【連載】沖口優奈×SmartNewsコミュニケーションディレクター(後編)「指示を出す時にやらないことを決めてあげる」 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第11回:SmartNewsコミュニケーションディレクター(後編)
沖口 優奈(マジカル・パンチライン)
Pop'n'Roll Chief Discovery Officer
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マジカル・パンチラインの沖口優奈と『SmartNews』コミュニケーションディレクターの松浦シゲキ氏とのリーダー対談後編では、松浦氏がさまざまな企業での経験を経て掴んだチームを強くする秘訣やSmartNewsでのやりがいを中心にトークを展開。本連載でこれまで学んできたこととは180度異なると言っても過言ではない松浦氏のリーダー論に終始感銘を受けていた沖口。ジャンルが異なりながらも、チームのトップに立つ2人のトークセッションは、チームの基礎を強くするために必要不可欠なことについて深く語り合う場となった。
マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第11回:SmartNewsコミュニケーションディレクター
みんなで考えてみんな進めていく方が強い(松浦)
沖口:
松浦さんはディレクターとして先頭に立ってチームを引っ張っていると思うんですけど、その上で心がけていることはありますか?
松浦:
僕はその“先頭に立つ”ことをしないって決めています。まあ、1つの考え方ではあるんですが、リーダーとなるとメンバーを引っ張っていくというようなイメージがあるじゃないですか。いろいろな仕事を経験して思うのは、日本はトップダウンが多い。リーダーがこれやって、あれやってと指示することで仕事が成り立つ……リーダーがみんなを引っ張り上げることで成功していることが多いんです。でも、僕は下から持ち上げるタイプなんですよ。みんなでレベルアップしていくことが大事だと思っているので。上に立つという意識よりも、何とか下に潜り込んで下から持ち上げていく。そんなことを意識しています。
沖口:
(つぶやくように)下から持ち上げていく……。なるほど……。
松浦:
ははは(笑)。上から引っ張り上げるんじゃなくて下から持ち上げる。トップダウンじゃなくてボトムアップってことですね。
沖口:
じゃあ、俺についてこい!ではなくて、みんなで一緒に頑張っていこうって感じですか?
松浦:
そうですね。みんな一緒に頑張っていこうという雰囲気を作り上げることが大事だと思いますね。リーダーがしっかりしなくちゃいけないっていうのは、ちょっと違うんじゃないかと思います。けっこう特殊なリーダー論だと思いますけどね。僕は、何かしらのポジションについた時は、それぞれのメンバーと食事に行ったりしないんです。
沖口:
えっ? どういうことですか?
松浦:
メンバー全員から等距離でないといけないと思うんですよ。
沖口:
誰かとめちゃくちゃ仲がいいというのはよくないんですね。
松浦:
人間って3人以上集まると派閥が生まれるって言いますけど、集団として全体が均等にレベルアップするには、それはよくないですよね。集団が円だとしたら、その中心に自分がいて、全員と等距離でありたいんです。そういう風に考えた時に、出せる情報はオープンにしなくちゃいけないし……LINEなんかで気軽にメンバーに対してあれこれ送るってこともしないです。情報は必ずグループチャットにして、グループ全体に投げるんです。
沖口:
個人のやりとりは一切せずに、何か伝えたいことがある時は、全体に伝えるんですね。はぁ……、すごい!
松浦:
そうです、全体に伝える形にしています。もしかしたら、この人は90点、あの人は20点ってこともあると思うんですけど、誰にでも足りない部分はあるわけで、そこを詰めることを考えてほしい。100点のことを提示してあげて、それぞれに足りない部分を考えて補うことで、全員で上がっていきましょうって。そうした方がみんなの気づきになるし、みんなでレベルアップしていける。そうすると集団として強くなれるんですよ。
沖口:
はあ、なるほど……。私もちゃんとしないと……(笑)。
松浦:
これって僕が10個くらいの職場で働いてきたから思うことなんですよ。僕が最初に勤めたところって、いわゆる大企業で、大きなピラミッドが形成されていて、実力のある人が1番トップにいてっていう、わかりやすいほどのトップダウンの組織だったんです。それはそれで機能的だったりもするんですけど、トップが崩れると全体が機能しなくなったり、誰かが途中で抜けてしまうと、そこからピラミッドが崩れ出してしまったりもする。そういうのを見てきたので、それをなくしたいと思ったんです。ボトムアップで土台がしっかりしている組織の方が最終的には生き残るんじゃないかと。例えば、僕は以前ライブドアという会社にいまして、その時に当時の会社のトップが逮捕されてしまったんです。
沖口:
当時、ニュースで見ていました。
松浦:
でもライブドアはそこで終わってしまったわけではなくて、その後、NAVERという会社と一緒になり、最終的にはLINEという素晴らしいアプリケーションを生み出したわけです。トップがいなくなっても、ボトムがしっかりしていたので生き残った。トップダウンよりも、みんなで考えてみんなで進めていく方が強いってことだと思うんです。それを目の当たりにしたんですよ。スポーツチームなんかでも、監督が代わるとチームもまったく変ってしまうってことがあるじゃないですか。そうではなくて、チームのそもそものポテンシャルが整備されていれば、監督がどんなに変わっても、ずっと強いチームであり続けると思うんですよね。もちろん、トップダウンのやり方が、時にはすごく強い力を発揮することもあるんです。ただ、チーム全体の成長を考えるのであれば、進みは遅いかもしれませんが、ボトムアップの方法の方が強くなると思うので、そういうやり方をしています。
沖口:
今までお話を伺ってきた方々のリーダー論とはガラリと違うので、すごい衝撃と、なるほどという気持ちが入り乱れています(笑)。
松浦:
まあ、僕は一般的なリーダー論は気にしたことがないので。とにかく下から持ち上げる形で、全員でレベルアップするにはどうしたらいいのかっていうことばかりを考えていて。前職で編集長だった時も、最初に辞めたのは僕でした。でも、新しい編集長が来てもチームは強いままだし、基本的には問題なくやれていたと思ってます。
沖口:
先を見据えた時に、全員がレベルアップしていれば、何があっても揺るがないってことですね。先ほど1対1のコミュニケーションはあまり取らないというお話が出ましたけど、チーム全体のコミュニケーションはどうやって取ってるんですか?
松浦:
1日1回は全体的に、全員に対して発信するようにしています。
沖口:
朝礼みたいなものですね。
松浦:
簡単に言えばそういう感じですね。単純に“おはようございます”でもいいとは思うんですけど自分の気づきも含めて“今日は○×でしたね”、“明日は△□した方がいいですね”っていう感じで。なんでもいいから、毎日、全体に対するコミュニケーションを心がけるようにしています。あとは、指示を出す時に“あれをやって、これをやって”ではなくて、“こういうことはやらないようにしてね”って、やらないことを決めてあげることが大事かな。指示したとおりに動いてもらうのではなくて、能動的に動いてほしいんです。みんなの目標は決めてあげているんだから、そこに向かってみんなが動く。目標にたどり着く手段は任せる。ただし、その過程で“これはやっちゃいけないよ”っていうことを決めてあげることが、自分の仕事かなとも思ってます。“前にも言ったけど、これはやらないでね”って改めて話をすることもありますね。
沖口:
あれをやれ、これをやれではなく、これだけはやらない……。なるほど……(しばし沈黙)。すみません、ちょっと衝撃が強くて(笑)。
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