TEAM SHACHI、sora tob sakana、でんぱ組inc.、新体制で新境地を感じさせる新曲｜「偶像音楽 斯斯然然」第8回

おびただしい情報量の中で研ぎ澄ます気鋭の才　でんぱ組inc.「形而上学的、魔法」

夢眠ねむ卒業後、6人体制となったでんぱ組inc.のニューシングル。玉屋2060%による「いのちのよろこび」は世界各国の土着的な鼓動がカオスと化していく壮大なスペースオペラ。一聴しただけではよくわからない世界観ながらも“らしさ”が感じられる楽曲であるが、こちらは“え？　これ、でんぱ組なの？”と一瞬耳を疑った人工的アンビエントソング「形而上学的、魔法」。ここに来て、この振り幅の広げ方おそるべし。

でんぱ組.inc「形而上学的、魔法」

最近の子が聴くとボカロっぽい、と思うのかな。この無機質なクール感。アダルトでジャジーな雰囲気をあえて淡々と表現することで、今どきなコンテンポラリー要素を色濃くする。クレジット見て驚きながらも納得。今話題の15歳シンガーソングライター、諭吉佳作/menの詞曲。

この諭吉佳作/men、控えめに言っても天才少女。15歳とは思えない色気のまどろんだ歌声が、女性の心にある虚無と迷いをあざ笑うかのようにシニカルに斬っていく。5月の＜下北沢サウンドクルージング＞にて、初めて彼女のライブを観たのだが、一晩中観ていたいと思わせるほどの空間を作り上げていた。グラスにコインを落とす音、スマホカメラのシャッター音……次々と重ねていくサウンドコラージュを駆使したステージはまさに音のインスタレーションといった趣で。それを飄々とした面持ちで悠然と進めていく、その佇まいにただただ息を呑むしかなかった。

そんな彼女に白羽の矢を立てたでんぱ組inc.の才覚に感服、なによりもそれをでんぱの楽曲として仕上げている才腕に敬服。先述の「いのちのよろこび」といい、前シングルの超高速電波ソング「子♡丑♡寅♡卯♡辰♡巳♡」と、ストリングス＆ピアノとコーラスワークで聴く者の胸をえぐってくる「秋の葉の原っぱで」の清竜人の書いたコントラストといい、ここ最近の新曲4曲を並べてみれば、まったく方向性のよくわからない混沌とした音楽性。しかしながらこのおびただしい情報量こそ、でんぱ組inc.の個性でもあり、それをちゃんと昇華しているすごみ。他の追随を許さないぶっち切り感は、さすがとしか言いようがない。

でんぱ組.inc「子♡丑♡寅♡卯♡辰♡巳♡」