SCRAMBLESのoni、CYNHN渡辺翔、福井シンリ、Saya…… 気鋭のサウンドクリエイター特集<前編>|「偶像音楽 斯斯然然」第41回

SCRAMBLESのoni、CYNHN渡辺翔、福井シンリ、Saya…… 気鋭のサウンドクリエイター特集<前編>|「偶像音楽 斯斯然然」第41回

冬将軍

音楽ものかき

2020.10.10
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前編と後編の2回に渡ってお届けする今回の『偶像音楽 斯斯然然』は、今、注目しておきたい気鋭のサウンドクリエイター特集。前編となる本日は、渡辺翔、福井シンリ、Saya、oniの特異性を紐解く。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

アイドルソングにはクレジットを探るという愉しみ方がある。複数の好きなグループがいて、なぜ好きなのかと思えば、同じ作曲家が制作していたとか、作曲家の出自を辿ってみるとまったく別のジャンルからの繋がりがあって嬉しくなったり。アイドルソングの場合は作曲(主メロ、歌メロを作る)から編曲(アレンジ、トラック制作)まで一貫して手掛けることも多く、それがギタリストやベーシストだったりすると、演奏家としてのプレイスタイルやサウンドメイクが顕著で、そのアーティスト性を楽曲から感じることも多い。以前、筋金入りのサイファミ(サイサイファミリー、SILENT SIRENのファン)である私が、SILENT SIRENサウンドプロデューサー・クボナオキによる26時のマスカレイド楽曲の魅力に触れた。

そうした作曲家、サウンンドクリエイターの観点からアイドルソングを見ていこう。今、注目しておきたい気鋭の面々である。

渡辺翔 アニメソングのヒットメイカー

青を基調としたグループイメージの通り、清涼感もあり冷たさも感じる独自の世界観を表した楽曲が多いCYNHN。「水生」の目まぐるしく動く素早いタイム感を巧みに操っていく歌の運び方は見事。そこにあるのは疾走感や俊敏さとは異なる、まさに麗かな清流のようで。最新シングル「ごく平凡な青は、」の複雑極まりないバンドアンサンブルの中を器用にすり抜けていく歌しかり。

CYNHN(スウィーニー)「水生」Music Video

そうしたCYNHN楽曲を手掛けているのは、渡辺翔。山下達郎のマネジメント事務所として知られているスマイルカンパニー所属のクリエイターだ。辿ればアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の主題歌、ClariS「コネクト」(2011年)で一躍有名になり、その後も井口裕香「リトルチャームファング」(『ストライク・ザ・ブラッドOVA』OPテーマ 2015年)、LiSA「だってアタシのヒーロー。」(『僕のヒーローアカデミア』EDテーマ 2017年)、といったアニメソングのヒットメイカーとして広く知られている。自身のバンド、sajou no hana(渡辺のパートは、キーボード&プログラミング)しかり、スリリングに展開していくバンドアレンジの楽曲が多い。

sajou no hana 『青嵐のあとで 』(TVアニメ「とある科学の超電磁砲T」新エンディングテーマ)

アニメソングとなれば尺があるし、1曲の中にドラマティックな展開と音符の動きを求められることも多いだろう。CYNHN楽曲も高低が激しく動く音使いが多く、それをなぞる歌唱力の高い複数ボーカルのシームレスな繋ぎによって、ドラマティックに楽曲の世界観を演出している。ソロシンガーではできない業だ。渡辺はアイドルにも多数の楽曲提供をしているが、CYNHNほど密接な関係を持っているグループはいない。渡辺はソロシンガーでは成立しないものをCYNHN楽曲で自由に表現し、CYNHNは滑らかなボーカルで渡辺楽曲の面白さを体現している。まさに相性抜群の関係性であると言える。

渡辺曲をフィロソフィーのダンス楽曲で定評ある宮野弦士が編曲した「アンフィグラフィティ」

高低が激しいメロディといえば、ある意味J-POP/J-ROCK的なところでもある。そんな印象的なメロを多用するジャンルといえばアニメソングともう1つ、そう、V-ROCKだ。

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