【連載】沖口優奈×株式会社ガイエ 配給宣伝事業部部長(後編)「みんなで映画を観ることは、“映画の学校”へ行くようなもの」
マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第8回:株式会社ガイエ 配給宣伝事業部部長(後編)
沖口 優奈(マジカル・パンチライン)
Pop'n'Roll Chief Discovery Officer
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マジカル・パンチラインの沖口優奈と株式会社ガイエの配給宣伝事業部部長/宣伝プロデューサーの大場渉太氏とのリーダー対談後編では、大場氏が主宰する映画祭<シン・ファンタ/復活!?東京国際ファンタスティック映画祭ナイト>を中心にトークを展開。作品の上映中に観客が熱狂し、応援をしていたジャンル映画祭の元祖<東京国際ファンタスティック映画祭>を14年ぶりに復活させた同イベント。その開催秘話や上演作品についての話を聞いていた沖口は、同イベントに対して興味津々に。アイドルグループのリーダーとエンタテインメントプロモーション会社の事業部部長というまったく異なるフィールドで活躍する2人の対談は、“映画”というキーワードを土台にしながらも、エンタテインメントの普遍性やチームを引っ張ることの本質などについて深く語り合う場となった。
マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第8回:株式会社ガイエ 配給宣伝事業部部長
撮影:越間有紀子
<東京ファンタ>は“フェス”だと思うんです(大場)
沖口:
11月2日に開催される<シン・ファンタ/復活!?東京国際ファンタスティック映画祭ナイト>について教えてもらえますか?
大場:
ウチの仕事は、映画の宣伝プロデュースが1つと、もう1つ、まだ僕がほぼ1人でやっていることですけど、映画への出資や映画祭の事業ですね。この2つがおもな仕事なんです。
沖口:
私、映画祭に行ったことがないんで、いろいろ教えてください。まずはどういう経緯で、<東京国際ファンタスティック映画祭>が14年ぶりに復活することになったんですか?
大場:
20年くらい前、渋谷の今のヒカリエがある場所にパンテオンという立派な映画館がありまして、そこから始まったイベントなんです。そのあとは、新宿歌舞伎町にあったミラノ座でも開催していました。SF、ホラー、アクション、アニメ……ジャンル映画と言われる映画が好きな、昔でいうオタクの人たちが集まれる場所を作りたいというようなところからスタートしたんです。今の応援上映の元祖みたいな感じで、みんなで手を叩いたり、掛け声をかけたり、つまらなければブーイングしたり……そこに映画を観に行けば鬱屈したものを発散できる、そんなイベントだったんですね。僕も1回目は客として観に行きました。最初に話したような、字幕もない輸入版のビデオでしか観られないような映画が、大きなスクリーンで観られるというだけでも楽しいのに、僕と同じような気持ちの人が1,000人くらいいるんですよ。ワクワクしますよね!そういえば最初は、お酒のメーカーがスポンサーについてくれて、缶チューハイが飲み放題だったんです。お酒を飲みながらみんなで映画を観るのが超楽しかったんですよね。ロビーで吐いちゃうヤツなんかもいたんですけど、それも含めて楽しかった。日本は映画を静かに鑑賞しますけど、海外では、みんなが声を出したり拍手したりして、おおらかにイベントとして楽しんでいるなんて言われますけど、その楽しさを体感したような気がしました。
沖口:
それは素敵な体験だったんですね。
大場:
そうなんです。そうやって共有できる映画の見方っていいなと思って、5回目以降からはスタッフとして携わるようになったんです。ただ、時代の移り変わりとともにいろいろなことが変わってきて。この映画祭で取り上げる映画って、言葉は悪いかもしれませんが“反社会的”テーマが多くて。それで、事件が起こると犯人がこの映画祭で上映していたホラー映画を観ていたとか、犯人がこの映画祭に来ていたとか、いろいろバッシングされるようになってしまって。それでスポンサーもつかなくなってしまって、14年前に一旦休止したんです。最後の3年間は、いとうせいこうさんに手伝ってもらったんですけど、せいこうさんは台東区を盛り上げるための実行委員をやられていて、“東京ファンタ”が休止になってすぐに、せいこうさんから台東区で映画祭をやりたいという話をもらったんです。台東区にある浅草は、芸能発祥の地でもあるので“コメディを中心とした映画祭はどうでしょう?”と提案したんです。コメディの映画祭って、世界的にもあまりないですしね。とんとん拍子で話がまとまって、<したまちコメディ映画祭in台東>として開催されました。10年は続けようとせいこうさんと話をして始めたので、10年を迎えた2年前にひと区切りをつけました。さて、次は何をしようか?と考えた時に、今は応援上映も人気だし、ゲキシネという形で舞台中継を映画館で観られたり、コンサートのパブリックビューイングなんかもやっていて、映画館が映画を観るだけの場所ではなくなってきた。これって<東京国際ファンタスティック映画祭>と一緒なんですよ。時代が一周して、また新たに<東京ファンタ>をやれる雰囲気になったように感じたんです。周囲の人たちに相談すると、みんな“それ、いいね”って言ってくれるし、それで本当にやってみようと。
沖口:
時代が移り変わったことで、再び<シン・ファンタ>として開催できるようになったんですね。
大場:
そうですね。まあでも、僕と一部の関係者の思い込みにすぎないかもしれませんけど(笑)。14年前は映画のオールナイト上映ってけっこうやっていたんですけど、最近はほとんどないので、20代、30代の方は興味を持ってくれるのかという不安もありますし。オールナイトで映画を楽しんだ世代の40代、50代は体力的にキツイんじゃないかとも思いますので、やっぱり不安はありますね。先日、前売りチケットの発売だったんですけど、全然売れてなかったらどうしようと不安で、SNSとか見れませんでした(笑)。でも、見ないと仕事にならないので、発売から数時間経ってからSNSをチェックしたら“チケット完売で買えなかった……”というツイートがあって、オールナイトで映画を観たい人、<シン・ファンタ>で上映するような映画を求めている人が、少なからずいるんだなと自信になりました。今は、当日、観に来てくれたお客さんに満足して帰ってもらえるように、いろいろ考えているところなんです。いろいろな方が協力したいと言ってくれていますし、もうね、観に来た方が“もうお腹いっぱい”っていうくらいやりますから! 沖口さんも、ぜひ観に来てください!
沖口:
すごく楽しそうです! 私は、オールナイトで映画を観るというのもすごく新鮮です。オールナイトだからこそ、映画館に集まったみなさんの仲間感、身内感が生まれそうですよね。
大場:
そうですね。少なくとも、夜中なので、変なドーパミンが絶対出るはずなので、楽しめると思いますよ。
沖口:
声を出したりしてもいいんですよね?
大場:
全然いいですよ。もちろん強要はしませんけど。面白いなと思ったら素直に拍手していただければ。<東京ファンタ>は、映画会ではなくて“フェス”だと思うんです。“フェス”って、黙って観ているだけじゃないですよね。静かにじっくり映画を観たいと思うのであれば、改めて映画館へ行くなり、家で観るなりしてもらって、<東京ファンタ>では、フェスとして、みんなで共有して楽しんでほしいと思います。いとうせいこうさんとも話したことなんですけど、みんなで映画を観ることは、“映画の学校”へ行くようなものだと思うんです。例えば、笑いについても、それぞれに感性が違うので、笑うところが違いますよね。“あ、ここで笑う人がいる! なるほど、自分では気づかなかったけど、こういうことを面白いポイントだと思う人もたくさんいるんだな”って気づかせてくれるし、じゃあ、なんでみんな面白がっているんだろうと思って調べてみたら、意外な理由があったりもして、そういう発見にもつながるんです。それが、いろいろな人と一緒に映画を観る醍醐味だと思います。
沖口:
楽しそうです! 私、映画館でポップコーンを食べるのも緊張しちゃうので。
大場:
ポップコーンもバリバリとグレムリンみたいに食べてください(笑)。昔は、映画館で煎餅をバリバリと食べたりしていましたけど、今ではできないですよね。
沖口:
ホラー映画などは、友達とキャーキャー言いながら観た方が楽しかったりしますよね。
大場:
ホラー映画は、今、人気がありますよね。ちょっと前は、ホラーは当たらないからって、なかなか公開もされなかったんですけど、今は高校生がみんなで観に行って、それこそ遊園地の絶叫アトラクションを楽しむように観ているので、そういう時代になったんだなと思います。そうやって楽しみたいなら、<東京ファンタ>はぴったりですよ。
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