BLACKNAZARENE 南向いずみ[インタビュー]実力派異端児が辿ったボーカル人生「いろんな声は出せるけど、無理な声を出すのは歌人生に絶対に良くないと思った」 BLACKNAZARENE 南向いずみインタビュー前編
鈴木 健也
Pop'n'Roll Editor in Chief(編集長)
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私にとっては、アイドルがしたいというよりも、歌が歌いたくて入ったBLACKNAZARENEがたまたまアイドルだった――BLACKNAZARENEの南向いずみのアーティスト活動の核にあるのは、紛れもなく“歌うこと”である。同時に、グループへの想いもどこまでも深い。<TOKYO IDOL FESTIVAL 2019>の「この指グランプリ~歌うま選手権~スペシャルコラボステージ」に出演するなど、ボーカリストとしての実力は、現在のアイドル界でも随一。そんな彼女に、今回、歌うこととBLACKNAZARENEのこれからについて、前編と後編の2回にわたるインタビューでじっくり語ってもらった。本日は、南向いずみがボーカリスト人生を振り返る。
編集協力:村田誠二
こんなに音楽を聴いてこなくて音楽を志してるなんて、私が第1位くらいな気がする
──まず、音楽的なバックボーンからうかがいます。最初は、6歳からバイオリンを始めたそうですね。
南向:
そうですね、それが始まりです。従姉妹がたくさんいて、女の子はみんな楽器をやっていたんです。たいていピアノなんですけど、私は母がバイオリンをやっていたこともあって意外と身近な楽器で、他人(ひと)があまりやってないし、私はバイオリンにするわ!ってことで教室に通い始めました。新しいことを始めたので、最初は楽しくて、毎日練習もしてたし、週1回のレッスンも欠かさず行ってたんですけど、だんだん壁にぶつかってきたら、“練習しろ”って言われるのがすごく嫌で、小学校3~4年生の頃に本当に嫌いになっちゃって。そうしたら母親に、バイオリンを手の届かないタンスの上に置かれて“2度と触らせない”って言われたり(笑)。
──(笑)。そんなことがあったんですね。では、中学では何か楽器をやっていたんですか?
南向:
中学で吹奏楽部に入ってサックスをやっていたんですけど、そこで初めて、練習することによって楽器がウマくなるっていう理論に辿り着いて(笑)。
──それまで気づかなかった?(笑)
南向:
練習の楽しさがわからなくて。練習の結果どうなるってことを知らなかったから、練習ってつまらないものだと思い込んでたんです。でも、そこから好きになりましたね。
──サックスは自分で選んだんですか?
南向:
そうですね。目立ちそうだったので(笑)。
──それは大事ですよね。バイオリンの経験もあって、音感はかなり良いんじゃないですか?
南向:
一応、単音の絶対音感はあるので、メロディはすぐに採れるんですけど、コード楽器をやったことがないので、ギターとかピアノの和音は、1個1個分解しないとわからないですね。
──中学では、合唱部にも所属していたとか。
南向:
物心つく前から、歌うことはずっと好きだったらしくて、もちろんバイオリンもやっていたので、母や祖母より音感は良いと思ってたんですけど、ある時、2人に“いずみは音痴だ”って言われて、ものすごくショックで。それ以来、ずっと自分は音痴なんだと思って過ごしていたんです。でも、中学で合唱部に入ったら、“あれ? ほかの人よりウマくない?”って。それに気づいてから、わりと歌うことは向いてるのかなと思いました。
──その当時はどういう音楽を聴いていたんですか?
南向:
中学生の時は、絢香さんとYUIさんばっかり聴いていた気がします。年上の仲良しの従姉妹が好きで、一緒に車に乗るとたいてい絢香さんとYUIさんの曲がかかってるんです。それで良い曲だなと思ってました。ただ私、実はCDを買うとかイヤフォンで音楽を聴くってことに慣れ親しんでなくて……自分で初めて買ったCDってBLACKNAZARENEだし(笑)。
──え!? そうなんですか?
南向:
そうなんです(笑)。家では聴かなかったですし、親の車の中は父の独裁なので、父が好きなラム・オブ・ゴッドとかアイアン・メイデンとか、パンテラとか(笑)。だから自分で音楽を選んで聴くっていう制度が世界にあるってことを知らなくて(笑)。当時は、ひと月500円しかお小遣いをもらえなかったので、月刊のマンガとかを買って終わりでしたし。
──じゃあ、いわゆるJ-POPに深く入れ込んではいないんですね。
南向:
こんなに音楽を聴いてこなくて音楽を志してるなんて、私が第1位くらいな気がする(笑)。
──(笑)。逆にヘヴィメタルの英才教育は受けていたんですね。
南向:
受けさせられてきた、という感じです(笑)。