ばってん少女隊とアメフラっシ　このご時世だからこその“チルい”可能性｜「偶像音楽 斯斯然然」第72回

アメフラっシのEDMとガールクラッシュ

2020年7月に配信リリースされた「メタモルフォーズ」は、スーパーソウのシンセサウンド、ビルドアップやドロップを効果的に用いたEDMセオリーのような完成度の高さと、何よりもその楽曲強度に驚愕した。そのことは以前当コラムでも触れている。

アメフラっシ「メタモルフォーズ」

その後、メンバーにインタビュー取材を行なう機会があったのだが、やはりこの「メタモルフォーズ」がもたらした意味は大きかったようで、愛来は同曲によってグループの方向性が見え、モチベーションが上がったと言っていた（『IDOL AND READ 028』の要約）。

以降の楽曲は「MICHI」「BAD GIRL」といった、いうならばJアイドルポップスの対極にあるような、海外ポップスのトレンドを追随する方向性へとシフトしている。もともとさまざまな音楽性を見せていたアメフラっシではあるが、こうした主軸というべき方向性は「メタモルフォーズ」での手応えが導いたものであるだろう。

そうして出来上がったアイデンティティをさらに強固なものにし、次なるフェーズに突入したことを高らかに示したのが、2021年11月にリリースしたシングル「SENSITIVE」である。

アメフラっシ「SENSITIVE」

エッジの効いたエレクトロサウンドと、鋭角的でクールなメロディライン。サイバーでヴィヴィットな色彩を基調とした実験的なMVといい、完全にガールクラッシュに振り切っている。カップリングの「Lucky Number」は90年代の都会的なハイソ感を漂わせつつも、こちらも女性ウケを狙うかのような現代的なスタイリッシュさでウマくまとめている。

アメフラっシ「Lucky Number」

だが、ガールクラッシュは、どうしてもアイドルヲタクウケがイマイチだ。それは前回取り上げた、アイドルとアニソン界隈の関係性と似ている部分でもある。アイドルヲタクはカッコいいものより、可愛いものを求める傾向が強い。

では、なぜあえてそこに行ったのだろうか。

コロナ禍におけるアイドルシーンはこれまでとは少々事情が異なってきている。アイドルライブといえば、コールをはじめ、ステージとフロアがともに作っていくライブが常である。しかし、フロアからの熱を声援として受けられなくなった分、演者として“魅せる”ことのできるグループが強くなっているのも現状である。