LADYBABY[ライブレポート]どこまでも獰猛で、どこまでも美しい、希望に満ちた終幕 LADYBABY<Reburn>恵比寿LIQUIDROOM(2020年1月13日)ライブレポート
冬将軍
音楽ものかき
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LADYBABYとはなんだったのか──。
彼女たちが最後に残した「禊island」のMusic Clipを観ながらそう思う。“カワイイ”とか“キレイ”とか、はたまた“アイドルらしからぬ〜”だとか。いわゆる一般的な女性アイドルに対する褒め言葉がなんだかしっくりこない。アイドル全開の可愛らしさで攻めているわけではないが、尖っているようで、きちんとアイドルしている。アイドルとロックの間を自由自在に行き来する唯一無二の存在……とでもいうべきだろう。
2015年に活動を開始し、2018年より4人体制となったLADYBABYは2020年1月13日、恵比寿LIQUIDROOM<Reburn>にて、活動を休止した。
撮影:高田メタル、小林公士、北村晃一
LADYBABY<Reburn>恵比寿LIQUIDROOM(2020年1月13日)
デビュー曲「ニッポン饅頭」からLADYBABYの最後の宴は始まった。少女のような可憐な声から大人の妖しく艶めかしい歌声を操る金子理江、持ち前の勘の良さとリズム感で歌も動きも鋭敏さを魅せていく池田菜々、愛嬌ある笑顔と安定と安心を持ち合わせた歌声で惹きつけていく唐沢風花、クリーンからデスヴォイスまでゴシックな嘶きでねじ伏せていく有馬えみり。
そんな4人のステージを支えるのはThe CHAOSだ。彼らにバックバンドなんていう表現は値しない。4人とともにLADYBABYの音楽を作り上げてきた戦友と言っていいだろう。後方で悠然と構えるYOUTH-K!!!(Dr)の巨馬が大地を蹴るがごとくのリズムと、地を這う大蛇を思わせるwu-chy(Ba)のグルーヴ、ザクザクと噛みつくようにエッジを効かせながら重厚なサウンドの壁を作っていく三橋隼人(Gt)。猛者どもの暴れっぷりはのっけからすさまじいが、猛り狂うアンサンブルの波と轟音の洪水の中を4人はしなやかに華麗に泳いでいく。グルーヴメタルにニューメタル、日本のモダンヘヴィネスやミクスチャーロックを築いてきた重鎮に囲まれながらのライブはLADYBABYの強さを証明するものだ。
池田がキレの良いラップを捲し立てると、ヘヴィなリフが追い討ちをかける。「破天ニ雷鳴」だ。先ほどよりもさらに重心が低くなったThe CHAOSのグルーヴが容赦なく襲い掛かってくる。加えて、有馬の邪悪なグロウルが揺さぶりをかけてくるのだ。こんなアイドルグループがほかにいるものか。そのまま「参拝!御朱印girl☆」へとなだれ込み、パンパンのフロアは上手へ下手へとモッシュの嵐が巻き起こった。
“最後とか関係なく、1人ひとりがライブの空間を作っているというモットーでやっていくので、みんなで声と身体で表現してLADYBABYのライブを創ってください!”
声高らかにオーディエンスの士気を掌握する金子。「Easter Bunny」のタイトルコールで、フロアから歓喜の鬨の声が上がった。祝祭感溢れるハッピーチューンに、みな身体も心も踊らされていく。“カワイイデス(Kawaii-Death)”を掲げ、日本のみならず海外でも話題となった強烈なインパクトある3人体制の初期曲と2人体制のガーリー感溢れる楽曲群を、こうして見事なまでに4人の歌へと昇華させていったのは、グループの成長を如実に感じ取れる部分だ。極悪ヘヴィサウンドにゆるくてカワイイ歌詞が生み出す妙は有馬のスクリームによってより強調され、池田の抜群のバランス感覚がカタチを整えていく。そして、唐沢のアカペラで始まった「Pinky! Pinky!」が物語るように彼女のアイドルセンスは、アイドルとしてはどこか不器用なほか3人を補う存在であったように思うのだ。金子がメンバーを変えてまで続けたかったLADYBABYは、この4人でしか有り得ないLADYBABYとなり、今ここに極まった。
アイドルとロックの間を自在に行き来する4人が完全にロックバンドと化した瞬間、「Riot Anthem」で観た光景は完全なヘヴィロックバンドのそれだった。重々しくもブライトで輪郭のはっきりしたサウンド、タイトに刻まれるメリハリの効いたリズム、The CHAOSのグルーヴが重戦車のように迫りくる。その無機的な禍々しさの中に響くクールな歌声が、有機的なダイナミズムを生み出していく。煮えたぎるマグマに落とされた一滴の冷水であるかのような緊張感。これぞ、LADYBABY and The CHAOSが生み出す“美重音”だ。
YOUTH-K!!!が蹄鉄を鳴らすように暴れ、wu-chyがフロントに躍り出てグルーヴを掌り、三橋が鋭利なアタックで突き刺していく。The CHAOSによるセッションだ。かき鳴らされる狂暴なビートの中に単騎、狼の如くけたたましく咆哮する有馬。ガテラル、グロウル、スクリーチ、ホイッスル……、その叫びは本能の赴くまま、なのだろうか。まるで喉に魔物が住んでいるかのような狂気を前に言葉を失う。すると、フロアを見下ろしながら“恵比寿のお手を拝借”と一言。始まったのは彼女の作詞による「禊island」だ。
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