アンスリューム、夜光性アミューズ、Chick-flick、マーキュロ 独自性に突っ走る超個性的なグループ|「偶像音楽 斯斯然然」第90回
冬将軍
音楽ものかき
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今回は、以前より当コラムで取り上げているアンスリュームと夜光性アミューズ、さらに初登場のChick-flick、マーキュロの4組をピックアップ。それぞれの強烈な個性を、冬将軍が独自の視点で分析していく。
『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。
“冬将軍、最近アンスリュームに触れなくなったけど飽きたのか!?”というお叱りの声を多数いただいておりました。飽きたわけではないです……当コラムでもベスト5に入るほど登場回数の多かったアンスリュームですが、先方の某Sプロデューサーさまとちょっとすったもんだの勘違いと誤解が重なりに重なりまくって、ちょっと疎遠になってしまって……。なんか触れない方がいいかなと勝手に思ってずっと黙っておりました。でも、ちゃんとライブは観てたんだよ。<TIF>の新体制1発目「SMILE GARDEN」に朝から並んだし。
……で、無事に和解しました! なので、触れたいと思います。
先日行なわれた夜光性アミューズとアンスリュームの2マン<よるであんす>。私の大好きな今をときめくド派手な異彩グループ2組、そして磯野涼×katzという激プッシュなクリエイター2人の共演ということもあり、楽しみにしておりました。Veats Shibuyaは個人的に好きな音のするハコ。今どきの派手でクリアな音ではあるけど、痛くないし低音も大袈裟に出ない感じ。音数多いアイドルは映えるハコだと思っております。
katz氏の足癖の悪いバスドラとハードコアなギターのドンシャリ感のエグさと、磯野氏のウワモノがギラつきながらエッジの効いたギターが噛み付くように入ってくる中高音に個性のあるサウンド……並べて聴くと両者の好みや趣向がよくわかって興味深かった。よるあみは白空こあいの倍音成分の多いあの特徴的な歌声がサウンドメイクやミックスにどれくらい影響を与えているのか、非常に気になるところで。いつか磯野氏に訊いてみたいところ。
さてさて、まずはアンスリュームの話題から。
アンスリューム 訳のわからなさが加速していく狂騒
アンスリュームは“君臨君臨くりりりーん♫”という訳のわからないキャッチーな呪文と、本当に同じグループなのかというほどにバラバラな個性と衣装、さらにバシッと揃える気があるのか疑いたくなるほど自由奔放なダンス、という掟破りなところに惹かれたわけで(のちに月埜ヒスイにインタビューした際、“バミリは使わない”と言っていた……)。そしてなにより、天神・大天使・閻魔の男前ボーカルと月埜のあま〜い声のコントラストが大きな魅力だった。だから最初は、日色ゆづ、もなかこゆを迎えた新生4人編成アンスリュームにもの足りなさを感じてしまったのも正直なところ。
ただ、よかったのはちぎらの存在感がグッと前に出てきたこと。彼女といえば、天才的な語彙センスを持った比類なき作詞家性が大きな魅力なわけだが、ステージ上ではダンスだ。しなやかさやキリッと見せる精悍さではない、首、手首足首など関節の動かし方が特徴的で、誰にも真似できぬ独特の色気があるダンスに目を奪われてしまう。そんな彼女がよりグンと前に出てきたし、そのダンスを含めてグループを引っ張っていく頼もしさを感じた。
しかし、これはまだ未完成のアンスリュームだった。入るグループを間違えたんじゃないのかと思った、覇道の中に紛れ込んだ王道系美少女・星奈美緒と、元キャバ嬢で現役音楽大学生フルート専攻という、どこからどうツッコめばいいのかわからない、ジョウナイシ鳴というインパクトの強いメンバーが加入し、オリジナルメンバーとは異なるベクトルでの訳のわからなさが加速。6人になったことによって個性のせめぎ合いがより激しくなり、ライブはいい意味でのしっちゃかめっちゃか感。いやぁ、面白くなってきました!
楽曲に関しては申し分なく。先日リリースされた「アンスリューム定食」、再録曲を聴けばわかる歌割りのカオスさ。今後歌割りを含めて楽曲構成もどんどん面白くなっていくんだろうな。横浜家系ラーメンなのになぜかソーラン節がいきなり挿入される「すすれ!ちゅるちゅる家系らーめん」しかり。ツッコんだら負けと思いつつ「まだまえるっ!!!!!!」の《大円団》しかり。
アンスリューム「まだまえるっ!!!!!!」
面白くなる予感しかしない新生6人体制アンスリューム。目一杯ふざけ倒してくれることを願う。先日たっぷり40分ステージを観た感想はいろいろあるが、もなかこゆのしゃくったような太いボーカルが印象的だったのと、ジョウナイシ鳴のギラついた歌舞伎町臭を醸しつつも時折垣間見える素の感じがよかった。彼女が18Kフルートを振り回しながら、「C.P.E.バッハ:無伴奏フルートのためのソナタ イ短調 Wq.132」をステージで吹き散らかす日を期待して。女性版ジェームズ・ゴールウェイを目指してほしい。
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