津野米咲の稀代な作家性と、≠ME、PIGGS、群青の世界……期待の可能性 5選｜「偶像音楽 斯斯然然」第42回

■PIGGS
WACKでもプー・ルイでもないオリジナリティ

最後も感覚的センスが鋭いアイドルがプロデュースするアイドルグループだ。言わずと知れたプー・ルイが事務所社長兼プロデューサー兼メンバーを務めるPIGGS。パンクからグラムロックのUKテイストたっぷりでロックファンの心を鷲掴みにしながらも、独自のポップセンスを炸裂させたアルバム『HALLO PIGGS』の完成度は申し分なく。

PIGGS - PIGGS-モナ・リザ-【MUSIC VIDEO】

サウンドプロデューサーのRyan.Bって誰ぞ？ と思ったら、BRIAN SHINSEKAI（ブライアン新世界）だった。「閃光ライオット」でGLIM SPANKYとファイナルに出場していたアーティスト、hideの＜MIX LEMONed JELLY＞にも出てたな。

BiSからのBILLIE IDLE®の系譜をしっかり感じさせつつも、そのどちらにも似ていないオリジナリティの確立が見事。とはいえ、作品は作品。ライブにおいてはインディーアイドル界における百戦錬磨のレジェンドというべき、プー・ルイと新人メンバーを並べるのは酷な話。当面は“プールイ wih 他メンバー”になってしまうのは仕方ないだろうと思っていた。しかし、「クマンバチの独白」MVを観て、その考えは間違いだったことに気づいた。

PIGGS - クマンバチの独白 - 【MUSIC VIDEO】

ハードコアパンクな楽曲のカッコよさはひとまず置いておいて、注目すべきはライオットガールなメンバー個々の際立ちである。吐き捨てるようなそれぞれのボーカルスタイルもマイクを握った立ち絵も狂気性を孕みながらも文句なしにクールにキマっている。良い意味でプー・ルイが目立ってない。

共同生活を行なっていたのは知っていたが、チェックしていたわけではないし、そこで何が行なわれていたのかは知らない。ただ、思うようなライブ活動ができない中での成長っぷりを考えれば、各々の素質はもちろんであるが、それを引き出したプー・ルイの新人育成能力の高さに驚いた。

先日行われた＜ギュウ農フェス 5th ANNIVERSARY 秋のSP2020＞のステージ。現在もニコ生のタイムシフトで観ることができる（2020年11月17日23時29分まで タイムシフト再生回数無制限）が、キレッキレのパフォーマンスが素晴らしく、スリリングでとにかくカッコいいのだ。CHIYO-Pの華やかな声と、SHELLMEのちょっと斜に構えたようなダークな声のコントラスト。BAN-BANのちょっとアブないヤツという雰囲気と、UMIの何かが吹っ切れたような弾け具合いも良い。そしてそんな4人を立てるように、引くところは引いている安心と信頼のプー・ルイ。なんとなく“私が、私が、”という前に出たがりなイメージを持たれがちな彼女だが、きちんとグループを俯瞰的に見ながら、プレイングプロデューサーしている姿に脱帽である。