NEO JAPONISM[ライブレポート]グループ最大規模の“闘い”で作り上げた幸あふれる狂騒の宴
NEO JAPONISM[ライブレポート]グループ最大規模の“闘い”で作り上げた幸あふれる狂騒の宴
NEO JAPONISMが、8月15日(月)にZepp DiverCity(TOKYO)にてワンマンライブ<一闘両断>を開催した。グループの単独公演として過去最大キャパとなったZepp DiverCityのステージ上で、彼女たちはどのようなパフォーマンスを展開し、どのように想いを届けたのか? 5人が全力で挑んだ“闘い”の全貌をお伝えする。
撮影:真島洸、秋和杏佳
ものすごいものを観た。
NEO JAPONISMのライブがすごいなんて、“海の水が塩辛い”というくらい周知の事実なのだから今さら言うことでもないのだが、あえてそう言いたくなるくらい、8月15日に行なわれたZepp DiverCity(TOKYO)でのワンマンライブ<一闘両断>はものすごいライブだった。私がNEO JAPONISMのライブを初めて観てから約2年半、ずっと追い続けているのは毎回最高を更新してくるからで。それは通常の対バンライブであってもそうなのだから、ワンマンとなればなおさらのこと。“最新のポルシェが最良のポルシェ”ならぬ、“最新のNEO JAPONISMが最強のNEO JAPONISM”だ。
会場入口の階段に飾られた灯籠や提灯、のぼりに出迎えられると、NEO JAPONISMのワンマンライブに来たのだという実感と同時に気持ちの昂りを得る。ロビーには大きな翼を広げたシンボルマークの神社が祀られており、来場者に向けていつもとは違う特別感と期待感を煽る、NEO JAPONISMらしいこだわりの演出だ。
2019年11月からの活動開始以来、ワンマン公演を確実にソールドアウトさせてきたNEO JAPONISM。だが、本公演は悔しくもソールドアウトすることができなかった。しかしながら、会場を見渡せば1階フロアから2階席の最後列まで、ソールドアウトを謳ってもいいくらいのオーディエンスが今か今かと開演を待ち侘びていた。
紗幕に映し出されたカウントダウンの数字が残り1分、30秒と刻まれていくにつれ、高まる緊張感。数字が0になると「NEO START」。注意喚起を促す聞き慣れたロボットボイスが始まりを告げる。会場に轟く荘厳なSEに合わせて、刀を持った8人のダンサーが殺陣を展開していく。“一闘両断”ーー。その力強い文字が幕に浮かび上がり、NEO JAPONISM最大規模となる闘いの火蓋が切って落とされた。
“とうとう来たぜ、一闘両断! 最高の日の始まりだぁぁぁぁ!!”
滝沢ひなのが高らかに声を上げる。不穏さを掻き立てながら蠢くようなビートが、徐々に解放へと向かっていく「Signal」。2021年のリリース時、NEO JAPONISMのグループとしての懐を何段階にもスケールアップさせる、アイドルポップスの領域を超えた楽曲であると感じた。実際に幾多ものライブを重ねることで同曲はグループとともにとてつもない力を帯びていった。今ここで紗幕越しに見える5人のシルエットは勇ましく優美で、自信に満ち溢れた唯一無二の強さを放っている。メンバーの表情は見えないが歌声とシルエットだけでオーディエンスを魅了していく様は圧巻だ。このライブが、NEO JAPONISMの5人が、とんでもないことになることを1曲目から知らしめるように、突き抜けるハイトーンと天を仰ぐ5人の両手がこのZeppを包み込んだ。
“拳を高く、高く、高く上げてください! 3、2、1、Go!Go!Go!Go!”
滝沢が威勢よくカウントをすると、紗幕が落ちた。蓄えていたエネルギーが一気に放出される。高く聳え立つ金銀に輝く和柄のオブジェと3枚のLEDパネル、スチームパンク調のステージセットが露わになった。ステージからもフロアの様子がはっきりとわかったのか、5人の表情がほころぶ。2階席からもわかるほど満面の笑みを浮かべた福田みゆが野太い声で歌い出した。「Buster Buster」だ。滝沢が、朝倉あいが、瀬戸みるかが、耳をつんざくようなエッジの効いた歌声で紡いでいき、辰巳さやかがステージとフロアの熱を掌握していく。若干飛ばし過ぎにさえ思える、恐ろしいほどの5人のボルテージが容赦なくフロアを襲う。鬼気迫る歌声と切れ味抜群のステージングに息を呑む。2曲目にして、最大規模ワンマンであるとか、初めてのZeppだとか、そんなことはもう関係なくなっていた。最近のNEO JAPONISMを観て感じていた膨大なパワー、そして絶好調なグループのコンディションが最高潮に達していることは目にも明らかだった。オケに合わせて歌を歌うというアイドルライブの領域を超えた、完全なるグルーヴに圧倒される。5人のボーカルとダンスが生み出すNEO JAPONISMのグルーヴ、それはロックバンドのそれと同等である。この時すでにZeppの先が見えたのは、何も私だけではなかったはずだ。
“Woo〜!”ステージで声を出すことが気持ちよすぎてたまらない、そんなカリスマオーラみなぎる滝沢の咆哮で歌い締めると、その迫力を前に思わずどよめきのような歓声が沸き起こった。
“さあ、やってきました、GAN GAN HERO!!!!! 果たしてこの5人は史上最高のライブを作り上げることができるでしょうかぁ!?”
2曲目にして圧倒的なものを見せつけられ唖然としたフロアに向かって、畳み掛けるように「GAN GAN HERO!!!!!」を叩き込む。キャッチーなメロディとコミカルなパフォーマンスながらも高いキーと複雑な音符の動きを巧みに操っていく。
“どーも!”“あいです!”“ひなちゃんです!”
間奏に差し掛かると、朝倉と滝沢がステージ中央に躍り出てきた。ワンマンでは恒例となっている朝倉フィーチャーコーナー『あいちゃんチャレンジ』。テーブルクロス引き、けん玉、と来て今回は漫才。“ひなちゃん、今日Zeppだけどなんかやりたいことある?”と滝沢に訊いておきながら、“あいはねぇ……”と勝手にフロアを扇動してウェーブを作り始める朝倉。そして、滝沢は“あ、こんなところにシンバルが!?”と、ステージ後方の高台に運び込まれたシンバルを華麗に蹴り上げた。日本が誇る伝説のパンクバンド、ニューロティカのボーカル、ATSUSHI直伝のシンバルキックだ。
“小さい頃から大尊敬してたバンド、ニューロティカさんがやってるシンバルキックなんです。この前インタビューで対談させていただく機会があったんですよ。そこで「自分、シンバルキックやっていいですか?」って言ったらOK出てしまって……、しかも本人来てるんですよ!“
2人の邂逅はバンドマンの両親の影響を大きく受けた滝沢が、憧れのATSUSHIが営むお菓子屋『藤屋』に行く、という当サイトでの企画だ。
滝沢の勇姿を2階最前列席から見守っていたATSUSHIは照れくさそうで嬉しそうな笑顔を見せる。ATSUSHIの隣には、ライブを観に来ていた中学生時代の滝沢に“キミ、可愛いからアイドルになれるよ”と声を掛けたロリータ18号のボーカル、石坂マサヨが同じく、滝沢をにこやかな表情で見つめていた。
元祖シンバルキックといえば、泣く子も黙るARBのボーカル、石橋凌。その姿を見て衝撃を受けたATSUSHIが本人に許可をもらって受け継いだ。そのATSUSHIからまた滝沢が直々に受け継いだ。日本のロックシーンに“滝沢ひなの”の名前が刻まれた日でもあるだろう。強いて言うなら、シンバルが若干低かったが……そこは、日本のロックシーンに大きく名を残したレジェンドから襲名した“三代目シンバルキックの雄”として、今後の活躍に期待したい。
ディスコダンスチューン「VIVA LA DANCE」。さまざまな照明に彩られながらソリッドなリズムに切り込むラップボーカルが炸裂し、パラパラ風ダンスでテンションをグイグイ上げていく。ド派手にキメたかと思えば、無機質なリズムに合わせて5人が織りなすフォーメーションもどこか無機的に変貌する曲間のダンス。“今日までの集大成を出し切るだけではなくて、これからみなさんと次のステージに歩む日だと思ってます、よろしく!”と滝沢の言葉に誘われるように「Fight For The Right」になだれ込んだ。突き上がる拳が、他の追随を許さないNEO JAPONISMの強さを証明する。先ほどまでの無機的な情景から一気に解き放たれる熱量がすさまじい。
そのままオケがクロスフェードして「BLACK and WHITE」へ突入する。矢継ぎ早に聴き手の隙を与えぬままハモリが交差していく見事なボーカリゼーションの狂騒。そこからマイナーメロがニヒルに響く「LOSER」、図太く豪快な歌声がけたたましいディストーションギターリフを完全に負かしていく「Trigger」と、DJの繋ぎのように次から次へとストロングチューンを畳み掛けていく。まさにNEO JAPONISMの“闘う”を体現するステージを次々と展開。Zepp DiverCityはもう完全に彼女たちのホームと化している。グループ最大規模のワンマンライブとか、初のZeppであるとか、そんなことはとうに忘れてしまっていた。
妖しく踊るダンサーによるインターバルに誘い込まれるように始まった新曲2曲はNEO JAPONISMを一段階どころか、二段階も三段階もスケールアップさせる楽曲だった。辰巳の凜とした歌声で始まった「Resist the fate」は「Buster Buster」「TOMOSHIBI」に続いてMEG(MEGMETAL)のプロデュース曲。クールさと力強さが共存していくメロディが印象的。青い炎は赤い炎より温度が高い、そんな印象を受けた。シンフォニックな響きとラウドな嘶きが交錯する“静”と“動”の使い分けが巧みだ。怒涛の轟音が降り注いだあとに訪れる静寂。そして、遠くに聞こえる歌声——。“この曲はこの後ろに入ってる声、みなさんの声が合わさって完成する曲だと思っています。それまで拳で感情を全部ぶつけて、気持ちを繋げてひとつになりましょう!”、滝沢がそう口開くと、《僕は歌うよ まだ見ぬ誰かのために》と瀬戸が歌い出した。NEO JAPONISMが道なきところに道を切り拓き、そこへ我々を導いてくれるような曲だ。もうひとつの新曲「Twilight Night」は、どこかオリエンタルな香りを放ちながらも脈々と動くメロディがさまざまな情景を描いていく不思議な曲。スモークに覆われたステージと、赤と緑を基調とした照明の中で、コンテンポラリーな劇を想起するパフォーマンスがどこか幽玄な世界を創り出していった。
この新曲に始まったセクションはダンス、パフォーマーとしてのNEO JAPONISMの強さを浮き彫りにしていた。アッパーチューンで畳み掛けるだけではない、しなやかな表現で魅了していく。初期からの隠れざる名曲というべき「幻惑のカタルシス」ではストンプのリズムに乗せてダンサーが乱入。ダンスブレイクを経て、ミステリアスさを帯びながら強靭な曲に変貌していた。そこからトラップに合わせたダンスを挟み、妖艶さを纏ったアレンジに生まれ変わった「Identity」、ダンサーとともに艶かしく微睡むように舞う「TRAUMA」と、歌だけではない身体能力のスキルを駆使したステージを堂々と豪奢に魅せつけていく。和情緒を巧みに操る「TOMOSHIBI」の重低音が静かにZeppを揺らし、ダンサーが翻す扇子を連れ立って福田のフェイクが天を舞った瞬間、この日何度も見え隠れしていたZeppの先にあるものがはっきりと見えた。そして剛があれば、柔もある。「ゆるゆらオヤシロガール」では、少女性ともいえるその柔らかな感性を見せていった。
“コロナが終わった後にみんなと一緒に歌えることを願って作られた曲”だという瀬戸の紹介に始まった「READY TO RIDE」からのラストスパート。スリリングなメロディが爽快な「Set off」とアッパーなロックナンバーを立て続けに披露。そこからの新曲「Symphony」。中盤に初披露された2曲もNEO JAPONISMの新境地を感じたスケールの大きい曲であったが、同曲は前2曲とはまったくベクトルの異なる壮大すぎるスケールを描く曲だ。エレクトロサウンドながらも温かく幻想的な響き、煌びやかな協奏というべき美麗なメロディが眩い光を放ちながら交錯していく。その旋律に乗ってダイナミックに動き回る5人が胸の高鳴りを昂揚に変えてくれる……どこか見果てぬ国のミュージカルを観ているような気分になった。
“みんなと手を取り合って笑って過ごせる日々が続くことを祈ってこの歌を届けます”
朝倉がそう言って始まったのは「WORLD PARADE」。エレクトロでヘヴィなチップチューンであるのに、こんなにも躍動感が暴発していくものなのか……と躊躇うほどのステージを見せながら、本編は幕を閉じた。
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