CYNHNに#2i2、Kolokol、Ringwanderungからおすしハードコアまで この夏グッときた音|「偶像音楽 斯斯然然」第63回
冬将軍
音楽ものかき
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今回は、この夏、冬将軍の心の琴線に触れた楽曲やグループをピックアップ。高い音楽性や表現力豊かなパフォーマンスを放つ、今チェックしてほしいアイドルたちの魅力を掘り下げていく。
『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。
この夏、グッときた新譜やグループを紹介していこうと思うのだが、本題に入る前に当コラムでもよく文中に挿入する動画周りの話を少々。意外と知られていないYouTubeの機能である。
意外と知られていないYouTubeアートトラック
楽曲がフルで聴けるジャケット静止画表示のYouTube動画を見たことがあるだろうか。チャンネル名は“アーティスト名+トピック”となっており、“これって、もしやダメな動画じゃないの?”と勘繰ってしまうユーザーがいるかもしれない。
こういう動画。チャンネル名が“アーティスト名+トピック”になっている。
結論から言えば、どんどん見て聴いて、広めるべき動画だ。
これはYouTubeによって自動生成される「アートトラック」と呼ばれるものだ。専用アプリを使用しなくとも、YouTube Musicを聴くことができる機能であり、ざっくりいえば、SpotifyやApple Musicと同じ音楽ストリーミングの一種なので、安心して再生してほしい。もちろん再生すればアーティストへ還元される。
ただ、この「アートトラック」はYouTube Musicの有料 or無料メンバーの線引きがあったり、そもそもYouTube Musicにて配信されている楽曲でないと作成されない。この辺の対応はレーベルやディストリビューターによって異なり、SpotifyやApple Musicに比べると聴ける楽曲数が少ないことが難点でもある。
「アートトラック」は“アーティスト名+トピック(Topic)”と検索すれば出てくる。チャンネル名が“アーティスト名+トピック(Topic)”になっていることを確認したい。メジャーレコード会社の場合は、オフィシャルチャンネル内に作成されていることもある。どちらにしても概要欄に作詞・作曲者や原盤提供などのクレジット、そして必ず“Auto-generated by YouTube.”の表記があるはずだ。それ以外のものはアンオフィシャルなものなので気をつけよう。
このアートトラックは“自分たちの音源が勝手にアップされてる!?”と誤解するアーティストがいたりと、あまり知られていない機能でもあるので(自動生成されるため、“勝手にアップ”は間違いではない 笑)、もっと広く認知されるべきものだ。当コラムでも楽曲紹介などでどんどん活用していきたい。
さて、閑話休題。
今回はここ最近グッときた新譜やグループを、枠にとらわれずに紹介していきたい。まずは冒頭の話で例に挙げたRingwanderung。8月4日にリリースした待望の1stフルアルバム『synchronism』だ。
Ringwanderung 3段階くらいスケールアップした新作
満を持してのアルバムは予想以上の完成度だった。複雑ながらも綿密丁寧に構築された楽曲とアレンジ。鍵盤ロックをベースに、マスロックやポストロックといった前衛的な要素を取り入れながらもキャッチーで耳馴染みのよいメロディが特徴的なRingwanderung。本作ではさらなる音楽探求とメンバーのスキルアップが重なり、表現力と振り幅を含めて、グループが1段階どころか3段階くらいスケールアップしたことを知らしめる作品だ。
Ringwanderung - 燃える火曜日 (Lyric movie)
「es」や「ハロー ハロー」といった既存人気曲の完成度の高さを再認識するとともに、ストリングスが昂揚感をじっくりと掻き立ていく「fall into sky」のダイナミズム、ドリームポップをEDMアプローチで昇華していくような「君のいない街」、そして「夜彩」のスピードを感じさせるメロディなど、新基軸を感じさせる楽曲も素晴らしい。
Ringwanderung - 夜彩 (Lyric Movie)
みょんの器用でオールマイティな安定感と、辺見花琳の少女のようでキリリとした強さを感じる倍音豊かなで不思議な歌声。スーッと綺麗な発声をする増田陽凪とハスキー気味の佐藤倫子の対比も心地よく響き、寺尾音々の瑞々しい歌声がRingwanderungの響きを豊かにしていく。そんな各々の声色も魅力的だが、5人の声が重なったユニゾンは、この上ない至福の協奏というべきものとなる。
Ringwanderung - ササル (Lyric movie)
「KIRAIDA」「ササル」ではメンバーによる作詞で新境地を探る。「ササル」の焦燥感を掻き立てていく言葉選びとメロとリズムに対する詞の置き方に、みょんの新たな才覚を知る。
定期的にライブを観ているが、先日8月7日に豊洲PITにて行なわれた<東奔西走〜極〜>で、広いステージに相応しいグループになったのを思い知らされた。どこかお淑やかな優等生感もあった彼女たちだが、気づけばエモーショナルでアグレッシヴなパフォーマンスも兼ね備えるようになっている。
思い起こせば、Ringwanderungを初めて観て、びっくりした勢いのまま当コラムで取り上げたのがちょうど1年前の<アイドル甲子園>、新木場STUDIO COASTでのトレーラーのステージだった。野外の小さいステージにも関わらずやたらと音がよく、自然とステージに惹き寄せられてしまった。そんなことを思い出しながら、うん、なんとも感慨深い、……などと古参ぶってみる。
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