LADYBABYからtwinpale、キングサリにChick-flickまで　地雷系、量産型、ピープス、V系……ゴスロリに塗れたアイドルクロニクル｜「偶像音楽 斯斯然然」第92回

キングサリ　アングラ界の実力派情報過多集団

twinpaleと同じく松永天馬楽曲が印象的なキングサリ。アンスリュームの公式ライバルグループとして結成された。松永をはじめ、MOSHIMOの一瀬貴之、空想委員会の岡田典之という豪華作家陣による完成度の高い楽曲で音楽的な振り幅を見せる。

キングサリ「生生しろよ」

天神・大天使・閻魔という強烈な存在感を持ったボーカリストによる期待値と、まさかのゴスロリの雄、元じゅじゅのネ兎ねうとの邂逅、そして全員がビジュアルよし、歌よし、ダンスよし、という他メンバーのポテンシャルを含めての情報過多集団。これはしっちゃかめっちゃかなカオスな様相のベクトルが違うだけで、アンスリューム譲りの部分も大きくあるだろう。ゆえに最初はどこか掴みどころのなさを感じるのだが、楽曲クオリティと個々のスキルに捩じ伏せられ、これが中毒性を帯びて引き摺り込まれるという恐ろしさ。

キングサリ「蒼夏」

この夏過ぎくらいのステージからグループとしての結束力や各々の役割分担といった魅せ方、ライブ運びが大きく変わったと感じている。ゴス味を増した閻魔の艶っぽくもタカラジェンヌばりの男前な太い声とねうのアイドルの輪郭をはっきりさせる歌声とのコントラスト、さらにアイドルにはいそうでいないガールズロック歌唱の村咲ちいがいいフックになっている。先頃行なわれたアーバンギャルド主宰＜鬱フェス＞から、閻魔不在の5人体制、そして閻魔復活完全体となったステージの流れでより一層グループの魅力は高まったと感じた。

個人的にはせっかくこのメンバーなのだからゴスゴス感満載のミュージックビデオを期待していたわけだが、そこで投下された松永天馬「バニーガールアーミー」。

松永天馬feat.キングサリ「バニーガールアーミー」

奇妙なサウンドと楽曲の素晴らしさもさることながら、某一夫多妻制グループを想起させる構図ながらもハーレム感皆無のミュージックビデオも素晴らしい。終始“気持ち悪いおじさん”に徹しているさすがの鬼才・松永天馬。キングサリの6人はイイオンナ感を振り翳すも気品よく。男性アーティストとの絡みがヲタク的目線でも嫌な気分にならないという稀有なグループでもある。個人的願望としては、80年代アイドル歌謡メロを小悪魔っぽく昇華した様が絶品のナンバー「シリアルガール」のミュージックビデオ作ってほしいなぁ、毒っ気たっぷりで。

ミソラドエジソン　ゴシック風メタルな強靭グループ

このコラムでは久々の登場となるミソラドエジソン。実験型劇場の名のもと、ゴスロリなドレスを着たアイドルがシンフォニックなゴシック風メタルテイストたっぷりの楽曲を歌う。

ミソラドエジソン「シックスペイン」

あくまでメタル風の楽曲であって、根本的なものはロック寄りのアイドルポップス。高低差の大きいメロディを安定感のある歌唱力で歌い上げていく。メタルなマニアライクさに走ることなく、かといって可愛い路線に走ることもないバランスのよさ。キャッチーな聴き心地はよく、インパクトもある。そして何より音楽ファンにもきっちりと刺さる作り込み。メンバー個々のバランスがよいからこそ生み出すことのできるメロディの畳み掛け方はいい意味での自己主張たっぷり。ヴィジュアル系好きにもアニソン好きにも耳馴染みのよい歌声が、がっつり攻め寄せてくる。

ミソラドエジソン 2022.08.22 BIGCAT Anniversary ONEMAN SHOW

以前紹介した時と比べて、ライブにおけるパフォーマンス力、見せ方はより強力になっている。下園れいかの声量ある歌声が軸にありつつも、4人それぞれのキャラクターが爆発する様相に圧倒される。強靭さが増していくミソラドエジソンから目が離せない。