【連載】沖口優奈×株式会社ガイエ 配給宣伝事業部部長(前編)「チームは仲間と信頼してぶつかり合い、お互いの気持ちを言い合う方がよくなる」
マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第8回:株式会社ガイエ 配給宣伝事業部部長(前編)
沖口 優奈(マジカル・パンチライン)
Pop'n'Roll Chief Discovery Officer
-
ポスト
-
シェア
-
ブックマーク
マジカル・パンチラインのリーダー沖口優奈が、さまざまなリーダーと対談して理想のリーダー像を見つけていく本企画。第8回目に登場するのは、映画、テレビを中心としたエンタテインメント業界のオンラインプロモーションを手がけるクリエイティブエージェンシー『株式会社ガイエ』の配給宣伝事業部部長/宣伝プロデューサーの大場渉太氏。長年、映画宣伝に携わりながら、フランス版『シティーハンター』の『シティーハンターTHE MOVIE 史上最香のミッション』(11月29日(金))の日本公開に尽力したり、11月2日に開催される映画祭<シン・ファンタ/復活!?東京国際ファンタスティック映画祭ナイト>を主宰するなど、さまざまなコンテンツを世に放つ映画業界の仕掛け人である。対談前編となる今回は、大場氏が映画を仕事とするようになったいきさつや映画宣伝の実情、さらに配給宣伝事業部部長としてどのようにチームを引っ張っているのかについて、沖口がじっくり話を聞いた。
マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第8回:株式会社ガイエ 配給宣伝事業部部長
撮影:越間有紀子
本当に一獲千金の瞬間を目の当たりにしたんですね(沖口)
沖口:
まず大場さんが映画業界に入ったきっかけを教えてもらえますか?
大場:
“一攫千金を狙えそうだから”という不純な動機なんですよ(笑)。そのきっかけもあまり他人には言えないというか……僕は、中学2年の時に映画業界に興味を持ったんです。もともと声優になりたくて。当時は、声優になるための学校なんかもなかったし、まずは俳優にならないと声の仕事はできないっていう感じだったんです。俳優になる勉強の一環として、まずは8ミリで映画を撮りたいなと思って、その前に、とりあえず映画をたくさん観ようと。そうしたら、映画自体が面白くなってしまったんです。それで、どうしても観たいSF映画があったんですけど、映画館でも上映されていないし、ビデオも出回っていない。そんな時に、映画雑誌に、その映画の輸入ビデオを通販でレンタルしているお店の広告を見つけたんです。今思うと違法だったのかもしれないですけどね。値段は2,500円だったかな。
沖口:
今の感覚だとすごく高価ですよね。
大場:
そうですね。でも、当時は、輸入版のビデオソフトが1本2万円以上する時代でした。だから2,500円ならば破格に安いんですよ! ただ、中学生ながら胡散臭さも感じていたので、広告に住所と電話番号が書いてあったので、“直接取りに行ってもいいですか?”って電話をして。そうしたら、それでもいいってことで、住所を頼りに行ってみたんです。その事務所が新宿御苑の雑居ビルにあって、ドアを開けたら、アニメのセル画がたくさん積まれていたりしているところで、けっこう広いオフィスだったけど、人がまばらで、なんだかすごく怖かったのを覚えていますね。でも、僕の応対をしてくれたのが社長の奥様だったんですけど、すごく優しく接してくれて、無事にビデオを借りることができて。それをきっかけに、その店に通うようになったんですよ。そうしたら、社長から“今度、高円寺にレンタルビデオ店をオープンするから、そこで働かないか?”って誘われたんです。“僕、学生だから夕方からしか働けないですよ?”“いいよ”“ヒマな時には、ビデオをダビングしたりしてもいいですか?”“全然いいよ”って(笑)。バイト代をもらえて好きな映画が観られるなんて最高だ!って思って(笑)
沖口:
最高ですね!
大場:
それで、そこで働くようになったんです。当時は、ソフトの数も少ないし、ソフトの仕入れ値も高いので、1本仕入れると、それをダビングして貸し出していたんです。その作業を僕はずっとやっていました(笑)。これも今思うと違法だと思いますけどね。あ、それで、当時のレンタルビデオ業界には“カバン屋”っていう人がいたんです。日本ではまだ発売されていないビデオに、勝手に字幕をつけたものを売りさばいている人なんです。
沖口:
なんだか、ものすごい商売ですね(苦笑)。
大場:
当時は大手のレンタルビデオチェーンなんてなくて、個人経営の店ばかりでしたから、そういう人が入り込む隙間があったんでしょうね。まあ、そんなきっかけで映画の世界に興味を持つようになっていくんですけど、ビデオレンタル店が徐々に景気がよくなってきたら、社長が“ウチでもビデオの制作をやるぞ”と。女性の前で言うのは申し訳ないですけど、レンタルビデオ店の売上の半分以上は、アダルトものなんです。だから“ウチもアダルトを作るぞ”って言い出して。でも、当時すでにアダルト業界も、人気メーカーが確立されてしまっていて、後発の新規参入はなかなか厳しい状況だったんです。それで社長が“アニメでアダルトはどこもやっていないから、これで行こう!”と。“大場君はどんなアニメが好き?”って聞かれたので、“某人気アニメのセクシーキャラクターが、○×だったら最高です! それから、血が通っていない兄妹ものが最高です!”なんて適当に答えたら、社長が某人気アニメを制作していた会社に“アダルトアニメを作ってくれ”って直談判して。
沖口:
えぇっ!
大場:
そんなの引き受けてくれるわけないと思うでしょ。そうしたら、会社の名前は出せないけど、やりましょうと(笑)。その後、僕は試験があって1ヵ月くらいバイトを休んだんです。休み明けに次のバイトのシフトを決めるために、事務所に行こうとしたら“事務所、引っ越しして、今度は原宿だから”って言われて。行ってみたらラフォーレの近くにある超立派なビルに入っていて。もとは御苑の雑居ビルだったのに。アダルトアニメがバカ売れしたんですよね。それが『くりいむレモン』。社会現象になるほどのヒットで、劇場用作品も作られたほどだったんですよ。これ、血のつながっていない兄妹の話なんですよ。で、僕の好きだった某人気アニメぽいキャラクターも出てくる(笑)。そういうありさまを見て“この業界、すげえ! 当たれば蔵が立つんだ!”って思ってしまって(笑)。とまあ、これがきっかけです(笑)。
沖口:
本当に一獲千金の瞬間を目の当たりにしたんですね。しかも、大場さんのアイディアがそのまま使われて大ヒットなんて、すごい!
大場:
でしょ? 違法スレスレの商売をしていたのにね。この業界は何が起こるかわからないんだなって思いましたよね。