BiS、MIGMA SHELTER、じゅじゅ……、ハードコアにゴス、そしてヴィジュアル系――ロックファンの琴線に触れるアイドルのサウンド

BiS、MIGMA SHELTER、じゅじゅ……、ハードコアにゴス、そしてヴィジュアル系――ロックファンの琴線に触れるアイドルのサウンド|「偶像音楽 斯斯然然」第9回

冬将軍

音楽ものかき

2019.07.27
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これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

ロックファンの多くは楽曲を好きになる判断基準として、歌と同等、場合によってはそれ以上に好みの“サウンド”があるはずだ。ヴォーカルの声は苦手だったけどギターがカッコいいから好きになったとか、イントロのリフでやられたとか。そうやって、ギターだったり、リズムだったり、全体のサウンドの雰囲気で好きになったりすることも多い。それはアイドルを好きになる理由でも同じであって。それに、アイドル音楽におけるトラックは、ロックバンドのサウンド以上に、サウンドメイク、ミックスバランス、音像……そうした制作者の意向が出やすい部分だと思っている。

先日取り上げた話題、第3期BiSメンバーのマナコ・チー・マナコの音楽嗜好。BUCK-TICKにSOFT BALLET、平沢進に戸川純だなんて、ヴィジュアル系黎明期黒服直撃世代、サブカル好きの心を鷲掴みである。

この件における“こういうロックを聴いてるアイドルがいるのか!”という反応とは別の視点、“こういうロックを聴いてる女の子がなぜアイドルになろうと思ったのか?”というところを考えてみる。それは、ロック好きの中年層が突如アイドル沼へとハマっていく理由でもあるわけだ。今回はその辺りの琴線に触れるようなアイドルをいくつか取り上げる。

ハードコア&パンクのパイオニア、BiS

さて、そんなBiSといえば掟破りのプロモーション展開はもちろん、その音楽性も危険極まりない。上田剛士(AA=)に非常階段、といった泣く子も黙るロックアーティストからの楽曲提供やコラボをはじめ、ハードコア&パンクをアイドルシーンに持ち込んだパイオニア的存在だ。

BiS「STUPiG」

上田剛士プロデュースのデジタルハードコアナンバー(2013年、第1期)

BiS階段「nerve」

非常階段と合体したノイズアイドルバンド“BiS階段”(2014年、第1期)

BiS「I can't say NO!!!!!!!」

2016年7月8日より再始動した第2期BiS(2017年)

かくして、この度今年6月より始動となった第3期BiS。8月14日のアルバムデビューを控え、期間限定フリーダウンロードとSoundCloudで公開されている新曲群は今までとは少し違った印象を受ける。例えればこれまでのBiSがNYハードコアなら、第3期BiSはUKポストパンクといった具合いである。

エモーショナルなメロディは、よりBiSらしく。さらにエッジを効かせたサウンドが印象的で、歪みの深さよりも鋭利さを強調したソリッドなギターが耳を劈く。メロディを弄りながらぐいぐいとグルーヴを捲したてていくベースに身体中が疼く。そして、なんとも個性的なヴォーカルである。つい先日、この「STUPiD」の歌割りが各メンバーのTwitterにて発表されたが、人を喰ったようにがなるトギー、妙に悩ましげな艶っぽさを見せるイトー・ムセンシティ部を筆頭に耳に残る声ばかり。現在9曲がSoundCloudにて公開中であるが、ヴォーカルとサウンドともに溢れるロックバンド感が魅力的。楽曲のバリエーションに重んじたアレンジというよりも、統一感のあるバンドとしての軸のようなものを感じる。

Twitterのフォロワーが15,000人に到達するまで素顔の公開はない5人。8月18日には初ワンマンライブも決定している第3期BiS。どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、期待感は高まるばかりだ。

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