欅坂、エビ中、ニジマス…Pop’n’Roll編集長と語る「ギターがカッコいいアイドルソング2020」30選[前編]|「偶像音楽 斯斯然然」第47回

欅坂、エビ中、ニジマス…Pop’n’Roll編集長と語る「ギターがカッコいいアイドルソング2020」30選[前編]|「偶像音楽 斯斯然然」第47回

欅坂、エビ中、ニジマス…Pop’n’Roll編集長と語る「ギターがカッコいいアイドルソング2020」30選[前編]|「偶像音楽 斯斯然然」第47回「偶像音楽 斯斯然然」第47回前編

2021年1発目の当コラムのテーマは、「ギターがカッコいいアイドルソング2020」。2019年版に引き続き、冬将軍と当サイト編集長・鈴木の対談形式で送る今回も、全2回にわたってギター&音楽愛が溢れすぎるがゆえのマニアックな内容に。本日はその前編をお届けする。

26時のマスカレイド「Flash Back」(鈴木編集長セレクト)

鈴木:
ニジマスは2020年2月にバンドセットライブをやったんですけど、これはその時披露された曲です。事前にマネージャーさんが、“新曲には2バスが入っているんです”って教えてくれて。ニジマスの新曲で、2バスの話題で盛り上がるマネージャーと編集者っていう(笑)。

冬将軍:
私は筋金入りのサイファミ(=サイサイファミリー、SILENT SIRENのファン)ですし、クボナオキのヲタクでもあるので、そういう観点でいくと、これは完全にSILENT SIRENの曲だなって(笑)。クボナオキが得意なマイナーメロに、あいにゃんの斜に構えた作詞っていう攻め方。ニジマス曲としてはちょっと異質なのかもしれないけど、サイファミの人が聴くと“あー”ってなるはず(笑)。

欅坂46「誰がその鐘を鳴らすのか?」(鈴木編集長セレクト)

鈴木:
個人的にこの曲にものすごくバンドを感じたんですよね。

冬将軍:
ああ、わかります。ライブハウスじゃなくて、スタジアムクラスの。大陸的とでもいうか、Coldplayとか、ああいう海外バンドのスケールのどデカい雰囲気ですよね。大地を打ち鳴らすリズム。

鈴木:
ああ、Coldplay。そうそう、リズムにどこかプリミティブ感がありつつ、エモーショナルなメロディがどこまでも広がっていく音像。

冬将軍:
坂道系はやっぱり、ものすごく芸能界のエンタテインメントという感じがするじゃないですか、お金の掛け方含めて。欅坂は特に世界観がバッチリできてるわけだけど、それはお金かけなきゃできないものだし、この合唱スタイルじゃないとできないものでもあるし。そういう意味で、総合芸術としてのアイドルグループとしては非常に正しいと思うんですよ。……そう、この楽曲の大陸感で思い出したのが、エビ中なんですけど。

鈴木:
あー、あれカッコいいですね。バスのMVのヤツ!

私立恵比寿中学「ジャンプ」(冬将軍セレクト)

冬将軍:
これ2019年なんだけど、12月だから2020年枠でいいかな。あまりに衝撃的だったんで、コラムでも触れてますね。Coldplayよりもっとフォーク寄りで、ストンプな要素もあって、Mumford & Sonsあたりの雰囲気もあるんですけど、アコギの入れ方も素晴らしく……つーか、めっちゃ音いいなぁ。

鈴木:
一気に洋楽になりましたね……。

(サビに入る)

鈴木:
うわー、めっちゃいい音。

冬将軍:
これは……、ちょっと、別格ですね。ブレスの入りまでいちいち見事。

鈴木:
歌唱力含めて圧倒的すぎる……アメリカのOneRepublicもそうなんですけど、UKを感じるんですよね。

冬将軍:
アメリカのフォークはカントリーミュージックだったり、カラッとしてますけど、ブリティッシュフォークは牧歌的でもジメっとした感じがある。日本ではブリティッシュの方がウケが良いと思います。アイドルにもそういう影響が及んでいるのは興味深いところ。PassCodeのこの曲もそういう感じの曲ですよね。

PassCode「Anything New」(鈴木編集長セレクト)

鈴木:
そうですね、サビとか。そういう雰囲気で選んだところもありますけど。でもPassCodeらしいハードなギターもちゃんと鳴ってるし。

冬将軍:
これまでのピコリーモとは違って、要所要所が今どきのEDMっぽくもあって。

鈴木:
前職で僕が初めて仕事した時は、まさにラウドロックアイドルという感じだったんで、いい進化をしたなと。

冬将軍:
「Ray」あたりから少し変わってきましたよね。エフェクトボーカルに頼らなくともいい、という歌唱面での成長もあるんでしょうけど、女性らしいメロが際立ってきたような気がしています。それと、これは前から言ってますけど、PassCodeはシルエットが女性的で綺麗なんですよね。手の指先までの動きがしなやかで日本舞踊的な美しさがある。

PassCode - Ray (PassCode CLARITY Plus Tour 19-20 Final at STUDIO COAST)

鈴木:
ああ、確かに。その視点は、彼女たちを語る上で重要なところですね。振り付けが、ELEVENPLAYというところも大きいのかな。

kolokol「Pale Star」(冬将軍セレクト)

kolokol「Pale Star」

冬将軍:
KolokolはPassCodeの後輩グループですけど、このところライブがめちゃめちゃよくて。みんな歌えるし、曲は文句なしに素晴らしい。ロックアイドルのEmoって、けっこう様式化してるというか、正直どこも大差なくて食傷気味になってる部分もあるんですけど、ここは方法論がまるっきり違いますね。ロックを前提として曲を作ってるんじゃなくて、メロディとしての抜本的分がしっかりあって、アレンジでそっちの色をつけていってる感じだと思います。Kolokol楽曲を手掛ける西羅和貴さんって、WILL-O’のみんな大好き「Last Dance」や「感情線染ヒカリエモーション」を作っていたり、ホントにいい曲ばかりで、素晴らしいメロディメーカーだなと思います。

鈴木:
イントロのストリングスのメロディラインが、いきなり高揚感を誘っていますね。

冬将軍:
Kolokolって装飾系のサウンドがいいんですよね。ストリングスの入れ方や鍵盤、シーケンスやリズムパターンもそうなんですけど、音楽の幅を広げるというよりも、この「Pale Star」であれば楽曲イメージとしてある退廃的な世界観だったり、ひとつのこだわりを徹底的に作り上げる要素として聴こえるんですよね。だから音数は多いけど無駄がない、全部必要なもの。本筋とは外れますけど、この「Lullaby」なんて美メロ+装飾系サウンドの典型的な世界観ですけど、この寒い冬の季節にぴったりで、聴いてるだけで泣いてしまいそうな大好きな曲です。

Kolokol - Lullaby(Kolokol 2nd ONE MAN SHOW WONDERLANDより)

冬将軍:
アイドルって自由だしなんでもありですけど、いろいろやりすぎちゃって、何やりたいのかわからなく見えてしまうこともあるわけで。そうした中で、自分たちの世界観や美意識をしっかり持っているグループが強くなっている傾向があると思います。

鈴木:
そうですね。なんでもありだけど、幹の部分が見えないと、音楽的にはのめり込めないところはありますね。逆にそこがしっかりしていれば、遊んでいてもいいというか。

冬将軍:
ロック系のグループは特に、音数、音圧、ライブ映え、っていうところに行きがちなんですけど、こういうご時世ですし、そこの勢いだけでは持っていけないところもありますし。コールやミックスを意識して曲を作るっていう手法もこれまで多くありましたけど、それが使えないわけで。そういう意味でも、サウンドを含めた世界観というのは、より重要になってくるはずです。

後編はこちら

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