槙田紗子［インタビュー前編］振付師としての本懐「自分の頭の中を他人が表現してくれることが何物にも代えがたい喜び」槙田紗子 インタビュー

8時間の振り入れでも、体感的には一瞬

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――アイドルの振り付けをする上で、自分のイメージと、アイドルの子たちの力量が乖離してしまうことはありますか？　私が思っていることを表現できていないな、といった感じで。

槙田：
最初の頃はそういうことがすごくありました。自分のダンススキルと、教えているアイドルたちのスキルが違うし、グループによっても違うし、グループ中のメンバーによっても違う。でも、経験を重ねてきて、そこを計算して振りを作れるようになりました。以前は、私の力量不足だと思うんですけど、すごく押しつけがましい振り付けになっていたと思います。以前の振り付けの方が、全然難しいですから。それだけ引き出しも少なかったし、見ている世界も狭かったし、勉強不足でもあったので、思い浮かぶ振りが、自分の中だけのものでしかなかったというか……なんて言えばいいのかな、昔の方が自分の踊りたい振りだったのかな。

――槙田さんのエゴが出すぎていたというか。

槙田：
そうなんです。今思うと、逆に媚びていないので、よい部分もあったりするんですけど。何も考えていなくて我が道を行っているなあって思います。

――尖っていたんですね。

槙田：
尖ってましたね（笑）。ただ、尖ってはいるんだけど、もうちょっと何かがあればいいのにという、物足りなさもあって。でも、だんだん、自分もちゃんと振付師になっていったんでしょうね。それぞれのレベルに合わせて振りを考えられるようになりました。結局、できない子に難しいことをやらせて、全体でまとまりがなく見えてしまったら、元も子もないので。それでは、私が意図したことは伝わらないですよね。それで、ダンスが苦手なグループには、難しいことはさせないように変わっていきました。

――ダンスができる／できないというのは、ステージを観て確認するんですか？

槙田：
まずはリサーチするためにライヴを観に行くようにしています。ライヴを観に行くタイミングがない時は、可能な限り動画を観ます。以前は動画から力量を読み取る力もすごく低かったと思います。それもだんだんできるようになってきて、動画を観れば、こういう感じでできるだろうなってわかるようになりましたね。それから、マネージャーさんに事前に、それぞれのメンバーのダンススキルを聞いておくようにもしています。けっこう細かく質問しますね。こちらが聞かなくても、事前に教えてくれるグループもありますけど。

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――実際に振り付けを考える作業というのは、どのように進めていくんですか？　まずは曲と歌詞をもらうところから始まるとは思いますが。

槙田：
それと歌割ですね。それから運営的に目立たせたい子がいるかどうかを確認します。場合によって、いろいろなオーダーが入ることもあります。例えば、タオルを使いたいとか。なんとなくの雰囲気だけを伝えられることもありますね。そういう要望を踏まえて作っていくんですけど、グループごとに全然違うので、ケースバイケースですね。全部お任せしますってこともありますし、事前にこちらで“振りV”を撮って、それをチェックする事務所もあります。

――すごく初歩的な質問なんですが、アイドルグループって、何人もメンバーがいますよね。フォーメーションって、どうやって教えていくんですか？

槙田：
特別なことはないですよ。“○○さんは1番、□□さんは2番”という感じで、立ち位置を伝えるだけです。それで“Aメロはこういう風に動きます”って見せて、“最後の4カウントで4歩で移動して、最終的な立ち位置はここです。動線はここです”っていうように順序立てて教えていきます。

――では、人数が多ければ多いほど作業量が増えますよね？

槙田：
そうですね、大変です。振付師って、レッスン中、ずっとしゃべっているんですよ。自分しか話をする人がいないんで、めっちゃ疲れます（笑）。メンバーは踊って動くという体力的な疲労はありますけど、別にワイワイガヤガヤしゃべることはないので。せいぜい確認する時に“はい、ここですね”って言うくらいな。でも、私は4時間で振り入れだったら、4時間ずっとしゃべっています。最後は口が回らなくなってきます（笑）。

――槙田さんはアイドル時代、特典会ではずっと笑顔でいるので、終わったあとに顔の筋肉が引きつっていたそうでしたが、それに近い感じですね。

槙田：
アイドルはみんな“笑顔疲れ”していると思います（笑）。でも、振付師はレッスンでずっとしゃべっているので、しゃべり疲れしますね。しかも、脳はフル回転なんですよ。たまに7～8時間の振り入れがあるんですけど、すごく集中して教えているので、体感的にはあっという間です。8時間レッスンをやったと言うと、“えっ、そんなに長時間!?”ってドン引きされることもあるんですけど、やっている方は一瞬。“ああ、今日は8時間もレッスンがある。大変だな、つらそうだな”なんて思うこともないですし、始まったらあっという間に時間が経っていますよ。ただ、終わったら、ものすごく疲れていますけど（笑）。

（後編に続く）

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槙田紗子 プロフィール
1993年11月10日生まれ。神奈川県出身。B型。

2009年ガールズロックユニット『ぱすぽ☆』のメンバーとしてデビュー。2011年、メジャーデビューシングル「少女飛行」が、女性グループのデビューシングルとしては史上初のオリコン週間ランキング初登場第1位を獲得。2015年12月卒業。

現在は、2年連続でソロ写真集発売、3年連続写真展開催や、主演舞台、多数のアイドルグループの振り付け、主催フェス＜サコフェス＞開催など、マルチに活動中。

インフォメーション

たやのりょう一座第４回公演＜ストリッパー物語＞
日程：2020年2月19日（水）〜2月26日（水）
会場：浅草木馬亭
作：つかこうへい
演出：こぐれ修（劇団☆新感線）
振付：槙田紗子
主演：中村静香・田谷野亮
チケット発売中