めろん畑、爆裂女子、ZOMBIE POWDER…アイドルだってなめてんじゃねーぞ! アイドル、V系、パンク、メタルを紡ぐダイエースプレーの香り|「偶像音楽 斯斯然然」第16回

めろん畑、爆裂女子、ZOMBIE POWDER…アイドルだってなめてんじゃねーぞ! アイドル、V系、パンク、メタルを紡ぐダイエースプレーの香り|「偶像音楽 斯斯然然」第16回

冬将軍

音楽ものかき

2019.11.02
  • ポスト
  • シェア
  • ブックマーク

これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

“ダイエースプレー”を知っているだろうか。80年代のバンドブーム期、多くのバンドマンたちが抑圧された社会に抗うかのごとく、地球の重力に逆らって髪の毛を立てるために必須だった整髪料である。“エレーヌヘアスプレー”が正式な製品名であるものの、ダイエーにしか売っていないということ、なによりBUCK-TICKやXといった、ステージでは粧し込んだバンドマンが庶民的なスーパーのダイエーで買っているというキャッチーさにより、ダイエースプレーの呼び名が定着したのである。ヴィジュアル系も、パンクスも、メタラーも、ダイエースプレーの強力なセット力をなくして逆毛は立てらない、といっても過言ではなかった。

そんなダイエースプレーであるが、今年2019年7月に製造が終了、11月を以って販売終了となるという。

なんということだ。ダイエーがイオングループ傘下となってから、いつかこんな日が来るのではないかとは危惧していたのだが……。稲穂のようなバンドマンの逆毛はもう見られなくなってしまうのだろうか。

ダイエースプレーこと、エレーヌヘアスプレー

ダイエースプレー販売終了——。このことがもたらす影響はなにもバンド界隈だけではない。かの℃-uteを筆頭にハロー!プロジェクトをはじめ、その類稀なるセット力は、激しいダンスをこなすアイドルのみなさんの髪型までもバッチリとキープしていたのだ。となれば、これは一大事だ……。

しかーし! このダイエースプレーに代わる強力なヘアスプレーは存在する。ローソンで販売されている“エレラヘアスプレー”である。

エレーヌの妹!?  エレラ

パッケージデザインも似ている(似せている?)このスプレー、製造元こそ違えど、主成分はほぼ一緒だ。ローソンはもともとダイエーによって設立された、ダイエーローソン株式会社(現在は三菱グループ“株式会社ローソン”)であり、このエレラヘアスプレーはその頃の名残り、姉妹品であると推測される。噴射口のパーツが違うため、吹いた時の感触はダイエースプレーとは異なるものの、主観だが強力なセット力はほぼ同じ気がする。実際に、その手に入りやすさ(アメニティグッズコーナーが広めの店舗なら置いてあるはず)と、見比べなければ気づかないようなデザインとともに、このエレラをダイエースプレーだと思って使っているアイドルのみなさんも多いようだ。

難点があるとすれば、300円代であったダイエースプレーに比べると若干高い500円強の値段設定であるということ。とはいえ、それでも安い。というより、80年代のバンドブームから値段がほぼ変わっていないダイエースプレーの恐ろしさよ。

「エレーヌが居なくなっても、エレラが居る」

もう大丈夫だ。

ダイエースプレーよりも強力なヘアスプレーはないの?とお思いの方もいるだろう。ダイエースプレーと人気を二分していたのが、イリヤの“スパイキー スタイリングスプレー”だ。ダイエースプレーがエクスタシーなら、スパイキーはフリーウィルといったところか。ただ、Xはダイエースプレーを使用していたが、COLORがスパイキーを使用していたという事実は知らない。あくまで私の勝手なイメージである。ダイエースプレーは耽美な香り、スパイキーは劇薬なにおい、というそれぞれの“イケナイ”かぐわしさを感じていたのだ。“東のなんちゃら、西のなんちゃら”といった対比は昔からバンドマンの常套句なのである。ただ、フリーウィルに在籍していたSPEED-iDのEURO(古いバンギャには“H.L.EURO”、“優朗”という表記の方が馴染みあるかもしれない)はスパイキー派だったというのだから、私のイメージもあながち間違ってはいないようだ。

ちなみに、LAUGHIN’ NOSE、COBRA、DOG FIGHT、SAとずっと変わらずツンツンのスパイキーヘアを現在も貫いてるパンクスのアニキ、NAOKIは、ミルボンの“プライビューエアミストSH(スーパーホールド)”を愛用している。

さて、そんなEUROのとあるツイートがアイドルファンの間で話題になった。

これに限らず、ライブハウススタッフがアイドルイベントで横柄な態度を、といった話はちょくちょく耳にする。数年前に比べれば、ロックバンドとアイドルを比べるようなどうしようもない考えは少なくなってきているものの、いまだ存在しているのも現実である。“こういう差別はやっぱりあるんだよな”と改めて考えさせられる事案である。

ちなみにEUROがプロデュースしているXTEEN(クリスティーン)は“殺意”や“反逆”をテーマにした黒服系ホラーパンクアイドル。Mary’s BloodのSAKIがギターを弾いていたり、ゴリゴリの爆音ロックである。

XTEEN「ROMANTICIST」

次ページ