槙田紗子［インタビュー後編］エンタテインメントを作りし者が描く未来図「振り付けの仕事を回したり、演出もできる組織を作りたい」槙田紗子 インタビュー

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演者の気持ちがわかることが強み

――会場ごとにステージのサイズは変わりますよね。振り付けは、どのサイズ感を基準に考えるものなんですか？

槙田：
メジャーに行く直前の、いわゆるライヴアイドルって、“90のバミリで2”までしか立てない会場でやったりするんですよ。ただ、“2”以下という会場はほぼないので、“2”までで完結するようにしています。

――その“90のバミリで2”というのは、どういうことなのでしょうか？

槙田：
“0”がセンターで、その左右の隣が“1”、さらにその隣が“2”になります。それで、その間隔が90cmということなんです。なので、全体の左右幅は360cm。それよりも狭い会場はほぼないので、その範囲で完結するように作りますね。例えば、5人グループだったら、横一列に並んだ時に“2-1-0-1-2”の位置に立つと、綺麗に見える。なので、“2”からは外に出ないフォーメーションを考えます。6人だったら“2.5-1.5-0.5-0.5-1.5-2.5”だと綺麗に並べるんで、狭い会場だと、全員が一歩ずつ内側によることで調整します。

――奥行きはどう考えるんですか？

槙田：
奥行きは、ステージに“へそ”ってあるじゃないですか。前後の真ん中の位置のことなんですけど、私は、けっこう“へそ”を使います。例えば3列になった時に“2列目はへそ”とか、“1列で並ぶけど、ステージの前ではなくてへそで”とか、そういう使い方をします。“へそ”を使わない先生もけっこういるんですけどね。“はい、ここで1列”とか“ここは斜めで”みたいにザックリしている先生もいます。空間の把握能力が高いグループだと、“へそ”を使わなくても、綺麗に斜めになれたりするんで、別に“へそ”を使わなくても大丈夫なんですけど、私は正解があった方がやりやすいかなと思うので、“へそ”を使うことが多いです。

――ちなみに“空間の把握能力が高い”と感じたグループは？

槙田：
スパガ（SUPER GiRLS）はすごかったですよ。ちょっとびっくりしました。まだ新メンバーが加入して1年経っていない時期に振り入れをやったんですけど、覚えが早過ぎて。みんな、すごく淡々とやっていて、1回見ただけで“あ、はーい”なんて言いながら、ちゃんとできちゃうんですよ。選ばれた子たちなんだなって思いました。でも、結局、そこだと思うんですよね。なぜ“坂道”にあんなに良い子たちが集まるかといったら、選ばれているからなんですよ。何万人の中から選ばれた子が参加している。でも、そうじゃないグループは、やっぱりクオリティが下がる部分もありますよね。

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――現在、槙田さんは将来についてどんなプランを持っていますか？

槙田：
アイドルプロデュースをやりたいと思っていて、30歳くらいまでには実現させたいですね。振り付けもアイドルだけなくて、ほかの方面でもやっていきたいです。

――すでに現在でも、アイドル以外の振り付けもやっていますよね？

槙田：
舞台の振り付けをやっています。舞台だったり、CMや映像もやりたいです。すごくリアルなことを言うと、ゆくゆくは組織を作りたくて。自分のアシスタントやダンサーを何人か抱えて、その中で振り付けの仕事を回したり、演出をやったりしていけたら。そこに私がプロデュースするアイドルもいて。自分1人だと、やれることが限られているなって気づいたんですよ。2年くらい振り付けだけがっつりやっているんですけど、自分が振りを考えて、自分で教えに行っていると、稼働している時間だけで終わってしまうというか、あっという間に日々が過ぎていってしまうんです。だから、なかなか広がりが生まれないような気がしていて。もちろん、振り付けのクオリティは上がったと思うし、良いお話ももらえるようにはなったんですけど、それだけだと、それで終わりじゃないですか。だから、フェスをやったりして、どんどん広げていこうと思っているんです。

――音楽家の松隈ケンタさんも、クリエイターを集めてチーム（SCRAMBLES）で曲を作っているじゃないですか。そのシステムに近いのかなと思いました。松隈さんの面白さは、複数の人間で曲を作っているにも関わらず、そこに松隈さんの作家性も見えていることだと思っています。

槙田：
私もそうなりたいですね。以前、西田一生さんという振付師の方にお会いする機会があったんですけど、西田さんって、私がやりたいことをすべて実現されているんです。西田プロジェクトっていう会社を作って、何人ものダンサーや振付師を抱えているんですよ。所属ではなくて登録という形になっていて、西田プロジェクトに来た仕事を、登録メンバーに振るんですけど、そのほかの個々の活動は自由なんです。西田さんは紅白の振り付けをやったりしていて、そういう時にアシスタントやダンサーが大勢必要になると、全部西田プロジェクトでまかなうことができて。衣装もたくさん保管しているそうですし、練習するならスタジオも用意しますっていう感じなんです。振り付けから派生したことが、こんなにも広がっていくんだな、すごいなって思いますし、それって私の目指す形だなって思うんですよ。相当大変でしょうけど、そうしていかなくちゃいけないなって思っています。まだアイドルをやっていた時期の方が長いし、最初は振付師としての勉強をしっかりしなくちゃって思っていたから、ほかのことは全然やらなかったんですけど、そろそろ広げていかなくちゃって思っています。

――最後に、振付師・槙田紗子の強みをご自身はどう考えているのか教えていただけますか？

槙田：
強みは、演者の気持ちがわかること。ステージに立ったことのない人には、一生わからないことですよね。それは当たり前のことなんですけど、私はずっとレッスンを受けていた側だったし、振り付けをつけてもらって、それをステージでやっていた側なので。そもそもアイドルって、普通の人のはずがないんですよ。私を含めて、アイドルになりたいって思う時点でどこかがおかしいんです（笑）。そんな普通じゃない10〜20代の女の子たちのケアって、超難しいと思う。だからマネージャーさんは大変だし、私もマネージャーさんをたくさん困らせてきました。だからこそ、アイドルたちの繊細な心を理解できなくはないはず。私は、彼女たちに気を遣わずにものも言えるし。私はやっていたから“お前、やってないくせに！”って思われないじゃないですか（笑）。男性のマネージャーさんに“もっと可愛くしなよ”って言われたら、“いやいや、あんたに言われたくないよ”ってなるけど、私に言われたら、きっとそうはならないですよね。ただ、逆もあって、マネージャーさんが言わないと、彼女たちに伝わらないこともあるんですけど……。でも、私だったら理解してあげられることは多いと思うので、やっぱりそこが強みだと思います。

槙田紗子 プロフィール
1993年11月10日生まれ。神奈川県出身。B型。

2009年ガールズロックユニット『ぱすぽ☆』のメンバーとしてデビュー。2011年、メジャーデビューシングル「少女飛行」が、女性グループのデビューシングルとしては史上初のオリコン週間ランキング初登場第1位を獲得。2015年12月卒業。

現在は、2年連続でソロ写真集発売、3年連続写真展開催や、主演舞台、多数のアイドルグループの振り付け、主催フェス＜サコフェス＞開催など、マルチに活動中。

インフォメーション

たやのりょう一座第４回公演＜ストリッパー物語＞
日程：2020年2月19日（水）〜2月26日（水）
会場：浅草木馬亭
作：つかこうへい
演出：こぐれ修（劇団☆新感線）
振付：槙田紗子
主演：中村静香・田谷野亮
チケット発売中