スパガ、わーすた、豆柴の大群 アイドル戦国時代からの10年を繋ぐエイベックス“iDOL Street”の潮流|「偶像音楽 斯斯然然」第45回

スパガ、わーすた、豆柴の大群 アイドル戦国時代からの10年を繋ぐエイベックス“iDOL Street”の潮流|「偶像音楽 斯斯然然」第45回

冬将軍

音楽ものかき

2020.12.05
  • ポスト
  • シェア
  • ブックマーク

エイベックス・エンタテインメントのアイドル専門レーベルおよびプロジェクト『iDOL Street』が、アイドル戦国時代以降のシーンにおいて、1つの大きな潮流をなしているのは間違いない。現在、iDOL Streetに所属するSUPER☆GiRLSとわーすた、そして、同レーベルの文脈上にいると言える豆柴の大群の楽曲分析を通じて、その特異性を紐解く。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

“アイドル戦国時代”と言われてから、10年が経つ。そんなことをふと思い出させてくれたのが、SUPER☆GiRLSが12月23日にリリースするベストアルバム『超絶少女☆COMPLETE 2010~2020』からのリード曲「NIJIIROロード☆」である。

SUPER☆GiRLS / NIJIIROロード☆ Music Video

メロディも符割りも、ガヤというか茶々入れコーラスも、ワウギターのアレンジも、どこをどう切っても、あの頃(第一章)のスパガサウンドじゃないか!

そう思うのも当たり前、この「NIJIIROロード☆」は「NIJIIROスター☆」(2010年)のアンサーソングであり、同曲を作詞したLitz、「MAX!乙女心」の作曲者である松田純一という制作布陣ではないか。そこに加えて、あの頃のトレードマークでもあったナポレオンジャケット風の衣装を纏い、どこか見覚えのある振りをするメンバーを見れば、当時のメンバーが誰もいないとはいえど、いろんなことを思い出してしまうのがアイドルヲタクというものである(遠い目)。

SUPER☆GiRLS 楽曲の強さ

当時の私といえば、生粋のベリヲタ(Berryz工房ヲタクの俗称)であり、“ハロー!プロジェクトこそ至高”と思っていたのだが、あのエイベックスがオチも何もないガチで全員美少女のメンバーを集めて、ラッピングバスを走らせながら全力で攻めてきたSUPER☆GiRLSの存在にはヒヤヒヤしたものである。嗣永桃子が世にその名を轟かせたフジテレビ系『めちゃ×2イケてるッ!』の「AKB48以外だらけの大運動会」(2011年9月17日)を観ながら、知り合いのスパガヲタクとバチバチしていたことも懐かしい。とはいえ、なんだかんだ正月恒例の代々木のフリーライブやら日本武道館で行なわれた<アイドルストリートカーニバル2012>やら、イベントやライブはけっこう観に行っていたし、日本海テレビ『GirlsTV! feat. SUPER☆GiRLS』はよく観ていた。あの番組における後藤彩は天才だった。

SUPER☆GiRLS / 女子力←パラダイス

なんだかんだ言って、スパガのこと好きじゃないかって? スパガはとにかく曲がいいのである(おもに第1章)。「MAX!乙女心」(2011年)のキャッチー性は後世に残るアイドルポップスであるし、「女子力←パラダイス」(2011年)はノリのよいリズム&テンポ感と語感、そして、今では珍しくはないが“前奏、間奏、後奏がなく、ずっとキャッチーな歌メロが支配している”という一分の隙もない完璧アイドルソングだ。ハロプロ楽曲でお馴染みの鈴木 Daich秀行がアレンジャーとして関わっていたことも、ハロヲタの耳馴染みとして大きく影響していた。そして小室哲哉による「Celebration」(2013年)はあの当時まだ少なかった、アーティスティックな雰囲気を持った高尚なアイドル像としての可能性を感じさせてくれた曲である。個人的には「赤い情熱」(2012年)が大好きだ(誰も訊いてません)。

SUPER☆GiRLS / Celebration

SUPER☆GiRLS / 赤い情熱

そうしたあれやこれやを思い出しつつも、その後、ずっとSUPER☆GiRLSを見てきたわけでもないのだが……ここまで来たのであれば、この先も長く続いてほしいなと願う次第である。

そんなアイドル戦国時代を彩り、ハロー!プロジェクトを脅かす存在でもあった、SUPER☆GiRLSの結成によって立ち上げられたエイベックス・エンタテインメントのアイドル専門レコードレーベルおよびプロジェクト、iDOL Streetであるが、紆余曲折あって、現在の所属はわーすたを含めて2組となっている。

次ページ