WACK、神宿、QUEENS、マリオネッ。……Pop’n’Roll編集長と語る「ギターがカッコいいアイドルソング 2019」20選<後編>|「偶像音楽 斯斯然然」第21回

WACK、神宿、QUEENS、マリオネッ。……Pop’n’Roll編集長と語る「ギターがカッコいいアイドルソング 2019」20選<後編>|「偶像音楽 斯斯然然」第21回

WACK、神宿、QUEENS、マリオネッ。……Pop’n’Roll編集長と語る「ギターがカッコいいアイドルソング 2019」20選<後編>|「偶像音楽 斯斯然然」第21回

これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である。

独特の拍子とリズム感があってめっちゃ楽しい

鈴木セレクト:HAMIDASYSTEM「存在しないぞんざいな愛」

鈴木:
その系統の流れで、HAMIDASYSTEM。このギタートラックは、心に引っかかってきました。決して派手なフレーズを弾いているわけじゃないけど、楽曲を引き立てつつ存在感を出しているという。

冬将軍:
HAMIDASYSTEMはいいですよね。オリジナルメンバーの時はちょくちょく観に行ったりしてましたけど……(聴き入りながら)……うん、やっぱいいな。QUEENSとは違うブリティッシュ風味……4ADの退廃美。This Mortal CoilやCocteau Twins影響下の、なんだろうな、90年代初頭のBUCK-TICKやLUNA SEAがやっていたような鍵盤楽器っぽいギターのボイシング。<LSB(※1994年にLUNA SEA、SOFT BALLET、BUCK-TICKで行ったツアーイベント)>の香りがする。

鈴木:
ええ、そんな感じ。

冬将軍:
シーケンスに対してミルフィーユのように重なっていくギターサウンドがなんとも美しい。

鈴木:
あと、ドラムトラックも細かい緩急が利いていて気持ちいいなと。

冬将軍セレクト:WILL-O'「POP'N」

冬将軍:これはベースがとにかくカッコいい。そのベースラインを引き立たせるギターもいい。

鈴木:ベース、めちゃめちゃカッコいい。……(聴きながら)スネアも抜群にいいっすね。……うん、このストップ&ゴーの感じ、リズムの緩急も心地よい。拍子を見失いそうになる。

冬将軍:WILL-O’は独特の拍子とリズム感があって、めっちゃ楽しい。振りもなんかゼンマイ仕掛けというか人形っぽくて可愛いんですよ。

冬将軍セレクト:始発待ちアンダーグラウンド「風街タイムトラベル」

冬将軍:
このギターも大好きですね。フェンダー・ジャガーやテスコみたいなチューニングが甘くて立ち上がりの遅いギターをひたすらダウン(ストローク)で刻んでるアーシーな響きが最高だし、ウェットなリバーブもサビで鳴ってるアナログなフェイザーの掛かり方もたまらないです。絶妙なガレージ具合いといい、トム・ヴァーレインとリチャード・ロイドのコンビネーション、和製Televisionみたいな雰囲気があって。

鈴木:
こういう雰囲気って、実はバンド全体で出すのって難しいんですよね。全体的にはタイトに演奏しつつ、どこかルーズさも出さないといけないから。

冬将軍:
音を詰め込んでないから、その隙間のある空間作りが難しいんだけど、そのまどろんだ空気感がウマくサウンドと音像に出てる。レトロでゴシックで、ウイスパーっぽい歌を含めて、昭和歌謡っぽい雰囲気も最高です。

鈴木セレクト:神宿「全身全霊ラプソディ」

鈴木:
ギターカッティングというポイントでは、神宿の「全身全霊ラプソディ」のイントロのカッティングも切れ味が鋭くて印象深かったですね。実は、前回のヘヴィ系リフの話と通じるところもあるのですが、やっぱり休符で音をしっかり止めることが重要だなと。また、その話かよってところはありますけど(笑)。

冬将軍:
うん、要所要所ズバっと入って来るキメもカッコいいですね。随分と硬派なロックナンバーだなと思ったら、NICO Touches the Wallsのサポート兼プロデュースでお馴染みの浅野尚志さんの提供曲なんですね。いろんなアイドルに楽曲提供されてますけど、LADYBABY「ニッポン饅頭」「Easter Bunny」や、TEAM SHACHI「Hello, TEAM SHACHI」「DREAMER」など、個人的に大好きなエッジの効いた曲を書いてる方です。

鈴木:
過去のアルバムの中にはロック系の曲もあるのですが、個人的には神宿の楽曲って“キラキラ”したポップ感満載のイメージがあったんですけど、この「全身全霊ラプソディ」は“クール”でロックな印象があって。いい意味でイメージを裏切ってくれて、すごく印象に残りましたね。

冬将軍:
塩見きらさんの加入も大きいのかなぁ。彼女、いい声してますよね。“折れそうなときは〜”の一節(1’44”〜)のスッと抜ける美しさが最高です。神宿はこないだの連載で触れましたけど、「ボクハプラチナ」の衝撃が大きくて、毎日聴いてます。大好きな曲です。

鈴木:
あれは、すごい曲ですよね。歌もトラックも。

冬将軍:
そもそも自分、ぶっちゃけると、神宿ってそんな気に止めてなかったグループなんです(爆)。ただ、以前鈴木さんに“すごい楽器マニアで〜”という話を聞いてから、チェックするようになって。今ではすっかりYouTubeをチャンネル登録してよく観てます(笑)。一ノ瀬みかさんが、商品じゃなくてドラッグストアのお店を変顔しながらオススメしてるヤツとか、ちょっとおかしいですね(褒めてます)。

鈴木:
あはは(笑)。一ノ瀬さんの楽器に関するガチ感はすごい。楽器の話を本気でできるアイドルって、僕の中では一ノ瀬さんしかいないぐらい。2019年に一ノ瀬さんと塩見さんのギターをテーマにしたインタビューをしましたけど、これ、けっこうガチなギターインタビューでしたから。

冬将軍:
“指先にアロンアルファ塗れば痛くならない”って、おれが中学生の時に読んだ高崎晃(LOUDNESS)のインタビューと言ってることが同じじゃねぇか!

鈴木:
まさか、アイドルとオーディオインターフェースについて語り合うことになるとは思ってもみなかったですし(笑)。このあとも、一ノ瀬さんとはお会いするたびに、“今、気になるベーシストは?”とか“今、欲しいベースは?”って話をしていますね。

冬将軍:
いいですね、私もiRigや“オススメのアンプシミュレーターは?”っていうお話したいです。特典会で。

鈴木:
特典会かよっ!(笑)

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