NiziU、TWICEに見るK-POPプロデュースの業 「今さら訊けないK-POPとJ-POPの相違」前編|「偶像音楽 斯斯然然」第34回・前編

NiziU、TWICEに見るK-POPプロデュースの業 「今さら訊けないK-POPとJ-POPの相違」前編|「偶像音楽 斯斯然然」第34回・前編

NiziU、TWICEに見るK-POPプロデュースの業 「今さら訊けないK-POPとJ-POPの相違」前編|「偶像音楽 斯斯然然」第34回・前編

これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である。

J-POPに比べるとK-POPは印象に残らない?

1年ほど前にこの連載で、“世界的なポピュラーミュージックにおけるトレンドは「サビらしいサビがない」こと”だと触れた。

記事の中ではIZ*ONEの、世界のトレンドを積極的に取り入れたグローバルな韓国デビュー曲「La Vie en Rose」と、AKB流アイドルソングである日本デビュー曲「好きと言わせたい」における、海外向けと日本向けの相違を取り上げたが、最近ではTWICEのニューアルバム『MORE & MORE』表題曲と日本向けの7月8日リリースシングル「Fanfare」を比べれば、その違いは瞭然である。

TWICE "MORE & MORE" M/V

「MORE & MORE」はイントロなしで始まる歌パート(MVには演出上イントロが加えられている)、オリエンタルな雰囲気を醸しながら楽曲の表情が変わっていくものの、楽曲展開としての大きな抑揚は存在しておらず、サビらしいサビもないままにドロップを挟み込みながら淡々と進んでいく。

方や「Fanfare」は序章的なイントロから始まる歌パート、ラップ調のBメロで一旦抑えておいて、キャッチーなサビで爆発させるというJ-POPの王道中の王道曲。Cメロ間奏の落とし方からラスサビにピークを持ってくる手法もJ-POPらしいところだ。

TWICE 「Fanfare」Music Video

まったくタイプの違う2曲、好き嫌いは別として、我々日本人にとって親しみやすく耳に残る曲は 「Fanfare」の方だろう。ただ、どちらが優れているというわけでもなく、同じアーティストながらターゲット層の違いでここまでベクトルの異なる楽曲を持ってくるところに面白さがある。

NiziUに関していえば、世界を見据えており、そうした意味では前者の世界的なトレンドがさらに顕著になっている。その反面で、私が「Make you happy」を聴いて感じた率直な第一印象は、メンバーとグループのポテンシャルは別として、“メロディが弱く、リズムも単調で印象に残りづらい曲”だった。実際にそう思った人は少なくはないはず。特に『Nizi Project』を熱心に観ておらず、メンバーに思い入れが少ない人ほど、そうした印象を受けたと思う。しかしながら、この“印象に残りづらい”ことこそが今、トレンドの肝となりつつあるのである。

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