アンスリューム、夜光性アミューズ、Chick-flick、マーキュロ　独自性に突っ走る超個性的なグループ｜「偶像音楽 斯斯然然」第90回

Chick-flick　メルヘンライクな2.5次元世界

たまたまイベントで出てきたグループにガツンとやられてしまったChick-flick。ピンクハウスの権化かというようなロリータファッションで、ジャジーでメルヘンな歌を歌い踊る……あ、その手があったか！

Chick-flick「フルハウス」

私はかつて、ゴシックおよびゴシック＆ロリータ系の女性アーティスト、いわゆるKERA界隈の青文字系アーティストの制作をやっていたので、これは大好物で“待ってました！”と大興奮。しかしながらゴスロリって意外と男ウケしないというか、アイドルヲタクが好む趣向とはちょっと違うところがあるので、アイドルでそれをやるのは難しい。しかしながらChick-flickは楽曲をメルヘンライクに振り切るところで、ウマく2.5次元世界観を出しアニメ趣向にも通じるものを体現している。これまでゴスロリというと、ハード路線、もしくは地雷系の“病み＝闇”方面に行くのが御作法というような暗黙の諒解もあったので、そんな固定観念を打ち破る斬新さ。

うむ、こんなすごいこと誰がやってるんだと思ったら、Payrin’sの桜木もち子だった。なるほど、納得。彼女がアイドルをプロデュースしていたことは知っていたが、すいませんチェックしていませんでした……。

Chick-flick「マブタ、ロマンティクス。」

そのコンセプチュアルなビジュアルと方向性に唸ったわけだが、とにかく曲がよい。ジャズあり、ビッグバンドテイストあり。ピアノ、ウッドベース、ホーン……そのサウンドもアレンジも素晴らしい。ホーンアレンジは、優秀なアレンジャーだったとしても、管楽器奏者からすると“管楽器のことよくわかってないのかな”と思うことも要所要所あったりするのだが、そんなことはなく心地よく聴ける。ちょっとジャズっぽい“小洒落たポップス風”というのはよくあるわけだが、そうではなく真摯に取り組んでいる本格派。

上記「フルハウス」はtatsu / BLVELYが楽曲からMVの監督まで手がけており、徹底した作り込みがすごい。もう1曲「マブタ、ロマンティクス。」は森谷優里の楽曲。グループとしての音楽コンセプトがしっかりとしていながら、ギタリストの前者によるロックテイスト溢れるエッジィ感と、鍵盤奏者の後者の繊細で柔らかいプロダクトの違いなど、その丁寧な業に驚きながら聴けば聴くほどに面白い。

ライブパフォーマンスだが、これからが楽しみという趣である。特別、歌がウマいとかダンスがすごいというわけでもないのだが、楽曲同様にコンセプトも世界観もグループとしてきちんと統制が取れているのでしっかり惹き込まれる。個人的に目を奪われたのが愛好こばと（あすかこばと）。“トランスギャルがゴスロリ着てる！”という往年のバンギャ＆バンド好きにブッ刺さりそうなビジュアルに見事にヤラれてしまった。いい意味で無表情なクールさと、小柄ながらもスッと伸びた綺麗な姿勢にビッとした四肢の動かし方が大きく美しく、“ドール（人形）”感がすさまじい。これは只者ではないなと調べてみたら、よくInstagramで流れてきて気になっていたモデル＆コスプレイヤーだった。ツイキャスだとかいろいろチェックしてみれば、いい感じにヲタクを拗らせた趣味趣向をはじめ、大変魅力的な人だった。

もう1組は深淵を感じさせるバンギャホイホイのグループ。