PassCodeに有馬えみり加入、新木場STUDIO COAST閉館、NEO JAPONISM<NEO合戦>|「偶像音楽 斯斯然然」第64回
PassCodeに有馬えみり加入、新木場STUDIO COAST閉館、NEO JAPONISM<NEO合戦>|「偶像音楽 斯斯然然」第64回
今回は、PassCodeへの有馬えみりの加入、数々のアイドルイベントや単独公演が開催されてきた新木場STUDIO COASTの閉館、そして、8月14日に行なわれたNEO JAPONISM主宰フェス<NEO合戦>という、冬将軍が昨今気になったトピックをピックアップ。それぞれに対する想いをありのままに綴る。
NEO JAPONISM主宰フェス<NEO合戦>
そうしたSTUDIO COAST閉館の知らせが多くの波紋を呼ぶ中、8月14日に同地で開催されたのがNEO JAPONISM主宰フェス<NEO合戦>。強力な出演者が揃い踏み、間違いなくこの夏最も熱いフェスだった。
NEO JAPONISMらしく、黒、赤、金をあしらったオリエンタル風の巨大セットがどっしりと構えたメインの“KASSEN STAGE”、燃えたぎるエネルギーを抑えるよう野外の開放感とともに放水される“RYU-GU STAGE”、X「オルガスム」を彷彿とさせるYOSHIKIばりのCO2噴射が炸裂した“KEMURI STAGE”と、それぞれ趣向を凝らした全3ステージはまさに合戦というべき名に相応しい様相だった。
観てよかったグループを挙げればキリがないのだが、STUDIO COASTの閉館発表直後ともあって、感慨深かったのはDevil ANTHEM.、ヤなことそっとミュート、MIGMA SHELTERの流れ。そう、<ギュウ農フェス>を想起させる3組によるスーパー轟音タイムだ。
ミシェル、ヤナミュー、デビアンのスーパー轟音タイム
<ギュウ農フェス>は、言わずとしれたギュウゾウ(電撃ネットワーク/とちぎ未来大使)が主宰するアイドルイベント。2018年に<ギュウ農フェス春のSP ロード to 栃木2018<オクタゴンスピーカーの驚音 vs ライブアイドル!>>という前代未聞の試みが行なわれ、大きな話題となった。天井から吊るされた真っ赤でゴツくてすごいヤツ、34機の4ウェイフルレンジアンプ付きスピーカー、通称“Octagon Speaker(オクタゴンスピーカー)”を使用したライブである。日本最大級のクラブイベント、ageHaのみでしか使用されることのない音響システムを通常のライブで、しかもアイドルイベントで使用したのである。2018年に同イベントにて、ageHa以外ではじめてオクタゴンの驚音を浴びたことは今でも鮮明に覚えている。あの時のMIGMA SHELTERのステージを観てアイドルのすごさを改めて知り、心の底からアイドルを好きになってよかったと思った。
以降、<ギュウ農フェス>とオクタゴンは恒例化し、多くのアイドルファンを魅了していった。
<ギュウ農フェス>以降、オクタゴンの影響力は大きく、Devil ANTHEM.はオクタゴンを使用したワンマンを行ない、ヤなことそっとミュートはバンドサウンドには向かないオクタゴンの特性を逆手に取り、ウーファーだけ使用することで三半規管を狂わせるほどの混沌とした轟音の渦を作り出すことに成功している。<NEO合戦>のこの日は、オクタゴンの使用はなかったわけだが、COASTの音響特性を知り尽くした2組のサウンドはいつになく素晴らしかった。Devil ANTHEM.はレンジの広いエレクトロサウンドで煌びやかで鋭い高音から身体中の毛穴が開くほどの重低音を、ヤなことそっとミュートは息遣いまで繊細に聴こえるボーカル、といった丁寧ながらもワイドレンジの音響を轟かせた。Devil ANTHEM.は藤澤ひより、ヤなことそっとミュートは彩華が5月に加入したばかりだが、2組ともに新メンバーを迎えて間もない新体制とは思えない完成度の高いステージで、その存在を多くのオーディエンスの前に知らしめた。
そして、MIGMA SHELTERである。なんと、ノーマイクで登場した。やれ生歌がどうの、被せがどうの、などと言われることも多いアイドルシーンで、はなから歌うことを拒否した姿勢に驚愕。これは単純に楽曲とサウンド、何よりダンスパフォーマンスに自信がないとできない試みだ。
8月8日にワンマンレイヴ<∞/∞>を大成功に収めたばかりの彼女たち。その自信と貫禄を堂々と魅せつけてきた。スポーティなデザインでスタイリッシュになった新衣装はまさに機動力重視といった趣だ。MIGMA SHELTERのダンスはヒップホップ的なブレイクダンスや、はたまたロックダンスとか、そういったテクニックで魅せていくスタイルではないのだが、四肢をフルに使ったダイナミックな動きに気づけば惹きこまれていく。
長年トレードマークだった自慢の長い髪をバッサリ切り、精悍さ溢れるフォトジェニックさを極めたレーレも、切れ味抜群の動きと鋭い眼光で見る者を容赦なく突き刺していくブラジルも、踊りながら髪を結ったりほどいたりのタマネも……みんなマイクがない分それぞれの動きと表情がよくわかる。何よりも6人の目力がすさまじい。
ノンストップながらセトリと繋ぎを変えてくる様は毎度のことだが、この日は「Joint」の入りが鳥肌モノであった。激しい動きと終始フルスロットルのテンション具合いを保っていくスタミナはどこから生み出されるのか……水素燃料電池かなにかで動いているのではないだろうかと思うほどの25分間であった。やはりこのグループは尋常ではない。
そうしたまさに合戦というべき、熱く激しいライブが展開されていく中、主宰者であるNEO JAPONISMは全3ステージすべてに出演し、さすがのステージを見せてくれた。
NEO JAPONISM <NEO合戦>3ステージ
激しい雨が降ったり止んだりの最中、“KEMURI STAGE”の「Carry ON」で<NEO合戦>の火蓋が切られた。主宰がトップバッターを務めるに相応しく、攻めに攻めたセトリ。ロックナンバーの応酬だ。昼下がりの“RYU-GU STAGE”では、「ワールドエンドスターリーナイト」といった、アイドルポップナンバーを軸としたセトリを。3ステージ目、大トリの“KASSEN STAGE”は“シンキヴァァーー!! 準備いいかぁ!!”と滝沢ひなのの絶叫がCOSATに響いた「Trigger」を初っ端からぶっ放し、圧倒的な強さを見せつける。ハイトーン+ヘヴィエレクロのキラーチューン「Signal」、チップチューンからディストーションギターの波に飲み込まれる「WORLD PARADE」、スケールのどデカい楽曲で多くのオーディエンスの心を掌握していった。こうした楽曲が増えていったのは、当人たちのスキルアップとグループの懐がどんどん大きくなっているからだ。そんなことを改めて感じた。多くのグループの中で、主宰らしく大トリに相応しい、“闘う”アイドルの圧巻のステージだった。
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