ラウドならずともエッジィ! ロックな新進気鋭アイドル5選|「偶像音楽 斯斯然然」第1回 あえて“ラウドではないロック”で攻める、エッジィなバンドサウンドを轟かせる気鋭のアイドルグループを紹介

冬将軍

音楽ものかき

2019.04.06
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昔、自分が聴いてきた音楽を照らし合わせて思わずニヤリとしてしまう。たとえそれが的外れでもいいじゃないか。それもアイドルを聴く愉しみ方の1つなのだから——。

これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

ポップスからロック、ヒップホップからEDMと、そこから細分化されたものを含め、ありとあらゆる音楽ジャンルをアイドルというフォーマットに落とし込むという、ある種、衝動的であり実験的でもある前衛性で、日々進化していくアイドルシーン。ロックに特化してみれば、かつてBiSがハードコアパンクとノイズミュージックにまで手を伸ばし、BABYMETALはヘヴィメタルを掲げて海外に出た。近年ではピコリーモにたどり着いたPassCodeの躍進により、スクリームするアイドルも珍しくなくなった。今やラウド系アイドルは、“ライブアイドル”とも呼ばれる現在のインディーのアイドルシーンにおいて、いちジャンルとして完全に確立されている。

今回より始まったこの“ロック好きによるロック好きのための”アイドルコラム『偶像音楽 斯斯然然(ぐうぞうおんがく かくかくしかじか)』第1回目は、そんな今だからこそ、あえて“ラウドではないロック”で攻める、エッジィなバンドサウンドを轟かせる気鋭のアイドルグループを紹介していく。まだアイドル未体験の海外インディーロック好きにも薦めたくなるようなサウンドでもある(と思っている)。

切れ味抜群のギターに乗せた
キレキレのダンス
ーQUEENS―

QUEENS「Flagship」

タイトにバシバシとキマるバックビートに乗る、耳を劈く切れ味抜群のカッティングギター、うねりをあげるゴリゴリのベース……音だけ聴いていれば完全にロックバンドなQUEENS。ノリの良いダンサブルなナンバーを武器とするグループだが、注視すべきはポップスに多く見られるR&Bやブラックミュージックに寄せながら幅を広げていくのではなく、すべてオルタナティヴロックの範疇でやっているところだ。

硬質なバンドサウンドにファンクのリズムを取り入れつつ、というところではGang of FourやAu Pairsといった往年のポストパンクを思い出してみたりもするわけだが、むしろその影響を色濃く受けていた90年代の日本のバンドの音楽性のような気がしたりと、勝手にいろいろと深読みが捗るサウンドである。近年流行りのBPMの速めの邦楽ロックとは異なり、どこか80’sUKロックシーンを嗅ぐわす、ニューウェイヴ〜ダンスロックを感じるサウンド&音使いに、思わず膝を打ってしまうロックファンも多いのではないだろうか。ギラついた音像もそれを色濃くさせているのだ。

QUEENS「ボーイミーツガール」

そんなダンサブルなロックに合わせてバッキバキに踊る様は、アイドルシーンには珍しく“黒髪のメンバーが1人だけ”という“髪色ヤンキー(赤髪担当・NANAMI談)”の派手目なビジュアルも相まって、ダンスヴォーカルグループと形容するに相応しい。それでいて、スキルに奢らず曲もダンスにもある種の“ハズし”があることも魅力の1つ。終始キメ込まず、時折遊び心を混ぜながらのコントラストで魅せていくのだ。

シーン屈指のスタミナを思わせるキレッキレでダイナミックなダンスと、フロアの士気を巧みに煽動していく怒涛のライブ運びは圧巻。4月30日に全曲ノンストップのワンマンライブを開催するというのだから注目である。

そして、NANAMIのブリティッシュフォークシンガーを彷彿とさせる日本人離れしたスモーキーな歌声の強さと、上記「ボーイミーツガール」を始めとした楽曲の詞曲までも手掛ける彼女の才にも目が離せない。

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