津野米咲の稀代な作家性と、≠ME、PIGGS、群青の世界……期待の可能性 5選|「偶像音楽 斯斯然然」第42回
冬将軍
音楽ものかき
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今週、大きな衝撃を与えた赤い公園の津野米咲の突然の訃報。モーニング娘。やBuono!への楽曲提供もしていた彼女の作家性を皮切りに、最近、冬将軍の心の琴線に触れたアイドルの中から、≠ME、PIGGS、群青の世界、クロスノエシス、NightOwlという本連載でこれまで取り上げてこなかったグループの音楽性を独自の視点で紹介する。
『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。
赤い公園の津野米咲が突然旅立ってしまった。何を言っていいのかわからないが素晴らしいギタリストであり、類稀なる作曲家だった。
赤い公園 - 今更
彼女のすごいところを挙げればキリがないのだが、なんでもやれそうなクリエイタータイプでありながら、途中からメロディメイカーに徹してアレンジメントを含めた部分は外部プロデューサーに委ねていたことだ。赤い公園はインディーズ時代から独自のオルタナティヴな世界観を持っていたバンドであったが、セルフプロデュースにこだわることなく、メジャーデビュー以降は率先して亀田誠治や蔦谷好位置、會田茂一……といった錚々たる面々にプロデュースを受けていた。それは赤い公園というバンドが、津野自身が、メインストリームのポップスに興味があったからであり、それが彼女にとっての音楽探究であったはず。つのごうじという日本のポップスに貢献してきた作曲家を父に持つ環境も大きく影響しているのかもしれない。
赤い公園での活動のほか、遠藤舞「MUJINA」(2014年)、モーニング娘。’16「泡沫サタデーナイト!」(2016年)、Buono!「ソラシド〜ねえねえ〜」(2016年)……といった数々のアイドルポップスを生み出してきたことは周知の通り。
詞曲アレンジまですべて津野が手掛けており、津野らしいメロディが炸裂している遠藤舞「MUJINA」
作家性でいえば、この連載でも度々触れている“ポップならずともキャッチー”というロック的な発想とは真逆の、“ポップなんだけどキャッチーではない”という稀代の才能を見せていた。耳馴染みはすごく良いのに、実際に歌うとめちゃくちゃ難しいというものである。それでいて、サビに最高音を持ってくるという、古き良きスタイルを持っている。
もともと、ハロー!プロジェクトの大ファンであり、中でも℃-uteの矢島舞美の熱狂的なヲタクだった。2014年8月に行われた<めざましライブ>で、℃-uteと赤い公園の対バンが実現。当時は白い衣装を纏いクールな印象もあった津野だが、矢島舞美のタオルを持ってはしゃいでいたことをよく覚えている。それが数年後、楽曲提供するにまでなったのだから。
作詞作曲:津野米咲、編曲:西川進というロックファン垂涎の組み合わせ Buono!『ソラシド〜ねえねえ〜』
津野の細かすぎて伝わらないギタリストの妙、A=442Hzという若干チューニングの高いオーケストラピッチでロックをやってるところであったり、ボーカルの発音<た>や<か>に比べ、<ず>や<つ>は発音自体が遅いので、1番と2番で歌詞が変わればそこにギターが被さらないよう、弾くタイミングやフレーズを変えたりしていることは、以前他媒体で書いているので、興味があれば読んで見てほしい。
■Peel the Apple
ハロプロ、48G、WACK、アイドル界の三つ巴が結集
直接、ハロー!プロジェクト繋がりというわけでもないのだが“おや?”と思ったのが、Peel the Apple。26時のマスカレイドの新メンバーオーディションの最終審査で惜しくも落選してしまったファイナリス8名によって結成されたグループである。オーディションをチェックしていたわけでもないので、メンバーのこともよく知らなかったのだが、とにかくキャッチーな楽曲と可憐なMVなのにやたらとコミカルな振りに思わず見入ってしまった。
リンゴの皮をむくな!〜Don’t Peel the Apple〜【Music Video】
それもそのはず、「リンゴの皮をむくな!〜Don’t Peel the Apple〜」の作詞作曲は、数多くのハロー!プロジェクト楽曲でお馴染みの星部ショウである。そして、編曲はAKB48「恋するフォーチュンクッキー」やSKE48「オキドキ」などを手掛けた名アレンジャー、武藤星児。さらにさらにコレオグラフィを担当したのは元BiS/GANG PARADEのカミヤサキときたもんだ。ハロー!プロジェクト、48グループ、WACKという、アイドルシーンにおける三つ巴が集結した布陣による隙のない楽曲制作体制なのだから、新グループであっても見入ってしまうのも無理もない。プラチナムの本気を見た。芸能事務所のイメージが強いが、SILENT SIREN、BAND-MAID、prediaにPASSPO☆など、音楽評価の高いグループが多く、制作会社としての有能さは折り紙付きなのである。
さて、ここからはそのような感じで、最近観て聴いて、グッときたグループを紹介していきたい。せっかくなので、本連載では初めて取り上げるグループばかりである。
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