藤川千愛[ライブレポート]先人たちへのリスペクトと未来への希望を高らかに歌い上げた新宿の夜

藤川千愛[ライブレポート]先人たちへのリスペクトと未来への希望を高らかに歌い上げた新宿の夜

Pop'n'Roll 編集部

Pop'n'Roll 編集部

2020.01.20
  • ポスト
  • シェア
  • ブックマーク

藤川千愛が、2020年1月19日に新宿BLAZEにてワンマンライブ<新宿の夜>を開催した。本記事ではオフィシャルレポートをお届けする。

2019年5月に発売されたデビューアルバム『ライカ』は、オリコンデイリーチャート1位を獲得。11月から現在も続く4ヵ月連続のデジタルシングルリリース、さらに3月からは全国7都市を巡る全国ツアーを予定するなど精力的な活動を続ける藤川千愛。

日常の鬱憤や葛藤といった感情をさらけ出す楽曲群と、そのネガティブさをもカタルシスへと変える美声。

藤川千愛は1月19日、新宿歌舞伎町のライブハウスで、ロックシーンの先人たちへのオマージュを込めながら2020年に自身が向かう先を示した。

定刻を過ぎてフロアの照明が落とされると、ポリッドスクリーン越しに藤川千愛が飾らない足取りで登場。古着調のサテンシャツに身に包んだラフな佇まいでステージに立つと、この夜のオープニングとなる「ライカ」をアカペラでスタート。バンドがインするとともにポリッドスクリーンに映し出されるのはバラやガーベラといった花々。花びらが咲いては萎れていく演出の中、藤川はダーティな16ビートに乗せて陰陽入り混じった独自の音楽を観客に叩きつける。

続く2曲目は、オーバーダビングボーカルが印象的な「引き寄せられて夢を見る」。同期で鳴らされる重症的なコーラスが響くも、それを物ともせずホールに突き刺さる生の歌声がライブの緊張感を高めていく。

藤川千愛<新宿の夜>新宿BLAZE(2020年1月19日)

コール&レスポンスのMCを経て、畳みかけるようにパフォーマンスされたのは「ゴミの日」。ライトハンドのギターとベーススラップが絡み合うラウドなサウンドの上、藤川がハンドマイクでフロアを煽ると、オーディエンスもサビをシンガロングしてフロアのテンションは最高潮に。

続いて披露されたクリープハイプのカバー「オレンジ」、ロックチューン「葛藤」ではレスポールを抱えてパフォーマンスし、藤川のロックシンガーとしての側面を見せつけていく。

藤川千愛<新宿の夜>新宿BLAZE(2020年1月19日)

怒涛の前半戦を終えたMCで、藤川は今年の抱負としていろいろなアーティストのライブに足を運ぶことを宣言。これまでライブやレコーディングに専念するため、外に出るのを避けてきたがそうした出無精の自分を変えていくと語った。

等身大のMCの後で藤川はギターをレスポールからアコースティックに持ち替え、今月配信されたばかりの「私にもそんな兄貴が」、音源未発表の「あさぎ」と新曲2曲を続けて披露。さらに、岡山の工場勤務から音楽をするために上京を選んだ藤川の自伝的楽曲「夢なんかじゃ飯は喰えないと誰かのせいにして」を弾き語りで歌い上げると、オーディエンスは大きな拍手で応えた。

デビューから1年余りもあって新曲の多いセットリストが続くが、MCを挟んで臆することなく藤川がパフォーマンスしたのは未発表曲「田中が彼氏だったなら」。未聴のオーディエンスも多い中、J-POPの快感を受け継ぐグッドメロディに乗せて藤川がコミカルな歌詞を歌うと客席からも合唱が沸き起こり、新たな代表曲の誕生を予感させる一体感にフロアが包まれた。

藤川千愛<新宿の夜>新宿BLAZE(2020年1月19日)

その後、「夜もすがら君を想う」、「あたしが隣にいるうちに」とファンからも馴染み深い2曲を歌い上げたあと、ライブ終盤を迎えたMCで藤川は2020年の活動に関する告知をアナウンス。4月8日に2ndアルバムリリースを発表、その仕上がりについて“名盤の予感”と自負の口で告げるとフロアから期待に満ちた歓声が巻き起こった。

さらに6月5日には自身のバースデイライブとしてLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でワンマンを行なうことを発表。“渋谷公会堂ワンマンに勝手に1人でドキドキしている”と「勝手にひとりでドキドキすんなよ」を披露。

そして本編のラストにバラード「あなたを嫌いになれました」を歌い上げ、藤川はこの日のステージを後にした。

2020年の藤川の活動への期待で高まるアンコールに応え、ステージにカムバックした藤川は、椎名林檎のカバーとなる「歌舞伎町の女王」を披露。国内のロックシーンにおける、そして新宿における偉大な先人の楽曲を堂々たるボーカルで歌い上げた。曲後に“工場に勤めていた時に車の中でいつもこの曲を聴いていた”と思い出話を語り、そのまま椎名林檎へのリスペクト漂うも自身の楽曲、「おまじない」を歌唱。ジャズと歌謡曲を掛け合わせたバーレスク調の世界を演劇的なボーカルでトリッキーに表現し、自身のボーカルの射程を歌舞伎町の夜に刻んでみせた。

これまでの藤川の楽曲の軸であるロックサウンドのみ捉われないスタンスを覗かせたあとで、ファンからも人気の楽曲「hane」でオーディエンスとともにタオルを振り回してシンガロング。

藤川千愛は、新宿歌舞伎町でのステージの幕を閉じた。

偉大なる先人たちの存在と、岡山の工場で働きながらシンガーを志した過去の自分。遠く離れた点と点を結ぶのは自身の音楽であり、1つひとつのライブである。次なるアルバム、そして渋谷公会堂でのライブは、彼女の物語をどこまで進めるのか。2020年の藤川千愛の音楽が、この夜披露された未発表を含む楽曲群とともに鳴り始めたのだった。

藤川千愛<新宿の夜>新宿BLAZE(2020年1月19日)

撮影:イシハラタイチ

新宿の夜

2020年1月19日(日)
新宿BLAZE

セットリスト

01. ライカ
02. 引き寄せられて夢を見る
03. ゴミの日
04. オレンジ/クリープハイプ
05. 葛藤
06. 私にもそんな兄貴が
07. あさぎ
08. 夢なんかじゃ飯は喰えないと
09. 田中が彼氏だったなら
10. 夜もすがら君を想う
11. あたしが隣にいるうちに
12. 勝手にひとりでドキドキすんなよ
13. あなたを嫌いになれました
EN1. 歌舞伎町の女王/椎名林檎
EN2. おまじない
EN3. hane

2ndアルバム『愛はヘッドフォンから(仮)』
発売日:2020年4月8日(水)
全13曲+Bonus Track

藤川千愛ライブツアー特別公演 Birthday Live 2020
会場:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
日程:2020年6月5日(金)
※イープラスにて1月31日まで抽選先行予約受付中
https://eplus.jp/fujikawachiai-of/