NEO JAPONISM『NON CALL-NOW』 V-ROCK好き&メタルヘッズにも薦めたい極東ハードコア

NEO JAPONISM『NON CALL-NOW』 V-ROCK好き&メタルヘッズにも薦めたい極東ハードコア

冬将軍

音楽ものかき

2020.04.21
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2019年5月の活動休止、同年11月からメンバーを一新、再始動したNEO JAPONISMの新体制初となるミニアルバム『NON CALL-NOW』。前体制からのロックテイストをさらに色濃く打ち出し、コンセプトである“闘う”に見合った強度の高い楽曲群が揃い踏み。ライブでお馴染みの、SoundCloudにアップされていた楽曲がミックスダウン含めて再構成され、聴き応えのある作品となった。タイトル(=ノンコロナ?)が表すように、ライブができない情勢を踏まえ、緊急リリース。4月1日のライブ延期を踏まえて、配信告知から配信されるまで10日あまりというスピード、制作陣営のフットワークの軽さに感服。

私が新生ネオジャポを初めて観たのは最近なのだが、ヘヴィでエッジィな楽曲と強靭さを振りかざしていくステージングは衝撃的であり、すぐに心奪われた。“MUCCとメリーとBiSをぐちゃぐちゃに混ぜた〜”という少々偏った印象を持ったのだが、調べてみればサウンドプロデューサーのSayaが、もともとヴィジュアル系ロックバンド、SRASH NOTES GARDENのギタリストであり、松隈ケンタ率いるSCRAMBLESの一員として、BiSやPEDROといったWACKのアーティスト楽曲を手掛けているということで、妙に納得した次第である。

ネオジャポを予備知識なく初めて観て、ネオ・ヴィジュアル系御三家、WACK……と次々繋がっていった様子はこちら

ポップではないが、キャッチーである

本作はNEO JAPONISMの“現在(いま)”が存分に詰まった作品である。その魅力を端的に言葉で表すならば、“V-ROCK好き&メタルヘッズにも薦めたい極東ハードコア”。加えて、“ポップならずとも、ひたすらにキャッチー”であるから一分の隙もない。

重厚なディストーションギターの分厚い壁と、けたたましく打ち鳴らされるツーバスが刻むリズムの嵐。インダストリアルなニューメタルからジェント、オルタナティヴメタルからエレクトロニックまで。ヘヴィミュージックの旨味を凝縮しながらも現代的なモダンヘヴィネスに迎合を図る攻撃的なバンドサウンドが基盤となっている。しかしながら、歌メロディは和情緒の哀愁を嗅ぐわす耳馴染みの良さだ。ヘヴィネス一辺倒になりすぎない匙加減は洋楽の真似事だけでは辿り着けないJ-ROCKイズムである。こうした素養の混ざり方と、キメやブレイクを随所に用い、緩急を効かせていくバンドアレンジに、V-ROCK、つまりはヴィジュアル系ロックの趣を強く感じるのである。

ネオジャポ楽曲は、メインストリームにあるアイドルポップスとは異なるベクトルにあるが、どの曲でもサビは声と腕を上げたくなるし、歌のない間奏などでも巧みなリズムアレンジによって頭と身体を思いっ切り揺らしたくなる。まさに“ポップではないが、キャッチーである”という強みである。このことは、ヒットチャートを賑わすポップスに対するインディーロックの本懐というべきものでもあり、かつてタイアップ至上やカラオケブームといった、CDバブルにあった90年代の日本の音楽シーンの裏側で、当時の海外ロックの最先端であったオルタナティヴロックを積極的に取り入れていた多くの黒服系バンド(まだ“ヴィジュアル系”およびV-ROCKという言葉は浸透していない)が目指していたところでもある。“どんなにマニアックな音であっても必ずどこかがキャッチー”とは、かつてhideが、THE MAD CAPSULE MARKET’Sを褒め称えた言葉(意訳)だ。

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