hideからBiS、BUCK-TICKからMIGMA SHELTERまで ヴィジュアル系ロックで紐解くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第54回

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hideからBiS、BUCK-TICKからMIGMA SHELTERまで ヴィジュアル系ロックで紐解くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第54回「偶像音楽 斯斯然然」第54回

実は何かと共通点が多いヴィジュアル系とアイドル。ライブハウスからドームまで、ヴィジュアル系バンドの制作ディレクターを務めていた冬将軍が、今回その2つのジャンルの音楽面での関連性を多種多彩な切り口で綴る。

邦ロックとボカロ曲

ヴィジュアル系音楽構造はそのままJ-ROCK、邦ロックの音楽構造になっていった節もある。凛として時雨やTHE BACK HORN、9mm parabellum bulletといったバンドがヴィジュアル系影響下であることは、90年代を青春として過ごした世代から見ればすぐにわかったはずだが、90年代を知らない世代にとっては、それらのバンドこそがリアルであり、邦ロックのスタンダードなわけである。ヴィジュアル系音楽構造に間接的影響を受けていることも多い。

ボカロ楽曲にはどこか陰鬱な香りがする曲も多かったりするわけだが、そこにもヴィジュアル系の影響を感じ取れる。おそらく直接的な影響下ではなく、普遍的な邦ロック基本構造として根付いているものであるだろう。

キタニタツヤが多く楽曲を手掛けるPayrin’s、鬱PがプロデュースするZsaszといったボカロPによるアイドル楽曲も増えてきている。

早いパッセージのギターフレーズは近年邦ロックのトレンドであるが、元を辿ればニューウェーヴ〜ポストパンク影響下のヴィジュアル系バンドによく見られる手法である
Payrin's「それでも僕らの呼吸は止まない」(2018年)

ちょっと懐かしいクサめの節回しロックもボカロ曲流行の1つ
みきとP作曲のわーすた「萌ってかエモ」Live Video(2021年)

ヴィジュアル系に関係なく、アイドルソングにおけるギターの面白さ、カッコよさはPop’n’Roll編集長と過去に語り尽くしているので、そちらも読んでもらえれば幸いである。

ギターが入っていなくともその“匂い”は感じ取れるはず。先に述べたBUCK-TICKファンが自然とMIGMA SHELTERに惹かれたように、ロックとは違うトランスであっても然り。

トランスというマニアライクな音楽性ながらも女性ボーカルとしてのメロディと、ロック好きの琴線に触れるサウンドと楽曲のキャッチー性がMIGMA SHELETRの強み
MIGMA SHELTER「QUEEN」 -Rave Edit-(2021年)

それはヴィジュアル系ファンにMassive AttackやPortishead好きが多いのと一緒だ。藤井麻輝や今井寿、SUGIZOといった鬼才たちに散々耳を鍛えあげられたゆえのもの、だろう。

音楽の系譜、“ファミリーツリー”を考えれば多くの場合洋楽に行き着くわけだが、ヴィジュアル系とアイドルという、邦楽シーンの局地的な部分を繋げてみれば、意外としっくりくることが多いのである。

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