奥津マリリ（フィロソフィーのダンス）×前田健太郎（＜六本木アイドルフェスティバル＞総合プロデューサー）［対談］「今年のフェスは、それこそ本当に焼け野原にして“フィロソフィーのダンスはアイドル界のカッコいい”っていう立場を確立したい」奥津マリリ（フィロソフィーのダンス）×前田健太郎（＜六本木アイドルフェスティバル＞総合プロデューサー）対談後編

撮影：河邉有実莉
編集協力：村田誠二

旬のアイドルは逃したくないけど、自分たちがいいと思ってるグループは、なるべく出てほしい（前田）

奥津：
これだけ長年やっていると、年によって入れ替えがあって、どんどん新しいグループが出てくるじゃないですか。そのリサーチもけっこうしているんですか？

前田：
実は、あんまりしていないです。俺はもともと『アイドルお宝くじ』のプロデューサーだっただけで、2019年からはもうアイドルがメインの仕事じゃないから、新しいグループはほとんどリサーチしていない。それは（イベントプロデューサーの）中鉢（健太）くんとかの仕事。もちろん、2017年からお付き合いしているグループは俺も関わったりするけど。

奥津：
そっか。我々、最近は＜RIF＞くらいしかアイドルイベントに呼んでもらえないんですよ（笑）。だから、＜RIF＞に出ると、新しいグループさんがいたりするから、“今はこういうグループがいるんだ！”って感じで、勉強の場になってて、“こことここは（タイテが）こう連なってるから、もしかしていい感じなのかな”とか、“このグループはすごく頑張ってるな”って感じで見てますね。

前田：
ウチは、どっちかって言うと、ずっと同じグループが出てますよ。よく別の方に“義理堅いイベントですね”って言われるんだけど、当然各グループ、波があるわけじゃない？　でも俺ら、ドライにいけなくて、最初に呼んじゃったグループを毎回呼んじゃうみたいなところがある。だから、意外と新陳代謝は少ない。でも今年は初めて、けっこうラインナップを変えました。やっぱり昔からやっていたグループがどんどんなくなってきてて、“うちもニュースターがいなきゃいけないね”っていう中で、なるべく新しいところを呼んでみようと。そこで“カブキアゲ（＜歌舞伎町UP GATE↑↑＞。＜@JAM＞と＜六本木アイドルフェスティバル＞、東急歌舞伎町タワーにおけるエンタテインメント施設の企画・運営を行なうTSTエンタテイメントの3者がタッグを組んで2023年5月6日（土）、7日（日）に開催した都市型サーキットフェス）が参考になりました。ああいう大規模イベントを運営側で初めてやったことで、新しいグループを知ることができたから。

奥津：
初めての方がいっぱいいました。最近はこんなグループいるんだ！って。

――ちなみに、前田さんはモーニング娘。が活躍する番組を観て、テレビの道をより強く志そうと思ったそうで、おふたりのアイドル的な共通項って、モーニング娘。になりますよね。

前田：
そうなんですよ。奥津さんを知って“このフィロのスの子、 可愛いな”って、どんどん興味を持って調べていくと、完全なハロヲタで。その結果、僕がマリリにお願いしたい仕事ができて、定期的に収録もしていたので、それがきっかけで仲よくなりました。それまではあまりマリリのキャラクターをわかってなくて、地なのか作ってるのかわからないけど、ちょっと変わってる感じで（笑）、頑張ってはしゃいだり、“おっぱい”とかハッキリ言うみたいな。普通のアイドルの子たちは濁すんだけど……。

奥津：
そっか、ハッキリ言わないか（笑）。

前田：
“マリチチです！　お納めください！”みたいな（笑）。

奥津：
こんにちは！みたいな感じで（笑）。

前田：
そういう潔さとかは、年齢も10代とかじゃないし、いろいろ考えた上での自己プロデュースでやっていることで、やっぱり大人だから好きなんですよね。俺は個人的にはアイドルに幼稚性は求めてないから（笑）。でも、それが本当はアイドルの醍醐味だと思うんだけど、フィロのスは、ざっくり言うと大人アイドルだし、楽曲やパフォーマンスに惹かれてファンになる人たちが多いと思うんです。だから、どんどん大きくなっていると思うんですけどね。ただ可愛いとか接触できる以外のよさがいっぱいあると思う。その中でマリリは、歌も上手、顔も可愛い、でもちょっとズレた感じを演出してるところが……（笑）。

奥津：
私はめっちゃ真剣にやってるんですけど（笑）。

前田：
あ、そうなんだ！（笑）　でもさ、フィロソフィーのダンスって、別にアイドル売りしなくてもいいくらいのパフォーマンスができる人たちがいるのに、あえて加茂さんが“アイドル”としてちゃんとやっていくっていうコンセプトを立てて、4人が頑張ってきたわけで。売れても“私たち、アイドル対バン出ません”というスタンスにもならないし、ちゃんと＜RIF＞に出てくれる。だからこそ、明らかに楽曲もパフォーマンスも“異色”なんですよ。で、イベントとしては、そういうグループがいてくれた方が幅が広がるからいいんです。48グループもいる、フィロのスみたいな実力派グループもいる、で、ニジマスとかふるっぱー（FRUITS ZIPPER）とかバンビ（#ババババンビ）とか、勢いのある今人気のアイドルグループもいる、そういう幅の広さが、僕らとしてはキャスティングする上で目指しているところでもあるので。とりあえず、今流行ってる子だけをさらおうとは思ってないですね。やっぱり実力のあるグループって息が長いので、なかなか（ラインナップが）変わらないということもあるんですよ。

――確かに。

前田：
Task（have Fun）が「3ＷD」でバーン！と売れた夏（2017年）、俺らはTaskをブッキングしていなかったんですよ。で、その直後の＜TIF＞で、客として参加していたうちのスタッフとたまたま会った時に、“次どこ行くの?”って聞いたら、“Task、観てきます。Task、むっちゃいいですよ”って。だからその年、俺らはキャスティングできてなくて、初出演が翌年（＜六本木アイドルフェスティバル2018＞）になるんですけど、台風に負けない観客との一体感を間近で観て……当然翌2019年では大トリやってもらいました。だから、旬（のアイドル）は逃したくないっていう気持ちもあるけど、自分たちがいいと思ってるグループは、なるべく出てほしいって気持ちも強くて……毎年そんな試行錯誤が詰まったラインナップになりますね。

奥津：
確かに。だって、出演枠自体はそんなに多くないですもんね。ほかのアイドルフェスはいろんなステージがありますけど。

前田：
そう、どこかしらのステージに出演していただけますから。“ここも呼ばなきゃ、ここも呼ばなきゃ、でもハマんない！”みたいなことが多いので、2ステージにできないかとか、けっこう考えたんですよ。

奥津：
だいたいメインステージとサブステージがあって、サブは登竜門みたいな位置づけですよね。

前田：
そうそう。でも、EX THEATER ROPPONGIは同じ日程でイベントが入ってるし、テレビ朝日の屋上とか検討したんですけど、エレベーター輸送能力が足りない！とかで、成立しなくて。自分たちが2ステージでやりたいって考えても、お客さんに迷惑をかけるイベントは、それ自体が成り立ってないし、出演するアイドルも、お客さんがいないステージで歌わせられないじゃないですか。で、今年も結局1ステージなんです。相当会議を重ねて、どこを呼ぶか決めて、いざオファーしたらスケジュールが合わないっていうグループもあったし。だから、来年以降、新しいグループを増やしていくには、前もって声掛けしておかないと、思いどおりにブッキングできないことを学びました。今年は、方針をどうするかで二転三転したところもありましたし。

奥津：
確かに“＜RIF＞カラー”みたいなものってありますよね。

前田：
ちょっとだけクセがあるんですよ。でも、バランスも保っている。毎年、たまたま結果的に、初日がポップ系で、2日目がパフォーマンス系のグループが多いっていう傾向になる。