のんふぃく!からNEO JAPONISM、誰もシラナイ。にマーキュロまで 極悪ヘヴィに攻めまくりアイドルソング|「偶像音楽 斯斯然然」第93回

のんふぃく!からNEO JAPONISM、誰もシラナイ。にマーキュロまで 極悪ヘヴィに攻めまくりアイドルソング|「偶像音楽 斯斯然然」第93回

冬将軍

音楽ものかき

2022.10.22
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今回は、マーキュロ、誰もシラナイ。、NEO JAPONISM、のんふぃく!のヘヴィなロックサウンドが印象的な4曲をピックアップ。それぞれの楽曲の特異性を、冬将軍が紐解いていく。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

このところプッシュしまくっているマーキュロ。前回ゴスとヴィジュアル系ライクなグループ紹介でも好き勝手に語っていたわけだが、あの記事がアップされた直後にグループ初となるMVが公開された。ということで、今回はヘヴィで激しいロックテイスト溢れる最近気になった4曲を紹介する。

マーキュロ「デイストオシオン」 完璧すぎるサブカルレトロな美学

私が一発でやられてしまったアートワークを裏切らない最高レベルのMVである。東京グランギニョルと丸尾末広と寺山修司とネオ・ヴィジュアル系とネオ・ナゴム……このグループを説明するのに必要な要素を全部詰め込んでいる、見事っ! 圧巻っ! 素敵っ!

マーキュロ「デイストオシオン」

旭日旗、三角連続旗が飾られた見世物小屋的なロケーションにいつものゴシックな衣装が映える。我執キルのヴァンパイア飲酒タイムから始まり、煙管を燻らせながら赤目になる翠城ニアとトランプ使いの紫月レンゲの妖しい病み魔性オーラ、蠱惑的にルージュを引く藍咲ユウリ、無邪気に御手玉をしている芥タマキの不気味さ、無表情で水晶を覗く雅楽代カミテが洋酒を持ってきたニヒルなキルを前に女の子の顔に……で、ニアの投げたナイフを見て、目線を投げた方に向ける珖夜ゼラの目の動きが秀逸。

小道具のチョイスと絶妙に拗らせた世界観、メンバーキャラの引き出し方も、メンバー自身の表情と演技力、眼力がすさまじい。画角も映像美もたまらんな、と思っていたら後半は男装パートで学帽あり、中世貴公子風衣装や軍服などを纏ったホストもショタもイケメン大集合の拡声器と布をバッサーと振り回して……なんだこのMVはっ! 

メンバー全員まさにネオ・ヴィジュアル系バンド麺のような出立ちでネオ・ヴィジュアル系バンドのMVのような仕上がり。

あーこれこれ、こういうの観たかったんだよ!という願いを30倍くらい超えてきた、完璧すぎてぐうの音も出ねぇ。

“アイドルとヴィジュアル系は、衣装とMVにお金と時間に糸目はつけるな”とはよく言ったものだ(過去にヴィジュアル系バンドのディレクターをやっていた私はそれをケチろうとして、上から怒られたことがある)。うむ、何度観ても素晴らしい。こんなMV見せられたら跪くしかない。

で、楽曲の方はthe GazettEよろしくのゲロゲロなリフから、韻を踏みながら突き刺さるような語感のメロがスリリング。レトロ混じりの言葉遣いもジャパニーズモダニストな感じ。「デイストオシオン」(=“distortion”)というタイトルも最高である。安易に「デイストシヲン」にしないのもさすが。エヴァっぽくなってしまうからね。

メロの作り方もスピード感のあるポップに寄せないキャッチーさ。ヴィジュアル系セオリーに寄せてる感じもあるんだけど、ちゃんと複数人が歌う畳み掛け、アイドルソングっぽい構成になっている。冒頭のサイレンと中盤の笛タイムもいい、ここをバンギャも大好きな手旗信号の振りで抜け目なく。こんなすごい曲、誰が書いてるんだと思ったら……あれ? もしかしてCLØWDとか手掛けてた人??

そして、“コンセプト:グループ名マーキュロクロム液と言う消毒液から由来、病んだ傷(心や想い)を治す(共感)存在(代弁者)になれるような歌詞や楽曲。”……この文章初出しですかね? やっぱり赤チンだった!

そして同日に配信開始されたライブの登場SE「フォアシュピール」。これもまた最高にカッコいいのである。インダストリアルなんだけど、昭和のアングラな香りがする。アイドル界の「ICONOCLASM」(BUCK-TICK)的な立ち位置の楽曲だと思っております。

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