第3回：ヒョリン〜小出祐介&南波一海「小出は明日、昨日の南波と連載する」 〜連載3回目は、K-POPからアイドル性問題、さらに話題は予想外の方向に……

南波：
そういえば、韓国と言えば『PRODUCE48』が面白くて。最初は韓国の技術論みたいなところで日本の子がメッタメタにされるのかなと思っていたら、もちろんそういう面も大きいんだけど、日本のアイドルらしい可愛らしさみたいなものが評価される場面も出てきて。

小出：
へー。

南波：
よく話題になるじゃないですか。高い技術と未熟さの話って。

小出：
技術がすごいのを取るか、拙さを愛でることを取るかっていうのは、日本のアイドルでは常に揺れ動いてる話で。我々もこすり倒してる話題だけど（笑）。

南波：
アイドル性問題ですよね。

小出：
こないだも（吉田）豪さんが歌唱力のことをツイートしてたけど、あれってアイドル以外にも通じる話だなと思って。

南波：
いい歌とはなんなのかみたいな話。

小出：
さすがだなと思いました。僕の師匠の玉井（健二）さんも同じようなことを話してくれたんですけど、YUKIさんはウマい歌より、いい歌が歌いたいっていうことを言っていて。言葉が入ってくるとか、声のトーンで不思議と元気が出るとかさ、言葉じゃ説明できないよさってあるじゃん。技術的にウマい人……発声がしっかりしてるとか、ピッチがきっちり取れている人とかはいくらでもいるけど、“歌がいい”っていうのはまた別の話なんだと。パッと聴きはすごくウマい歌が全然響いてこないことってあるじゃん。むしろ鼻についたりすることもあったりしてさ。それって不思議じゃない？

南波：
わかる。

小出：
つんく♂さんと小室（哲哉）さんが、全力を出し切る必要はないっていう話をしていて。そうアドバイスされたMay J.さんが“考えたことなかった”みたいな話をしていて、なるほどと（笑）。

南波：
それはなんにでも言える話で。ギターの速弾きとか。

小出：
行き過ぎるとただのびっくり人間だからね。

南波：
一方で、技術があるからこそ弾ける美しいメロディも絶対にあるでしょ。だから技術を否定しているわけでもないんだけど、こういう話をすると、下手なものを愛でてると思われたりして。

小出：
全部がそういうことじゃなくて！ってなるよね（笑）。

南波：
先日、元アンジュルムの田村芽実さんにインタビューしたんですけど、自分がアイドルから離れてみて、アイドルの見方がわかるようになったと言っていて。彼女はストイックな人だったじゃないですか。ダンスも歌も突き詰めたいというタイプだったけど、今にして思うと、隙きの部分をもっと作ればよかったと。そう思うのも田村さんらしいなと思うんですけど（笑）。

小出：
なるほど。田村芽実さんは絶妙なポジションにいた人だと思う。スキルがある人だけどまだ発展途上で、“アイドルの中でのスキルフル”というふうに僕らは受け止めていたと思うんだよね。キャラクターのよさとかと相まって。

南波：
ね。そういう話をしていくうちに、やっぱりアイドル性っていうのは本当に数値化しにくい曖昧なものだなと思ったんです。だからこそ、『ラストアイドル』の審査で豪さんと見解が違う人が怒ったりするけど、わかり合えないものはわかり合えないんだろうなって。“ポンコツすぎるだろ！”って怒る人もいれば、“あんなウマい歌はアイドルじゃなくてシンガーの方がいいだろ！”っていう人もいて、それぞれ正解が違うから。

小出：
あはは（笑）。あそこに審査員として出ていくのはすごい過酷だなと思う。あの番組で吉田豪という人の類まれなるアイドル性が表出しましたよね。一番のラストアイドルは豪さんだろっていうのは本当にそうだと思う。僕は早くあそこに南波一海に出ていってもらいたい。

南波：
いやいやいや……。原稿をまとめるのおれだから、この話全部カットするから。

小出：
なんでだよ！

南波：
豪さんは20代の頃から有名人で、あのクオリティの仕事をずっと続けてきて今がありますから。おれなんてペーペーもいいところですよ。

小出：
吉田豪さんが1号ライダーだったら、南波一海はV3的なところがありますよ。すでに。

南波：
ないないないない。

小出：
豪さん並の南波一海のアイドル性に、早く世間に気づいてほしい。

南波：
この話終わり！　このくだりは載せないので話してもムダです。

小出：
いや、こっちでさらに原稿を直すから（笑）。おれはこの内容を覚えてるからね。

南波：
全然違う話になってしまった。

小出：
いやぁ、K-POPって面白いですよね（笑）。最近のだと、BLACKPINKのドゥルッドゥルッドゥってやつ（「DDU-DU DDU-DU」）はダントツでいい。ラップパートもいい。なんでこんな本場っぽいラップできるのっていう。ダンスも衣装もカッコよかったし。

南波：
MVの再生回数も何千万とか億とかいくでしょう。カット数とか衣装の数とか、すべてにおいてお金のかかり方の桁が違うなと思う。

小出：
あれって、どこまでが決まってて、どこまで決まってないかっていうのがけっこうざっくりしているらしいよね。スタジオで何個もシチュエーションが用意してあって、そこでなにをするかっていうのは思いつきの判断とかも多いらしい。明確にコンテがあるというより、あれやってみよう、これやってみようっていう。だから素材が山ほどあって、カット数も多い。さらに編集でノリを作っていくという。

担当編集・山村：
僕は前職のEMI時代にSHINeeの宣伝を手伝っていたんですけど、事務所にMVのチームがあって、MV用のスタジオを持っているって聞きました。常に撮れる状態になっているっていうのは聞いた。

南波：
へー！　それは羨ましいな。

小出：
やっぱり規模が全然違うんだね。

ヒョリン「SEE SEA」紹介
自身のレーベル『brid3』から今年に入って立て続けにリリースされたシングル３作目「海見に行くよ」。超セクシーなパフォーマンスも話題に。