#ババババンビ、NEO JAPONISM、ベンジャス！、Appare!……この夏、TIF2022で観た暑くて熱い風景｜「偶像音楽 斯斯然然」第88回

NEO JAPONISM　滝沢ひなののカリスマ性

さて、そんな#ババババンビとともに、昨年の「SMILE GARDEN」にて、こちらはトリの予定だったものの中止になってしまったNEO JAPONISM。今年は「SMILE GARDEN」に加えて、メインステージの「HOT STAGE」にも出演。1週間後の8月15日には同会場Zepp DiverCity(TOKYO)でのグループ最大規模ワンマンを控えており、それを予感させる堂々たるステージを見せてくれた。Zeppに響く「Spica」、「SKY STAGE」で夜空にこだました「sky」も絶品だったのだが、個人的にガツンとやられたのが、滝沢ひなのが「IDOL SUMMER JAMBOREE ACOUSTIC」で歌ったブルーハーツ「青空」のアコースティックカバーである。アーシーなメロディに優しいようで確固たる信念が感じ取れる歌声が、私の心を揺さぶりまくったのだ。

初めて滝沢のステージを観た時、ビブラートを掛けないその野太い声は往年の甲本ヒロトのようだと思ったし、彼女のルーツがそうした80年代ジャパニーズパンクにあることはあとから知った。そうしたルーツより生まれた、当サイトの特別企画「NEO JAPONISM 滝沢ひなの、憧れのニューロティカ あっちゃんのお菓子屋さんに行く」が大きく話題となり、ニューロティカ、ロリータ18号界隈に収まらず、ニューロティカ大リスペクトの氣志團・綾小路翔にまで届く中でのステージだった。

スキルの高い、歌唱力のあるアイドルは珍しくないわけだが、“歌をきちんと歌として届けられる”アイドルは少ない。高低差の激しいメロディや転調を重ねた高度な歌唱技術を要するものではなく、シンプルなメロディ＆符割りでもきちんと言葉を伝えられるアイドルはどのくらいいるのだろうか。滝沢が作詞＆作曲した「すすめ」はメロディは単調であるし、そのメロに沿った詞の置き方もかなり強引である。複雑かつ斬新、理路整然とした“楽曲派”なんて言葉が持て囃されるアイドルシーンの中では異質極まりない楽曲だ。しかしながら、同曲のキャッチーなメロと印象的な詞は1度聴いたら頭から離れなくなる。そして、こんなにも素直で飾り気のない言葉選びを歌えるのは、それを作った滝沢本人と彼女のことを理解しているNEO JAPONISMのメンバーだけなのである。以前から彼女に感じていたロックバンドのフロントマンのごときカリスマ性は、その歌声やマイクを持ったシルエットからだけではなく、そうした非凡な感性と、その唯一無二の圧倒的存在感から否応なしに溢れ出ているものだ。

NEO JAPONISM「すすめ」

そんなことを改めて考えさせられた「青空」カバーだった。彼女の普段のキーより若干高めだったのも功を奏していたように感じた。そして同曲で滝沢とコラボしたベンジャス！の高梨螢もよかった。