BAUHAUSからZOC、悲撃のヒロイン症候群まで 深淵なるゴシックの世界から覗くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第11回

BAUHAUSからZOC、悲撃のヒロイン症候群まで 深淵なるゴシックの世界から覗くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第11回

冬将軍

音楽ものかき

2019.08.24
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これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

女性アイドルといえば元来、黒髪に薄化粧、といった清楚さが求められていたものだ。2016年に芸能界を引退したBerryz工房の嗣永桃子は、染髪せずメイクは最低限、ピアスなどのアクセサリー類は一切身に付けなかった。加えて自分を卑下しても他人を下げない、できることが当たり前で努力を見せることを由とせず、SNSもブログも自らは発信しないという、徹底的な“雲の上の存在”を最後まで貫き通していた。それは紛れもなく1つの完璧なアイドル像の完成形であった。しかしながら、めまぐるしく変化していく時代の中で、アイドルのニーズも少しずつ変わってきていることも事実である。

今勢いのあるグループの1つ、“ヒロシン”こと、悲撃のヒロイン症候群。彼女たちはグループ名が表すとおりの“自分がいちばん不幸である”と思っているような人に、そっと手を差し伸べるようなメッセージ性のある楽曲で、同性からの支持も厚い。いわば内に向けた負の感情を弄るような歌詞とゴシックに粧し込んだビジュアルは、従来のアイドル像とはまったく異なるものである。これは多様化する近年のシーンを象徴的に表していると思う。

悲撃のヒロイン症候群「サイレントクライ」

膝を抱える前に己の翼でと歌う、悲撃のヒロイン症候群「サイレントクライ」(2019年)

色ならば黒。時間であれば夜。異形で異端、猟奇的であり頽廃的、闇、病み、痛み、苦しみ、そして死……、ゴシックと聞いて連想されるのはそういったものだろう。しかし、どこか崇高的でもあり神秘性をも秘めている。偶像崇拝? それはどこかアイドル像に通じるものがある。

じゅじゅ「非実在少女」

“呪い”をコンセプトとした、じゅじゅ「非実在少女」(2019年)

今回はそうしたある意味で、清楚さとの表裏一体でもある心の闇を映し出すようなゴシックの深淵なる世界からアイドル、女性アーティストとの関わりについて紐解いていく。

そもそも、ゴシックとはなんなのだろうか——。

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