Pimm’s、FES☆TIVE、BABYMETAL、EMPiRE…ミクスチャーな可能性を追い求める新作|「偶像音楽 斯斯然然」第15回

Pimm’s、FES☆TIVE、BABYMETAL、EMPiRE…ミクスチャーな可能性を追い求める新作|「偶像音楽 斯斯然然」第15回

冬将軍

音楽ものかき

2019.10.19
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これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

形態も表現も自由で“なんでもあり”なアイドルだからこその面白さがある。それはかつて、90年代にロックの新興勢力として世界的に勃興したオルタナティヴロックに似ているようであり。さまざまなジャンルを超えてクロスオーバーしながら可能性を追い求めていくそのムーヴメントは、我が国ではいつしか“ミクスチャーロック”とも呼ばれるシーンを生み出していった。

さて、今回はそんなことを思い出す、“ミクスチャー”なアイドルソングをピックアップ。最近リリースされた新譜の中から4枚を紹介。

Pimm’s 正真正銘のミクスチャーロックアイドル

Pimm’s『LOVE AND PSYCHO』Type-A

まずは、ズバリ、ミクスチャーロックを掲げている、Pimm’sの2ndミニアルバム『LOVE AND PSYCHO』。洪水のように怒涛に流れ込むサウンドにキラキラとしたメロディが迸る「Kimi to boku」、重厚なバンドアンサンブルと無機質なデジタルシーケンスが綿密に絡み合う「Moo!」といった、ライブでもお馴染みの配信限定シングル3曲に加え、凛とした力強さで魅せていく「WE ARE」など新曲が6曲。さらに4種の盤違いを含めれば全12曲を収録。

Pimm’sサウンドの魅力といえば、図太く重心の低いバンドサウンド。とにかくぶっといリズム隊の強靭さが聴いていて心地よい。アイドルに限らず近年流行のラウドロックは、音圧とインパクト重視であまりヘヴィに聴こえなかったりするもの。ギターの歪みだけで音を埋め尽くすことに固執していたり、拡がりと開放感の方向に行っていたり、そもそもローチューニングにしておけばいい……なところだったり。そんなラウドロックに物足りなさを感じている90’sミクスチャーロック好きには迷わず、Pimm’sをオススメする。

Pimm’s - Kimi to boku

縦横無尽に駆け巡る歌メロディに絡み合うようなそのラインを辿っていくだけで、テンションがブチ上がるほどゴリゴリに攻めていくベースと、タイトながら低めに太く気持ちよくバシバシ決まってくるスネアが鬩ぎ合う「Kimi to boku」。良い意味での足癖の悪いツーバスがブラストビート気味に加速していき、異様なまでにスリリングな展開を見せる「Moo!」。ラウドでヘヴィで“カッコいいバンドはリズム隊がいいんだよな”なんてことをアイドルソングを聴いて感じるとは。

Pimms - Moo!

そんな獰猛なリズム隊に対し、前に出過ぎず、でもしっかりと存在感のあるギター、猛り狂うように乱れるシーケンス……ヴォーカルを邪魔しない定位と、音数は多いが分離感のあるミックスは細部まで行き届いていて丁寧。耳に優しい音像も好感触。

こうした楽曲とサウンドを手掛けているのは、Hidetoshi Nishihara。謎の覆面バンド、Xmas Eileenのサウンドプロデューサーである。これまでもPimm’sは、Xmas Eileenの「99.9」をカバーしたり、楽曲提供を受けたりしてきた。まさにミクスチャーロックアイドルに相応しい。

Xmas Eileen - 99.9

そして何より、これほどまでのアグレッシヴなバックに負けないヴォーカルだろう。フロントマンとしての圧倒的に強い存在感を放ちながら、しなやかさと優艶さを備えた郡司英里沙の歌声。利発的な彼女を中心とした統率の取れたステージ運びも圧巻。アスリート集団さながらの熱量でフロアの士気を上げていく。ズバズバ斬り込んでくる日本人離れしたリズム感とハンサムな発音を持った山口紗弥の鋭いラップもPimm’sを象徴するものだ。

Pimm’s - 99.9

今年12月23日を以って、グループから卒業する郡司。10月27日から始まる、現体制7人でのPimm’sツアーから目が離せない。

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