプロの曲の話に戻すと、ハロプロボキャブラリーが雑多になっていっているというのはあるよね。もしかしてサウンドよりもそっちのほうが気になるかも。

南波:
ハロプロは2015年あたりから色んな作家のかたが曲に関わるようになっていったけれど、やっぱりつんく♂さんの歌詞ってめちゃくちゃ印象的ですよね。

小出:
つんく♂文法とか、つんく♂文学ってかなり独特なものだから。ざっくりしてると見せかけて、すごく具体的な内容だったり、人格崩壊してそうな感じだけど、じつは筋が通ってるっていう。で、同じ源流からすべての世界観が形成されていたのが以前のハロプロだったわけでしょ?今もすごく良い歌詞や上手いと唸る歌詞も沢山あるんだけど、あの独特な世界にどっぷり浸かっていた自分はぶっ飛べなくてさ……。

南波:
モーニング娘。は新曲が出るたびに必ずぶったまげるポイントがありますもんね。つんく♂さんの歌詞すげーって。

小出:
なる、なる。本当はよくないんだけどね。ハロプロは前に進んでいるのに、懐古主義というか、つんく♂原理主義ではいかんぞと。変化を受け入れなくてはと思いながらも、まだ葛藤してる。

南波:
Juice=Juiceの今回のアルバム、かなりよかったですよ。初期のファンキーな感じも濃厚で。松井寛さんがアレンジしたこの曲もさすがでした。1週につき1曲というルールだったけど、聴いてみますか。

【Juice=Juice「TOKYOグライダー」を聴く】

小出:
松井さんがすごいのは、こういう曲をずっと作れていることですよね。(しばらく聴きながら)いやぁ、格が違う。グルーヴの組み立てと上モノのアンサンブルがすごい。これをラップトップ一台で作るっていう。頭おかしい(笑)。

南波:
弦も衝撃的なかっこよさで。

小出:
弦、すごいね。なにをどうやってこうなるんだ……。ドラムもすごい。松井さんってあんまりタムが出てこないのかな。……いや、っていうかキック・スネア・ハットの構成がまず凄すぎて、その印象が強いのか。ちゃんと出てきてはいる。

南波:
弟子にあたる筑田浩志さんが言っていたんですけど、ドラムでちょっと変化を加えたりすると、なぜそうしたのかを説明させられて、とにかく引き算を学んだというようなことを言ってました。

小出:
なるほど。すごい色々やっているようで、それぞれのパートがやってることは最小限だもんね。自分の機能を果たしているだけというか。ドラムに集中して聴いてるとDTMやってる人はわかると思うけど、「これMIDI打ってるんだぜ……」って愕然とするよね。手打ちでベロシティの調節とかめっちゃやってるんでしょうね。やっぱすごいわ。玄人中の玄人であり、変態(笑)。

『Juice=Juice#2 -¡Una más!-』アルバム紹介
キャリア6年目にして2枚目のフルアルバム。5人時代、7人時代、そして8人時代の楽曲が収録されたフューチャー&パストな絵巻物に。シングル曲に負けじと劣らない名曲を多数収録。

小出祐介、南波一海
小出祐介、南波一海

小出祐介 Profile
1984年12月9日生まれ、東京都出身。2001年にロックバンド・Base Ball Bearを結成し、高校在学中から東京都内のライブハウスを中心に活動を始める。2006年4月にミニアルバム『GIRL FRIEND』でメジャーデビューを果たし、これまで2度に渡り、日本武道館でのワンマン公演を成功させる。作詞・作曲家としても活動し、アイドルネッサンス、アップアップガールズ(仮)、東京女子流、チームしゃちほこ、南波志帆、山下智久、KinKi Kidsら多数のアーティストに楽曲を提供している。

南波一海 Profile
音楽ライター/レーベルPENGUIN DISC主宰。78年生まれ。近年はアイドルをはじめとするアーティストインタビューを多く行い、その数は年間100本を超える。タワーレコードの「南波一海のアイドル三十六房」などに出演。著書では『ハロプロ スッペシャ〜ル』『ヒロインたちのうた』を音楽出版社より発行。ハコイリ♡ムスメ、RYUTistなどが所属するタワーレコード内のレーベルPENGUIN DISC主宰。