SCRAMBLESのoni、CYNHN渡辺翔、福井シンリ、Saya…… 気鋭のサウンドクリエイター特集<前編>|「偶像音楽 斯斯然然」第41回

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SCRAMBLESのoni、CYNHN渡辺翔、福井シンリ、Saya…… 気鋭のサウンドクリエイター特集<前編>|「偶像音楽 斯斯然然」第41回

前編と後編の2回に渡ってお届けする今回の『偶像音楽 斯斯然然』は、今、注目しておきたい気鋭のサウンドクリエイター特集。前編となる本日は、渡辺翔、福井シンリ、Saya、oniの特異性を紐解く。

福井シンリ ダークなロックからキラキラポップスまで

私が福井シンリという名前を意識したのは、BELLRING少女ハートでのこと。「タナトスとマスカレード」の流麗なピアノから嵐のごとく吹き荒ぶ歪みの狂騒へと変わっていく様相や、「2SoundDown」の極悪リフ、ジャン=ジャック・バーネル(The Stranglers)かCRA¥時代の上田剛士(THE MAD CAPSULE MARKET’S)かというほどのギシギシに歪んだベースに心奪われたからだ。ロック好きの真理としては、楽曲より先にリフの組み立て方や楽器のサウンドメイクに心ときめくことも多いのである。

ギターのカッティングもうねるベースラインもグッとくるロックファンは多いはず グーグールル 「Caution!!」

調べてみれば、RENTRER EN SOI(※)のボーカリスト、砂月のソロ活動において楽曲提供プロデュースを行なっており、自身もヴィジュアル系バンドのベーシストだったというではないか。

※RENTRER EN SOI……リエントール・アン・ソイ。DIR EN GREYらが所属するフリーウィルにいたヴィジュアル系ロックバンドで、当初はL’Arc-en-Cielに代表される“白系”バンドであったが、次第にDIRフォロワーへと暗黒ヘヴィロック化し、2008年解散。

おっ、完全にこっち側の人だったかっ!(私はその昔、そっちのヴィジュアル系界隈で制作やマネジメントをやっていた人間なので)と興奮した次第である。先の動画のグーグールルといい、とにかくギター、ベース、サウンドともに抜群にカッコよく、最近では“作編曲:今井寿(BUCK-TICK)”と言っても誰も信じて疑わないであろう、NILKLY「Block System」における今井ばりにかき鳴らすギタープレイでそのセンスを轟かしている。

ダークなインディロックが得意と思いきや、愛乙女☆DOLL、Ange☆Reveといった可憐でキラキラとしたアイドルの楽曲も多く手掛けており、“ポップ=大衆性のあるもの”と“キャッチー=覚えやすいもの”をきちんと理解して制作に反映している作家である。

キラキラメロディに差し込まれる、ギターの使い方やBメロのスネアの捌きに尋常じゃないこだわりを感じる Ange☆Reve「リトルピ」(2017年)

個人的には、このポップとキャッチーのバランス感覚が非常に重要だと思っている。“ポップならずともキャッチーであれ(要約)”とは、空に還ってしまった赤い髪のギタリスト様が言っていた言葉で、私が制作ディレクター時代に常に心に留めおいていたことでもある。“ポップに寄せすぎるとロック味は少なくなることがあるが、とにかくキャッチーであることが大切”ということだ。逆にいえば、ポップを目指すならとことんポップに振り切るべし。“ポップではないけどキャッチー”な曲は、実にJ-ROCK/V-ROCK的でもあり、これを感じることができる作品、作家が個人的に大好きなのである。

そのことを感じ取れるクリエイターがヴィジュアル系の畑からもう一人、Sayaである。

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