LADYBABYからtwinpale、キングサリにChick-flickまで 地雷系、量産型、ピープス、V系……ゴスロリに塗れたアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第92回

LADYBABYからtwinpale、キングサリにChick-flickまで 地雷系、量産型、ピープス、V系……ゴスロリに塗れたアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第92回

冬将軍

音楽ものかき

2022.10.08
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今回のテーマは、アイドルとゴスロリの関係性。ゴスロリとは何か?という基礎知識から、そのテイストを取り入れた新旧グループの魅力を、冬将軍が独自の視点で綴る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

今でこそアイドルとゴス、およびゴシック・アンド・ロリータ(以下、ゴスロリ)との相性はいいように思えるのだが、そこに至るまでには長い歴史があった。というのもゴスロリというジャンルは基本的に同性ウケを狙ったものであり、男性ウケがイマイチだった。かくゆう私も2000年代の青文字系ブームの走りから、いくつかのゴスやゴスロリ女性アーティストのプロデュースや制作を行なっていたのだが、男性に向けてのプロモーション展開には頭を悩ませていたものである。

1970年代末頃よりイギリスで『ドラキュラ』『ジキル博士とハイド氏』『フランケンシュタイン』といったSFホラー小説の世界観をモチーフとしたゴシックロックが誕生する。それがファッションを含めて世間的に言われるゴシック、ゴスになった。それはポジティヴパンクとも呼ばれ、日本においてはヴィジュアル系バンドのムーブメントに発展していく。そんなゴスと少女趣味を掛け合わせたものがゴスロリである。

そんなゴスロリとアイドルの関係性を深掘りしていきたい。

そもそもゴスロリとは何か?

ゴスロリは、本来はまったく異なるゴシックとロリータの文化を結びつけた日本独自のものだ。原宿竹下通りやヴィジュアル系バンドの女性ファンがよく集まっていた神宮橋といったストリート文化から生まれ、MALICE MIZERのManaが広めたとも言われている。その発祥は90年代末で、意外と歴史は浅い。

そんなゴスロリが、世間一般的に悪い意味で広まってしまった。2003年11月に起きた河内長野市家族殺傷事件である。ゴスロリ趣味のカップルが引き起こした事件はアングラなサブカルチャーの趣向だったゴスロリのイメージをマイナスの方向へと導いてしまった。しかしこの翌年、嶽本野ばらの原作小説『下妻物語』が映画化。これがゴスロリのイメージアップになり、一般層まで広く知れ渡るきっかけにもなった。

00年代後半に雑誌『KERA』を中心にゴスロリファッションが流行。北出菜奈やモデルのMYMを擁するゴシックラウドロックバンドGaGaalinGといったアーティストが日本のみならず、海外からも大きく注目を浴びた。ファッションブランド『h.NAOTO』から派生した“グロカワ”系キャラクターブランド『HANGRY&ANGRY』から、音楽ユニットとしてモーニング娘。の吉澤ひとみと石川梨華の覆面ユニット、HANGRY&ANGRYが登場した。アイドルではなく、“ヴィジュアル系女性ユニット”という名目であり、当時海外からの注目度を高めていた“ヴィジュアル系=Visual kei”とジャパンカルチャーの波に乗った。

HANGRY&ANGRY「Kill Me Kiss Me」2008/11/28 Shbuya C.C.LemonHall

日本ではなく、フランスでのライブ映像である…… HANGRY&ANGRY 「Sadistic Dance」
2010/05/29 European Tour in France

LADYBABY アイドルとゴスロリの完成形

BABYMETALはアイドルとメタルライクなゴスを結びつけたが、アイドルとゴスロリテイストを昇華し、1つの完成形を創ったのはLADYBABYだ。オーストラリア人の女装パフォーマー、レディビアードと日本人美少女2人が歌い踊る構図は強烈なインパクトを放った。しかし、金子理江と黒宮れいによる2人組ユニットとなった時代こそが、このグループの真髄というべきものだと思っている。

The Idol Formerly Known As LADYBABY「Pelo」

ヘヴィなサウンドながらもキャッチーなポップス。ちょっとした毒気を持ちながらもカリスマオーラを放つ美少女2人が自由奔放に歌い踊る姿に、どれほどのアイドルが影響を受けたことか。いまだに多くのフォロワーを生み出し続けている。

もともとがコスチュームやパーティグッズを扱う国内大手の会社、クリアストーンが手がけるユニットという出自のため、ゴスロリテイストたっぷりな衣装の見せ方も申し分ない。

The Idol Formerly Known As LADYBABY「Easter Bunny」

ボーカリストとしても卓越したスキルを持った2人だったからこその楽曲自由度である。作曲・浅野尚志、作詞・只野菜摘コンビによる、本格的なヘヴィサウンドながらもキャッチーなメロディと背伸びはしないアイドルらしい可愛い歌詞の妙味。そしてどこかコミカルさを打ち出したミキティー本物による振り付けが視覚的にもよいフックとなる。

黒宮脱退後、後期は4人編成となり、大人になった金子を軸としたアーティスト性を打ち出す。ヘヴィミュージックに特化した楽曲が増えるが、アイドルの矜持は忘れてはいない。もはやロックバンドなのでは?と感じるアイドルグループも昨今は多いが、ロックへの本気度とアイドルにしかできない可愛さと茶目っ気のバランスが絶妙であったのが4人時代のLADYBABYである。

「ホシノナイソラ -Starless Sky-」LIVE at EBISU LIQUID ROOM - January 13, 2020

さて、ここからは、現在活動中のゴス、ゴスロリテイストのグループを紹介していく。ゴスやゴスロリとダイレクトに呼ばなくとも、量産型(白、ピンクなどを基調としたフリフリのガーリーファッション)、地雷系(ガーリーながらも黒を基調としたダークでハード寄りなもの)、ピープス女子(Instagramアカウントの“PEEPS”が発信している新しいストリートファッションジャンルで、紫と黒でキメたクールでエッジィなスタイル)など、その影響下にあるファッションやスタイルへと変化している。厳密にいうと量産型も地雷系もピープスもゴスから派生したものではないのだが、広義の意味では同列にあるファッションではあるだろう。ただ、ゴスロリファッションはこれらのジャンルとは違い、極力肌を見せないという決定的な違いがある。

どれも同性ウケを狙ったものであり、冒頭のように男性ウケは考えられていない。しかしながら、地雷系ファッションは地下アイドルから広まったとも言われており、アイドルシーンにもそうしたファッションが増えているというのは、それだけ女性需要も増えているということでもある。

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