【コラム】収録曲順から読み解く日向坂46の“ライブ”な最新作『脈打つ感情』

2020年9月発売の『ひなたざか』以来、約3年ぶりのアルバムとなる日向坂46の『脈打つ感情』。11月8日（水）にリリースされ、オリコンデイリーアルバムランキングでは発売日含め複数日に渡って1位に輝き、11月15日公開のBillboard JAPAN週間アルバム・セールス・チャートでは当週156,728枚を売り上げ首位獲得。年末に開催されるNHK紅白歌合戦への出場は残念ながら逃したものの、待望の2ndアルバムは好調な滑り出しを見せている。

そんな今作のテーマは“ライブ”……ということで、前回のコラムでは主要曲の作家陣からそのライブ感を探ったが、今回は収録曲順から想像できるライブ像……公式サイトには“3形態それぞれを、日向坂46のライブのセットリストをイメージした曲順で構成”との触れ込みがあるだけに、その“イメージ”をリリースされた3形態（初回生産限定盤TYPE-A・初回生産限定盤TYPE-B・通常盤）それぞれの収録曲を比較しながら考えてみたい。

▲日向坂46 2ndアルバム『脈打つ感情』トレーラー

日向坂46の系譜を彩り、しっかりと感じられるライブ

まずは今作の内容を整理してみると、各盤16曲＋ボーナストラックとして現在開催中のツアー＜Happy Train Tour 2023＞から1曲ずつライブ音源を収録。既出のシングル曲など9曲がすべての盤に、そのほか一期生〜四期生のオリジナル曲を各盤にバランスよく収めている。そうした中でやはりものを言うのは1曲目。作品の顔になるとともに、米メジャーリーグでも近年“2番打者最強説”が謳われているが、作品にバーストをかける意味でも重要な2曲目が各盤共通してリード曲にして今回最強ライブアンセムの1つ「君は0から1になれ」だけに、そこにいかにバトンを渡すのか。この1曲目でアルバムの印象が決まると言っても過言ではない。

そんな注目の1曲目、TYPE-A は加藤史帆がセンターを務めた日向坂46の5thシングル「君しか勝たん」。この曲はメロディ、サビ感、多幸感、泣き感、MV……諸々含め本作の中でもとりわけ、いや日向坂46史上、圧倒的アイドル曲の1つ（さらに言えば、このタイトルにして加藤史帆センターというのがまた抜群のマッチング！）。これを1曲目に持ってきたということは日向坂46のアイドルとしての矜持……さらには、TYPE-Aという完全無血の“おひさま（日向坂46のファンの総称）”仕様には最適だったと思う。

▲日向坂46「君しか勝たん」MV

それに続くは「君は0から1になれ」〜「月と星が踊るMidnight」と、センターが佐々木久美〜齊藤京子と日向坂46の屋台骨となる3人の流れ。これはもうとにかく自信に満ち溢れたステージが目に浮かぶ。そして、そこから今後の新たな顔になる四期生の初楽曲、彼女たちのアイドルとしての指針が垣間見える「ブルーベリー＆ラズベリー」（これまた超アイドル曲！）、いかにも三期生らしいキッチュな「ゴーフルと君」としっかり次代も見据えつつ、一方で東村芽依や潮紗理菜のセンター曲（前者は「どうする？どうする？どうする？」、後者は「最初の白夜」）など一期生の楽曲で日向坂46の魂を注入。終盤は金村美玖センターの「ってか」、小坂菜緒センターの「僕なんか」、丹生明里センターの「One choice」、上村ひなのセンターの「Am I ready?」と二期生から三期生へ。いわば日向坂46の系譜を彩り、しっかりと感じられるライブとなっている。

▲日向坂46「ブルーベリー＆ラズベリー」MV

▲日向坂46「ゴーフルと君」MV

▲日向坂46「ってか」MV

▲日向坂46「僕なんか」MV

▲日向坂46「One choice」MV

▲日向坂46「Am I ready?」MV

現在進行形の日向坂46とともに大きな可能性を提示

かたやTYPE-Bは直近のライブで景気付けの1発として抜群に機能し、メンバー＆ファンの間でも愛されている「アディショナルタイム」からスタート。この曲は本当にサビもサビ前も素敵、そしてドラマティック（歌詞も刺激的！）。ライブで盛り上がるのも納得の1曲だが、そこから「君は0から1になれ」、「ってか」と日向坂46の中でもハードでキラーな楽曲で最初から怒涛の攻勢。この爆発力、この勢いはまさに今の日向坂46らしさ、リアルな姿を体現している。

▲日向坂46「君は0から1になれ」MV

さらに、四期生の第二弾楽曲「シーラカンス」にしても「ブルーベリー＆ラズベリー」から一味も二味も弾けた姿を見せつけ、三期生の「パクチー　ピーマン　グリーンピース」、二期生の「世界にはThank you！が溢れている」、一期生の「真夜中の懺悔大会」とアップテンポな楽曲、これはライブ会場なら盛り上がり必至だ。

▲日向坂46「シーラカンス」MV

▲日向坂46「世界にはThank you！が溢れている」MV

▲日向坂46「真夜中の懺悔大会」MV

その上で締めくくりは「月と星が踊るMidnight」というのがまた……。これまでの熱気をそのままに、よりクールに、それでいて気持ちよく飾る有終の美。思うに「月と星が踊るMidnight」のポテンシャルはまだまだこんなものじゃない。どこか大きな伸び代を感じるだけに、総じてTYPE-Bも現在進行形の日向坂46とともに大きな可能性を孕んだ、TYPE-Aとは異なるライブが完成している。

▲日向坂46「月と星が踊るMidnight」MV