【連載】沖口優奈×作家・爪切男(後編)「ネガティブ思考とポジティブ思考があるから物事の本質が見えてくる」 マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第12回:作家・爪切男(後編)
沖口 優奈(マジカル・パンチライン)
Pop'n'Roll Chief Discovery Officer
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マジカル・パンチラインのリーダー沖口優奈と作家の爪切男氏による特別対談の後編。今回は、爪氏のデビュー作『死にたい夜にかぎって』がドラマ化するに至ったちょっと変わったエピソードからスタート。ネガティブ思考な沖口がポジティブな爪氏にアドバイスを求めるも、話は意外な方向に⁉︎最後は名言に救われた沖口が得意のタロット占いで恩返し。和気藹々とくり広げられたトークの中で彼女が見つけた幸せを掴むためのヒントとは?
マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第12回:作家・爪切男(後編)
撮影:中島たくみ
本読みながら思わず声出して笑っちゃいました(沖口)
沖口:
今回、出版した初めての本がドラマ化されたということで、おめでとうございます!
爪:
ありがとうございます!
沖口:
ドラマ化決定の報告を聞いた時はどんな心境でしたか?
爪:
まったく信じてなかったですね! 壮大なドッキリだと思ったし。これはドラマの試写会とかでも話したんですけど、監督の村尾さん(村尾嘉昭)と僕は変な出会い方をしていて(笑)。僕が、川崎にある『おふろの国』というスーパー銭湯で“爪切男と一緒にサウナに入ろう”っていうアイドルでもしないような変なイベントをやった時に、参加予約が1名しかいなかったんですよ(笑)。そんな“ホントにこれ大丈夫か?”っていうイベントに、予約とは別に当日来てくれたのが村尾監督でした。お互い服を着ていない状態を共有した上で“爪さんの本をドラマ化したいです”って言われて。
沖口:
サウナの中で?
爪:
そうです(笑)。村尾監督が熱心に話してきたから、芸能界って追い込まれて頭おかしくなるとこんなことするんだなって思ってました(笑)。それで、次、会った時に、村尾監督から“主演は賀来賢人しかありません”って(笑)。“この人、いよいよやべぇやつだな、あの賀来さんが本当にやってくれるのかよ”って思ってたら、とんとん拍子で話が進んでこんなことに。第1話の放送が終わって、ようやく信じられましたね! もちろん、お会いした時から村尾さんの熱意はちゃんと感じてはいましたけど。
沖口:
そこまでは信じてなかったんですか?(笑)
爪:
ずっと信じてなかったですね! 放送された時も信じてなかった。
沖口:
“これもドッキリの一種だ!”みたいな?
爪:
放送された時も友達に電話して、“お前のとこのテレビでドラマ映ってるか?”って聞きました。今の技術なら僕の家のテレビだけに放送を送ることもできるから!(笑) それぐらい信用してなかったですね。
沖口:
私、本の中で1番好きなところがあるんです。爪さんがメールマガジンの編集長になられた時、爪さん以外の方が全員ラッパーだったっていうエピソードがめちゃめちゃ大好きで! 性格や文化などが異なるラッパーさんたちの上に立ってお仕事をする時ってどんな気持ちでしたか?
爪:
本当に異文化交流でしたね。僕が出社すると、クラブで朝まで飲んで徹夜で会社に来ている人もいたりして大変でした。ずっと帽子をかぶってる奴に“仕事中は帽子脱いで! 帽子脱いで!”ってお願いするんですけど、脱がない(笑)。あと、下向いてすごい落ち込んでる奴がいたから“どうしたの?”って聞いたら、“大好きなバスケの選手が死んだんです”って。だから、“そうなんだ。じゃあ、今日は仕事できない?”って聞いたら“そうですね”って返ってきたので、“そうなんだ。じゃ、今日はそれでいいや”っていうこともありましたね(笑)。とりあえず否定はせずにまず受け止めるようにはしてました。これはその時の社長が言ってたんですけど、“多分同じラッパーのやつが上に立ってたら、あの仕事はうまくいってなかった”と。違う視点を持つ僕がいたからウマく回ってたみたいです。でもみんなやる時は真面目にやってくれますけどね。
沖口:
大変そうです……。
爪:
でも、楽しかったんですよね。あるラッパーに“蕎麦屋のグルメレポ書いて”って頼んだんですけど、出来上がりの原稿読んだら文章の中で素人の僕にもわかるような韻をめちゃめちゃ踏んでて(笑)。目に見える韻を直していたら、ほかのスタッフが“母音に直すんすよ。そうしたら隠れてる韻も分かりますよ”って教えてくれて。そんな感じで、みんな、僕にバレないように、記事の中で韻を踏む遊びをやっていたんです(笑)。
沖口:
あはは!(笑)
爪:
それでムカついたから、韻の踏み方を勉強して(笑)。隠れた韻も全部チェックしてました。そのおかげで、今、ラップを聴いていても、けっこう韻がわかります(笑)。
沖口:
もうその韻のくだりがめちゃめちゃ好きで。私、本読みながらニヤニヤしちゃうことが多いんですけど、そこは思わず声出して笑っちゃいました(笑)。でも、会話が通じない中でも、仕事上はコミュニケーションを取っていかなきゃダメじゃないですか。コミュニケーションの取り方で1番心がけてたことはなんですか?
爪:
多い時は同僚が10人ぐらいいたんですけど、毎日10人全員としゃべってましたね。最低でも1人10分くらいは会話。一言もしゃべらない日があるとコミュニケーション不足だよなって思ったから、とにかく全員としゃべってましたね。
沖口:
雑談みたいな話をするんですか?
爪:
雑談でもなんでも。まずは向こうの興味がありそうなことを聞きますね。興味なくても“昨日のクラブどうだったの?”とか。NBAのバスケの話になって“○○って選手が好きなんですよ”って言われたら、“そいつのどこが好きなの?”って(笑)。“そうなんだ”で話を終わらせず……。
沖口:
どんどん話を広げていく感じ?
爪:
そうですね。あとは、何でも否定しないで異文化交流だと思って相手を受け入れることですね。いきなりラッパーから帽子をプレゼントされたことがあって。“プレゼントしたんだから被ってくださいよ!”って頼まれて(笑)。“被らないと仕事しない”って言われたから渋々被りました(笑)。
沖口:
なんだか楽しそうですね!
爪:
今、思い返せば楽しいことだらけだったんですよ。
沖口:
その時はやっぱり大変でしたか?
爪:
その時は、けっこう大変でしたね。家にはアスカ(『死にたい夜にかぎって』のヒロイン)もいるわけで、ラッパーたちの存在が救いになってたんですよね。アイドルの方だからあんまり言えないけど、男ならではの付き合いもやっぱあったわけですよ(笑)。楽しかったですね、今思えば!
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