ZONEからSCANDAL、Buono!にサイサイ……世界が羨む日本のアイドルとガールズバンドの共鳴|「偶像音楽 斯斯然然」第69回

ZONEからSCANDAL、Buono!にサイサイ……世界が羨む日本のアイドルとガールズバンドの共鳴|「偶像音楽 斯斯然然」第69回

冬将軍

音楽ものかき

2021.11.06
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“アイドル”と同じように偏見と蔑称的な意味合いで扱われることもある“ガールズバンド”。今回は、この“ガールズバンド”を主軸に、日本での変遷やアイドルとの親和性、お互いに与えた影響などについて、冬将軍が独自の視点で綴る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

唐突にガールズバンドを始めると動き出した、かてぃ改めKATYのバンド、Haze。お世辞にもウマいとは言い難いボーカルだが、赤裸々に気持ちを吐露する詞と飾り気のない歌声がザラザラと鳴り響くギターとともにバシバシと心に刺さってくる。東京事変「群青日和」を想起させる演奏シーンが盛り込まれたMVもいい。

Haze / 煙霧 / Official Music Video

この手の、UKオルタナティヴロック然としながらも、哀愁漂う日本のフォーク的アプローチで歌にしていくスタイルは、Hump Backやカネヨリマサルしかり、近年のガールズバンドの主流にもなっている。

アーティストとアイドルと

アイドルが卒業後にバンド活動を始めるのは自然なことでもある。大人が敷いたレールの上を走っていたアイドルが、自我の芽生えとともに自らレールを敷いていくようになる、その1つの形だ。The Idol Formerly Known As LADYBABYの黒宮れいはBRATSでそのカリスマたるフロントマンとしての存在感で圧倒し、赤い公園に加入したアイドルネッサンスの石野理子は、歌唱力のあるアイドルが音楽性を高く評価されているロックバンドのボーカルとして迎え入れられる、という新たなアイドルの道を切り拓いた。バンドではなく、アーティストへの道という部分では、NMB48/AKB48の山本彩はシンガーソングライター色の強めたソロアーティストとして、方や℃-uteの鈴木愛理はあくまでアイドルの延長線上にあることを踏まえながらソロシンガーの道を進んでいる。最近では、LADYBABYの金子理江がIlieとして新たな活動を始めた。

Ilie「kamishibai」

こういった話をすると、“アイドル vs アーティスト論争”が起こったりもするのだが、そこに関しては両シーンを長年見てきた人間だからこそ達観できるところでもある。私は、アイドルをよく知らないロックファンがアイドルを見て、“アイドルの枠を超えている”と言い出すのは、アイドルにハマっていく合図であると思っているし、制作的な観点から見れば“アーティスト>アイドル”になってしまうこともわからなくはない。それこそ、Charや吉川晃司、チェッカーズが“脱アイドル”をした事例もあるわけで、これは女性アイドルに限ったことでもない。そういう意味で、アイドルというのは偏見であったり、呼称自体が蔑称的な使われ方をされる場合もあるということだ。しかしながら、そういったところから生まれる論争がシーンを発展させてきたのも事実である。

アイドル同様、偏見と蔑称的意味合いで扱われることも多いのが、“ガールズバンド”だ。“女性バンド=ガールズバンド”という、単純な図式にはならないところが少々ややこしいところ。ガールズバンドと呼ばれることに難色を示す女性バンドは少なくない。“アーティスト(バンド)>アイドル”という見方に付随したところでもあるが、ガールズバンドという呼称自体が、“アイドル的な売り方をしているバンド”というような見られ方をされることがあるからだ。

そもそも、ガールズバンドという呼称は2000年代以降に広く定着したものである。80年代からのバンドブーム、SHOW-YAやプリンセス プリンセスがチャートを席巻していた頃は、女性バンドのことは“レディースバンド”やギャルバン”と呼んでいた。近年のガールズバンドの源流をSHOW-YAやプリプリだとする文献をたまに見かけるのだが、私個人としては、そこを源流とするのは少々違うように思っている。なぜならば、90年代中期に差し掛かると、そういった“ギャルバン”の潮流は途絶えてしまっているからだ。90年代中期以降は女性バンドに変わって、JUDY AND MARYにthe brilliant green、My Little Lover、はたまたEvery Little Thingといった、男性バンドに女性ボーカルというバンドがチャートを席巻している。

では、現在のガールズバンドの源流はどこにあるのだろう。私はWhiteberryとZONEの登場が、現在に至るガールズバンドシーンに大きく影響を与えたと考えている。

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