ExWHYZ、クマリデパート、AdamLilith Jアイドルだからこその自由闊達なダンスミュージック|「偶像音楽 斯斯然然」第94回

ExWHYZ、クマリデパート、AdamLilith Jアイドルだからこその自由闊達なダンスミュージック|「偶像音楽 斯斯然然」第94回

冬将軍

音楽ものかき

2022.11.05
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今回は、Perfumeの新譜、IVE、BLACKPINK、Kep1erといった昨今のK-POPグループを始点に、彼女たちとは異なる世界観のダンスミュージックを聴かせるExWHYZ、クマリデパート、AdamLilithの新作をピックアップ。3組の音楽的な魅力を、冬将軍が独自の視点で分析する。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

リリースは少し前になるがPerfumeの約4年ぶりとなる8thアルバム『PLASMA』。80’sを感じさせるエレクトロビーツで幕開ける本作は、リード曲「Spinning World」がそうであるように、鍵盤とギターが絡んだサウンドとファンキーなリズムがアーバンな雰囲気を醸す、Perfumeにしては意外性のある作風に仕上がっている。正直、Perfumeのプロダクトは独自のエレクトロポップとして完成されたものだと思っていたので、この路線には驚いた。

Perfume「Spinning World」

レトロフューチャーなシンセが印象的な「Plasma」での幕開け、カッティングギターとローズピアノの絡みが美しい「ポリゴンウェイヴ」、80’sのシティポップを現代的なPerfume流の解釈で昇華した「Drive’n The Rain」など、これまでにない聴き応えのある作風だ。

ローファイヒップホップの代名詞的なローズピアノやレトロシンセによるサウンドプロダクトは、現代的なEDMとは真逆のベクトルである。これは日本のシティポップが海外(おもにアメリカとインドネシア)でウケている背景からの、日本のグループからの回答ともいうべきか。一方で海外トレンドの第一線を行く、IVEやBLACKPINKの韓国のグループはこれまで当コラムでも述べてきたように、イントロなし間奏なし後奏なし起伏なしメロの3分曲で攻めており、日韓の対比が面白い。

IVE「After LIKE'」MV

BLACKPINK「Pink Venom」

王道K-POPを世界標準のポップスに押し上げていくようなIVEと、オリエンタルな香りを放ちながら独自の無国籍街道をひた走るBLACKPINK。その方向性はまったく違えど、先に述べたようなトレンドを意識した制作の方法論が同じところが興味深い。

さらに、BLACKPINK「Shut Down」MVで見られるビビッドなカラーとクロップド丈のトップスにヘソ出しローライズのボトムス、といったファッションにも注目したい。前回触れたY2Kファッションリバイバルの大きな火付け役は韓国アーティストでもあるからだ。

BLACKPINK「Shut Down」

そして、現在注目の韓国グループといえば、Kep1er。「We Fresh」は音楽面からのY2Kリバイバルのポップロックに乗せたゴキゲンなナンバー。ダイナミックなギターリフの入れ方が印象的だ。

Kep1er「We Fresh」

昨今アヴリル・ラヴィーンが最新作『Love Sux』でポップパンクに回帰したり、Y2Kファッションに身を包み、元彼への恨み節が炸裂するオリヴィア・ロドリゴや、あの頃のインディーポップを想起するサッカー・マミーといった気鋭の歌姫へ迎合していくような、ポップロックテイストに寄せたダンスチューンだ。

Kep1er「We Fresh」Dance Practice

Kep1erの強みはキレのよいダンス、統率力の高いパフォーマンスである。「We Fresh」のダンスプラクティスビデオを見ると、ハイクオリティすぎる身体の使い方とダンスの揃い具合いに驚愕する……。

そうしたK-POPの隙を与えないような、ガールクラッシュなカッコよさとは異なる魅力があるのが日本のアイドルである。“Kawaii”が英訳できないとはよく言ったものだ。そんな可愛いとカッコいいの絶妙なバランス感覚を持ち合わせている楽曲が10月25日にリリースされた、クマリデパート「止まらない!ト・マンナヨ!」。

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